45 身だしなみ
ルキアスは必要と思われる量の鉄屑を手に入れたことで漸く心に余裕が出来た。自らの身形を振り返りだってする。
そして気付くのがゴミ捨て場から遠いのに漂う異臭。周囲を見回してもその発生源は見当たらない。
(まさか)
ルキアスは自らの腕の臭いを嗅いだ。
「臭っ!」
ゴミ捨て場の臭いが染みついていたのだ。
(……追い立てられる筈だよ)
ルキアスはここで漸く自分が生ゴミを漁っていた、つまり食べ物を探していたと思われていたのを悟った。勿論ルキアスが探していたのは鉄屑だし、生ゴミには目もくれていない。むしろ邪魔に感じていたが、傍から見れば違いなど判らないのだ。
このままだと歩いているだけで追い立てられかねないと、ルキアスは今日の残りの時間を身体を洗うのと洗濯に費やすことにした。
とは言え、町中でばちゃばちゃやって周りをびちゃびちゃにしたのでは警官に追い立てられかねない。町を離れ、誰憚る必要の無さそうな場所を探すこと一時間ばかり。それから身体を洗って着替え、服を洗濯して、敷物とテント布を洗って『加熱』も用いて乾かす。
一日掛かりであった。
ルキアスは改めてクンクン臭いを嗅いでみる。
(わ、判らない……。
判らないから多分大丈夫……)
自信は持てなかった。しかしこれ以上はこまめに身体を洗い、洗濯するしかない。それより既に夕刻を間近に迎えている今、どこに泊まるかだ。
(戻りたくはないなぁ)
原因が自身にあったとしても、ルキアスとしては何となくケチの付いてしまった町には戻りたくない。少なくとも今日の今日では。だから先に進むことにした。
恐らく次の町に着く前に日が暮れるだろう。その時次の町まで歩き続けるか、方針を曲げて町から離れた場所で野宿するかは選ばなければならない。
幸いにも道は歩きやすい。夜通しになっても次の町まで歩く方が良さそうではある。
(あれ? 歩きやすい?)
ルキアスはここで初めて街道が舗装されていることを認識した。
振り返ってみるが、ブケットの町より更に向こうだろう舗装の切れ目なんて見えるはずもない。
(そりゃ、そうだ)
苦笑いが出た。




