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38 行き倒れ

 ルキアスがその手に持つ手書きの地図に記載された大きな町の一つノームに到着したのはアークラーを発って三日後のこと。この間だけで言えば当初の予定通りの日数である。雪が残って歩きにくい場所があったこと以外は記憶にも残らないような旅路だ。

 そして着いてみれば一昨日の未明までの雪が嘘だったように全く無い。南へ三日歩く距離は天候にも大きな差違があった。


(ノームは土妖精が建てたって言われる町だけど、本当に居るのかな?)


 ルキアスは伝説通りに土妖精が居ないものかと周囲に目を凝らしながら歩くが、それらしい存在は全く見当たらない。妖精の「よ」の字も無い。極々普通の町でしかない。少なくともルキアスの目に付く範囲には見当たらなかった。

 そして何も無いまま翌日の早朝にはノームを出発。アークラーの北の山の向こうとは打って変わって草の青がまだまだ濃い道を南へと歩く。


(?)


 街道の先に何か大きなものが落ちている。こんな状況はこれだけで不穏だ。好ましくない可能性が圧倒的に高い。

 それ故にルキアスは予想だにしなかった、そして得体の知れないその存在に緊張を強いられた。息を飲みつつ注視する。


(もしかして人が倒れてる?)


 行き倒れた人かは遠目では断定できない。しかしもしそうであれば放置もできない。

 ルキアスは生活魔法『望遠』で様子を窺った。


(人だ! いや、でも、待って)


 ルキアスから見て街道の向こうへ頭を向けて倒れている人は俯き加減のため、顔は街道のこちらを向いている。その顔色が良さそうに見えるのだ。変に赤かったり青かったりもしない。むしろ逆の意味で不自然さが感じられもする。


(何だか薄目で見られているような……。

 あー、やっぱり嫌な予感しかしない。関わってはいけないような……。

 だけどもし本当に倒れているなら助けなきゃだし……。

 一旦通り過ぎて、何も動きが無ければ助けに戻るのはどうかな?)


 方針を決めたルキアスは生活魔法『鏡』を小さく出し、倒れている人の様子を窺いながら通り過ぎる。


(あ、女の子だ。可愛い……)


 倒れていたのはボブウェーブの茶髪をした一四歳くらいの少女だ。ルキアスが『鏡』越しにも一見して可愛いと感じる容貌を備える一方、その身に着けているピラピラした印象のワンピースは半袖で、スカート丈も短くて太股の半分までも外気に曝されている。


(寒くないのかな……)


 ルキアスは邪な想念よりも先にそれを思った。ところがその瞬間、少女が目をカッと見開いてルキアスに顔を向ける。


「ひえっ!」


 咄嗟に口を押さえるルキアスだったが、時既に遅く、声は漏れた後だ。焦りを隠せず、早足になる。

 だが、少女は首から回し、そのブラウンの瞳がルキアスの姿を追い掛ける。


(やっぱり関わっちゃいけないタイプだ!)


 ルキアスは『鏡』を消し、更に足を速めた。


「こら、おぬし待たんかぁーっ! か弱いおなごが力無く倒れておると言うのに、スルーするとは何事かーっ!」

「うわっ! とっと……」


 ルキアスは後から少女に力一杯タックルされて転ける寸前まで行った。どうにか体勢を整えて少女を見るが、逆にルキアスにしがみ付いたままの少女に上目遣いで睨まれた。


(睨みたいのはぼくの方だよ!

 だけど、どうしよう? このままこの子を引き摺って行く訳にも行かないし……)


 ルキアスは仕方なく少女に溜め息混じりで話し掛ける。


「今ので『力無く』って力一杯主張されても……」

「んな事は関係無い! おぬしの性根を問い質しておるのじゃーっ! おなごが倒れていたら助けぬか!」

「今の君のどこに助ける必要が……?」

「必要かどうかではない! 誠意を問うておるのじゃ!」

「ええ……」


 酷い絡まれ方であった。ルキアスはまだまだ解放して貰えそうにないことを悟り、不承不承の風情で用件を聞く。


「ぼくに何をして欲しいって言うの?」

「うむ」


 少女は前置きするように得意げに一つ頷いた。


「なあ、おぬし。世界の真理を覗いてみたくはないか?」


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