46 米
ルキアスが次の町に到着したのは日付が変わる前だった。しかし時間も時間である。町に入る手前で空き地を探してテントを置き、夜を明かす。
翌朝の目覚めは少し遅かった。前日の影響がもろに出ていた。それでもルキアスにとって比較的爽快な朝である。気分爽快とまで行かないのは疲れが残っているせいか。
身支度をして朝食を摂り、手早くテントを片付ける。それから拾い集めた鉄屑を広げてみる。
ブケットは大きな町だけあって、ルキアスが故郷のタードで何年も掛かって集めた数倍の量を一日余りで集めることができた。タードの人々の物持ちが良かったと言えばそうなのだろうが、それ以前に決定的な違いはある。
(裕福そうだったもんな……)
ブケットはタードに比べて明らかに豪華な建物が並んでいた。
ルキアスは目前の町にも目を向ける。ここもタードより発展して見える。
(あまり考えないようにしよう)
故郷があまりに田舎で少々落ち込んだルキアスだが、それはさておいて今考えるべきことは目の前に並べた鉄屑だ。
じっと見ている内、鉄パイプに何か引っ掛かりを覚えた。だがそれが何だったかがはっきりしない。
(判らない事は後回しにしよう)
ぐずぐずしてもいられない。次の町へと発つための準備をする。とにもかくにも町に入って話を聞いた。
次の町までは昼からでも十分日暮れまでに行けそうだった。
だから大通りに面した商店の店先を覗きながら歩いて進む。既に日もかなり上がった時間。多くの店が開いていた。
見知らぬ穀物を見掛けた。小さく細長い白い粒や茶色い粒が量り売りされている。小麦なら二日分くらい入るだろう枡で五百ダールだ。
(高いのか安いのかも判らないや)
「米が欲しいのかい?」
ルキアスは店主に話し掛けられた。だがルキアスは不思議そうに店主を見る。
「米?」
「いや、これだよ」
店主はルキアスがじっと見ていた穀物を指差した。
「ああーっ。これが米ですか」
「『米ですか』って、知らなかったのかい?」
「はい。ずっと北の方に住んでたからか、初めて見ました」
「ずっと北か。それならしょうがないな。で、買うのかい?」
「い、いえ」
ルキアスは顔の前で両手を左右に振りながら首を横に振った。
すると店主は肩を竦め、ルキアスを追い払うような仕草をする。商売の邪魔だってことだ。ルキアスも肩を竦めて立ち去った。




