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71 鉄棒

 ルキアスが急ぐのは銃の作成だ。これが出来ないことには何の稼ぎも得られないのだから。

 水蒸気を溜めるタンクは既に作っている。その蒸気の出口、即ち噴出口を塞ぐのは板状の蓋ではなく棒状の栓にすることまでは考えている。だからその塞ぐ機構の作成が目下の目標だ。

 噴出口の大きさに合わせ、先を少し細らせた鉄の棒を『捏ね』を駆使して作る。で、差し込んでみるのだが微妙に合わない。引っ掛かる部分を削るように成型し直せば、棒が穴に入るようになりはしても変な隙間が残ったりする。

 圧倒的に精度が足りなかった。


(どうしたら丸い真っ直ぐな棒が作れるんだろう……)


 ルキアスはタンクの噴出口に今し方作った鉄の棒を抜き差し考える。しかし何度か抜き差ししている間に閃いた。


(別に真ん丸にしなくても隙間が無ければいいだけだ)


 噴出口に差し込む棒は回転させたりしない。真っ直ぐ差し込んで真っ直ぐ抜く動きしかしないのだ。そうと判れば方法はある。

 鉄棒の細らせてない方の端を『捏ね』と『均し』を駆使してできる限り丸くする。少なくとも角が出来ないように。角が出来ればそこが脆くなるのだ。丸くなったらその端の部分に別の鉄を巻いて厚めの板にする。板から棒を引き抜けば穴の空いた鉄板が出来上がる。

 その鉄板の穴に新しく太めに作った鉄棒を『捏ね』を駆使して押し込む。これなら反対側から出た鉄棒は少し曲がっていても太さが均一になっている。この鉄棒を平らな板の上で転がしつつ歪みを失くせば真っ直ぐな鉄棒の出来上がりだ。

 タンクの噴出口はこの鉄棒に合わせて調整する。が、タンクの形のままでは非常にやりにくい。鉄棒に鉄を巻いて噴出口を作った後、タンクの形に成型する。つまり作り直しである。

 ルキアスはこうして鉄を捏ねるばかりで実験を何一つできないまま夕刻を向かえた。

 それでも一区切りは付いた。伸びをしつつ周りを見れば、回廊に向けてダンジョンから引き上げる探索者の流れができている。おまけに気付けば辺りは薄暗い。


(暗い!?)


 ここまで来る時は明るかったため、ルキアスはついついダンジョンはずっと明るいものだと考えていた。初心者講習ではダンジョンの中の様子までは話に無かったのもその思い違いを手伝った。

 そしてよくよく見れば、引き上げる探索者は徐々に減っている。流れはもう終わりの方だったのだ。


(うわっ! 早く引き上げるつもりだったのに!)


 ルキアスは思っていたより遅くなっているのに気付き、急いで片付けて回廊へと向かう。しかし回廊までのほんの数分のことで危険なほどに周りは暗くなった。『日時計』で確かめればちょうど日暮れ時だ。


(ダンジョンの明るいのは日中だけだったのか……。道理で……)


 初心者講習で聞いた朝晩には人通りが多い理由はこれだったのだと、ルキアスは悟らざるを得なかった。

 『ランプ』を点けて螺旋の回廊を登る。不思議なことに、地上近くだけは回廊の中も明るかった。


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