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《夕焼けと流れ星》

破壊機械~白銀の四肢と世界の記憶~

の外伝的に扱いで書いていこうとしています。

世界ランク第5位の倉谷千&佐賀那月の話となってます。

 大カガク時代。千年ほど続いたそれは、科学と化学が発展し拡大していった時代だ。海と呼ばれたものはその九割が地下へと沈み管理されている。天気ですら今や環境管理塔により"再現"される時代となっている。当然車や人、道具や都市が四次元的に動き、それを埋める。そして研究は様々は種族が造り出され、生かされている。

 その生きている存在はなにも人間だけでなく、亜人や神話時代の生き物の再現や危険種などもいた。彼らはそれぞれの区画や組織の管理下など制限された場所で暮らしている。多くの亜人は地球の下層でくらしている。太陽の光りは届かず、それと同等の光量をもつ人工の灯りで暮らすのが下層の亜人達だった。しかし中には地上で暮らす種も存在している。それはその種の"人権"を考慮した結果だ。

     ★

 近い空。今この時代、この時は、おそらく地球上で最も空に近い場所。

 その場所には手すりがあり、大人が肘を置くには丁度いいそれは、彼女からしたら高すぎる。せいぜいが手すりの棒へてを掛ける程度であり、さながらそれが鉄格子のように感じるのが今の彼女だった。

(……キレイ…)

 感動しているのだと、10歳の少女は理解する。これが"夕焼け"かと、そしてこれが"雲海"なのだと、久々に日光を浴びる彼女は初めての茜色の空に感動する。動けないほどのその澄んだ景色は、夏場であるが汗ばむ気温ではなく、徐々に下がっていく気温の寂しさを感じさせる。

 3040年7月4日16:45を三分過ぎた今。雲海に半分ほど沈んだ緋色の太陽の光量は、徐々にその支配権を夜空へと譲っていた。

(やっぱり今日だ。今日しかない。)

体調は極めて良好。今日を逃したらもう決心できない気がする。

 そんな彼女の考えを背中で読み取ったようなにタイミングよく声が聞こえた。

「本当に…行ってしまうのですか?」

不安、そして説得を含んだような女性の声。少女が振り替えれば、やはりそこにいたのは見知った人物だった。

 赤いスレンダーラインのドレスは体のラインを顕著に写し出し、豊満な胸と同じ女性なら本当に内蔵が入っているのかと疑うようなほど細いラインを表している。気品溢れる金髪の髪は腰近くまで延びており、太陽の光を反射するそれはいよいよその女性を後光のように背後から照らす。そして何より、彼女の美しい"それ"は正に女神と名乗っても疑う余地のない存在へと昇華させていた。

「うん、私たち"翼人種(イカロス)"は、地上のことを知らなすぎる。誰かが行かなきゃ。」

「しかし、なにもあなたが行かなくても……せめて、"あの子"があと二年経つまでは、一緒にいては下さらない?」

「ごめん、ママ。」

ごめん…私、どうしても好奇心を押さえられない…。

 太陽を背にする形で振り返り、歯を見せての笑顔を作る。

「だって、この世界はこんなにキレイなんだもん!もっともっと!私の目で見てみたい!!」

この日、後に世界を大きく動かす"少女"は地上へ落ちたつ決意をした。

          ★

 "天空(スカイ)方舟(アーク)"。少女を含めた"翼人種(イカロス)"と呼ばれる一族が暮らすそれは、全長500m、幅200mの巨大な浮遊都市だ。自然を重視し、高さ20の城のような集合住宅には至るところに緑が茂る。その城下では街が坂道や岩壁に沿って立てられており、カガク時代とは思えないお伽噺のような幻想的な舞台となっていた。

 城に存在するいくつかの塔のうちの一つに灯りは灯っており、そこに少女とその母親の影はあった。

「はい。貴女のパスポートです。一応。名前も別のものを用意しました。」

これから貴女は、ここでの名前であった『サイガ・ナイトムーン』ではなく、『佐賀那月(さがなつき)』と名乗ってもいただきます。

 母親は心配を孕んだ語気で眉ねを寄せながらパスポートとなるデータカードを渡す。

「日本人みたいな名前ですね!」

「はい。これから降りる先はこの世界で一番のカガク力を誇る日本にしました。治安も良いですし、人も比較的穏やかなので。」

「わかりました!」

座ったまま、佐賀那月となった少女は敬礼のように手を頭に置いた。

 佐賀那月。白髪は透き通るように白く、首を覆いこそすれ、肩にはかからないほどのショートヘア。ぱっちりと開いた大きな瞳は灰色。まつげはその人種特有の羽毛のようなふわふわとしたものだ。赤を基調としたキャミソールの肩にはチュール布の装飾があり、下は膝上数十センチ丈のデニムショートパンツ、汗ばむ夏場にはぴったりの服装となっていた。

 そんな彼女は、塔の一角である自室で真っ赤なランドセルに荷物を詰めていた。あくまでカモフラージュのためのそれにはカガク時代特有の最新機能がいくつも搭載されている。その中の一つの機能を気にしたナツキはハッと顔を上げた。

「そうだ!この荷物袋の機能にナビゲーターはつけてないよね!!」

「えっ、」

目をそらし

「つ、つつ、つけてませんわ……」

「ぜっっったいつけたじゃん!!」

我がお母様ながら、どうしてそれで誤魔化せると思ったんですか!?

 ナツキの母親である彼女『サイガ・アトモスフィア』はこんな性格だった。しかしその立ち居振舞いからも察せられるが、彼女はこれでもこの国の女王の地位に就いていた。ナツキは自分が居なくなった後の政治運用を心配せざるを得なくなる。

「とにかく!今回私がやりたいのは一人旅なんです!ナビは外しますからね!」

「あぁ、せっかく苦手なカガク技術を学んでつけたましたのに…」

露骨に肩を落とすフィア。今時カガクに疎いというのは地上の人間からすれば信じられない話だが、一般に彼らと区画によって隔たれている亜人とではそれだけの技術の差は珍しくもなかった。

「そういう技術の遅れも、私としては実際に肌で触れたいんです!そのために色々勉強してきましたから!」

ナツキの視線を追い、フィアもその方向を見つめる。二人の視線の先には、びっしりと詰め込まれた五段の本棚と、それから溢れ山積みになった書物があった。

「確かに、貴女は他の子供達…いいえ、ここの医者ですらわからないような知識を既に持っています。カガクの発展した地上の子に紛れても、決して遅れをとらないでしょう。」

しかし、と母親であるフィアは胸に拳を当てる。

「それでも心配です。せめて護衛を連れてもいいんじゃないでしょうか?」

「ダメ。」

きっぱりと、半ば意地のように言葉を返す。

「私は、一人で行かなきゃ。こんなこと、他の人を巻き込めないから。」

自分の背中を撫でる。日が落ちた今でもその気になれば輝きで魅せることができるフィアと違い、ナツキの背には翼は見られない。

「他のどのとも翼とも違う、私なら誰より安全に地上で過ごせる!」

でしょ!そういうと、緊張を誤魔化すための笑顔を見せた。

「………わかりました。護衛は諦めます…。」

「ありがとう、ママ!」

立ち上がると、タタタッと裸足を走らせ、抱きつく。

「……今まで、こんな私を育ててくれてありがとう。」

          ★

 3040年7月4日20:00浮遊都市"スカイノア"の浮遊設備近くにある噴出口にナツキとアトモスフィアはいた。

「…じゃっ!行ってくるね!」

「はい。」

片手はしっかりと母親に、もう片方の手は球形の小型挺(ポッド)に手をかけるナツキ。未だに不安そうなフィアの髪は噴出口から流れてくる風で乱れている。

「本当に、気をつけて下さいね。貴女の"翼"は人に知られれば悪用される恐れがありますから。」

「うん!見つからないように、気を付けます!いつもは連絡できないかもだけど、必ずこちらから描けます!」

それでは、

「"サンライト"に、元気でねと伝えておいて下さい!お別れは朝に済ませましたけど!」

「……ええ、わかりました。」

少女は乗り込む。新たな世界を夢見て。

          ☆

「………ん…(ここは…?)」

ジジジというノイズが走る。自分が首を動かし、前を向いたことだけは自覚した。が、なにしろ景色が変わらない。まるで暗闇がおおっているようになにも視界て捉えることができない。

(あ…目瞑ってた…。)

キィィンという音ともに視覚情報が入ってくる。視界一面には、コンクリートと思われる壁がそびえている。それがビルの一部だということは、上を向くとこで理解できた。

 自分は座った状態で意識を失っており、そうして、街頭の灯りも届かないビルとビルの間に居るらしい。上をみあげれば、まだまだ高くそびえる他のビル群の灯りで、星の光は届かないようになっていた。今はただ、一割程欠けた月が輝く程度だ。

「……あっ……流れ星…」

なぜその光の尾が見えたのかはわからなかった。しかし、どこか呼ばれている気がした。

 各部位に命令を送り、ゆっくりと体を起こす。一度バランスを崩して地面に倒れると、自身の体に違和感を覚える。

 倒れた表紙にいくつかの鉄片が落ちたの理由の一つだが、地面に付いた両手のうちの左側がやけに視界から遠い気がした。

(…………あ……れ?)

鉄片が落ちた自分の顔の左側に触れる。確かにそこには穴があった。それも四指が第2関節まで入ってしまうほどの空洞だった。

(ボク…ガ…にんげんじゃ、ナイnoハ、り解して…ル。)

でもこの以上は、先ほど寄りかかっていた場所には左側であり、そこにてを伸ばす。ゴミ箱があるようで、そこの一番上をつかむとそれを支えにして立ち上がる。

 そうして一般の機械が振り向くよりも多く左へ首を動かし、何か反射するするものがないかと見つめてみる。が、そんな必要はなかった。

 視界を左に移したあと、下を向くより先に、そこにあった硝子窓により自身の姿を確認できた。

(a……やっpa…リ。)

右の視界では、自身の顔の左側がごっそりとえぐれた自分の顔が移し出されていた。

(ツいdeに……寒い、ト…思っタら、裸……だシ。)

首から下には何も身に付けていなかった。

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