87 弾丸
今回の体術の講習もリュミアに投げられるだけの時間だったが、ルキアスはロマの助言の通り、できる限り受け身を意識し続けた。すると少しだけ投げられる時の自分の状況が判るようになった。
講習の直ぐ後、ルキアスはロマと再会した。
「よう、ルキアス。またよれよれじゃないか。今日も体術で投げられたのか?」
「うん。始めから終わりまでずっと……」
「ほう。そいつは羨ましい。目を掛けられてるんだな」
「え? どうしてそうなるの?」
「だっておめぇ、受講者は他にも大勢居るんだろ? お前にばかり時間を使えない筈だぜ?」
「言われてみれば……」
リュミアは他の受講者の指導もしているので全くの付きっ切りではないが、半分近い時間がルキアスに当てられている。
「でもそれはぼくが初心者だからなんじゃ?」
「それも多少はあるだろうが、それを考えても破格だぞ」
「そうなんですね……」
(やっぱりザネクを気にしてるんだろうな)
特別自分がリュミアに目を掛けられる存在だとは思えないルキアスは理由を他所に求めた。しかし大きくは外してない筈だ。
ザネクは外見や言葉遣いなどとは裏腹に義理人情に厚く、たった四日一緒に旅をしただけのルキアスを見捨てられそうにない。もしもルキアスがダンジョンに消えたら悲しむことだろう。
そんなザネクを小さい頃から知っていて可愛がっていたらしきリュミアならザネクの悲しむ姿など見たくないに違いない。
ルキアスは午後の作業を弾丸作りに決めた。毎度のように疲れ果てる体術の講習の後はあまり動きたくない。弾丸作りなら動き回らなくても大丈夫だ。
物は試しで旅の途中に見せて貰った弾丸の弾頭に似せて作る。蒸気圧で飛ばすから必要なのは弾頭だけだ。
(これで真っ直ぐ飛ぶ?)
見せて貰った銃の弾頭は鉛で、銃身にはライフルが刻まれていた。ライフルが弾丸に噛むと、渦状に刻まれたライフルが射線を軸に弾頭を回転させる。この回転が射線を安定させると言う説明も受けていた。
しかしルキアスは材料の都合で弾丸も鉄になる。拾うなら鉛より鉄の方が手に入りやすいからだが、銃身と同じ材質ではライフルが容易に破損するだろう。破損しなくても弾丸がこれに引っ掛かって遠くに飛ばなくなる。
必然的に滑腔銃となるが、弾丸を回転させずに真っ直ぐ飛ばさなければならない。
ルキアスは試しに作った弾丸をお手玉しながらどうしたものかと考える。
落ちてくる弾丸を見ていてふと気付いた。先端からより底面から落ちてくる方が姿勢が安定している。……ような気がする。
(後の方が重いからかな?)
かと言って涙滴型は論外だ。蒸気圧をしっかり受け止められる形でなければならない。
そこで底面を抉ってみる。
放り上げてみても代わり映えはしなかった。まだ重いらしい。
思い切って側面も抉ってみる。全体の形が球にスカートが付いたようなものに変わった。そしてこれはどの向きで放り上げても、先端を下にして落ちて来た。
(これだ!)
如何にして安定して製造するかは課題として残されるが、弾丸の形の目途は付いた。




