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96 タワー前

 ダンジョンタワーの警報はベクロテの町にも鳴り響き、年越しのお祭り騒ぎから早めに離脱した探索者達も押っ取り刀でダンジョンタワーに集まりだしていた。

 ザネクもその中の一人だ。彼はダンジョンタワーを取り囲む人々の中に兄と幼馴染みの姿を見付けた。


「兄ちゃん! リュミア姉ちゃん! 何が起きたんだ!?」

「おー、ザネク。よく来た。ご覧の通りに防衛機構が誤動作したらしくてな。中は水浸しだ」


 ザネクは障壁が半ば閉じかけた入口から階下を見る。既に地下一階は浸水して見る影もない。


「どうして誤動作なんか?」

「それがな、そこの馬鹿野郎どもがオークを引き連れて地下一階まで来やがって、そのオークはみんなで倒したんだがこの有り様だ。お陰で酔いも醒めちまった」


 ガノスは近くで拘束されている男達を顎で指した。グロンとその仲間だった。

 彼らはエリリースが講習の後には直ぐに帰宅の途に就くため、せめてルキアスにとオークでリベンジを試みたのだ。オークを一頭だけ擦り付け、ルキアスが少し痛い目に遭ったら自分達でオークを倒そうと考えたのだ。ルキアスがホーンラビットなら操れてもオークなら操れないだろうとの算段もある。勿論ルキアスは操れないのでグロンの思い込みに過ぎないが。

 しかしオークはホーンラビットとは違う。ホーンラビットを釣るくらいの気持ちで成功する筈もない。都合良く一頭だけのオークはなかなか見付けられず、見付けても上手く釣れない。結果、予定を大きく超える時間を費やした挙げ句に引き上げる決心をした時にはもう真っ暗だ。更には引き上げる途中に意図せず引いたオークの群れに這々の体でダンジョンから逃げ出した。

 そして年越しのお祭り気分で皆の気が緩んでいた間隙を突いたようにそのオークの地下一階への侵入を赦してしまった。しかしその地下一階には普段より探索者の姿が多いのだ。オークは間もなく討伐された。

 ところがこの事で長らく動いていなかった防衛機構が過剰反応。故障も明るみとなったのである。

 ザネクは概要を聞いた後、三人を無言で睨んだ。しかし三人にはそれが酷く突き刺さったらしい。


「こんな事になるとは思わなかったんだ!」

「ああ! あのルキアスとか言う奴をちょっと懲らしめてやるだけのつもりだった!」

「ヒッ!」


 途中でザネクの形相が般若のように変わったお陰で、三人は悲鳴を上げて口を閉じた。

 ザネクははたと気付いて周囲を見回す。だが捜す姿は無い。ガノスに尋ねる。


「ルキアスは? ルキアスは見てないか!?」

「そう言や、見てないな」

「リュミア姉ちゃんは?」


 リュミアも首を横に振るだけだ。


「まさかまだ中に!?」


 ザネクは半ば無意識に中に入ろうとするが、ガノスに止められた。


「待て。行ったってどこを捜していいか判りゃしない。下手するとお前の方がお陀仏だ」

「でも兄ちゃん!」

「まあ、ルキアスを信じてやるんだな。あれはあれで案外しぶといかも知れん。それにお前が付き合うに相応しいならどうにか生きて出て来るさ」


 ガノスの言葉はザネクには酷く冷たく感じたが、口調とは裏腹なガノスの酷く苦そうな表情に反論の言葉は声にならなかった。





 その頃ルキアスは水の中で瓦礫にのし掛かられて藻掻いていた。


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