婚約破棄
私、お見合いで知り合った田中さんと結納を交わしたその日に別の男の人を好きになってしまったの!
その人も私のこと好きだって言ってくれていて、これはもう婚約破棄しかない!と意気込んでみたものの、
「今更婚約破棄だって?馬鹿も休み休み言え!結納返しも終わっとるんだぞ!」
お父さんが激怒。
「ちょっと、ここへお座りなさい」
お母さん、無表情でコワイ。
「結納金100万円頂いて、結納返しが10万円。昆布とかスルメとかは置いといて、破談になれば、結納金の倍返しがならわし」
「相手がゴネたら10倍返しという説もある」
「どうしよう……」
家族三人真っ青で口籠る。
「かけ落ち……」
「させるか!」
お父さんに釘を刺される。
「この縁談、絶対断れん。破産で済むと思うか?」
「なんで結納制度なんてあるの?!」
「一度こうすると決めたことは変えられない時代の名残りだろうなあ」
「コワイよ〜コワイよ〜」
みんなでしくしく泣き出した。
「こんばんはー」
あっ、友也さんだ!助けてくれるかも。
「お父さん、お母さん、僕たち愛し合ってるんです。お嬢さんを僕にください」
ちーん。お葬式のような雰囲気がわかっとらん。
母が根気強く友也さんに結納金の話をすると、友也さんもしくしく泣き出した。まるでお通夜だ。
「こんばんは〜」
噂をすれば影。田中さんが一升瓶片手にやってきた。
「みんな何泣いてんの?」
「実は、かくかくしかじか」
田中さんまでしくしくやりだす。
「俺は不幸だ」
「いや、俺の方が」
友也さんが不幸自慢を始めた。
田中さんと友也さんは立ち上がり、どこかへ姿を消した。
小一時間経って、ほろ酔い加減の田中さんと友也さんが帰ってきた。
「話し合った結果、結婚は予定通り行って、ハネムーンには田中さんと俺が行くことになりました!」
友也さんがご機嫌で言った。
「ハネムーン三人で?どうなっちゃうの?」
「いや、ハネムーンは2人で行くよ」
「は?」
田中さんは両刀使いだそうだ。友也さんはお金に目がくらんじゃった。
どうする?!私!