第二十六話 『届いているよ(1)―シアン前編―』
今回はシアン視点です
◇◇
猫は、ずっと自分の最初の信念を守り続けてきた。
例え疑心を抱いてその信念が形骸化したとしても、賛同して散っていった仲間のために、猫は『勇者』として『魔王』を切り捨てた。
本当は悪を機械的に滅ぼすシステムではなく、絵本に登場したような全部を救い切る格好良い後ろ姿に憧れた。そんな衝動を、猫は仲間の死の意味を守らねばならないという強い責任感で、何度も、何度も、蓋をした。
薄っぺらくて、脆くて、頼りない蓋だ。
とっくに見限られても仕方なかった。
なのに七瀬沙智は、血が滲むほど両拳を握り締めて。
――まだ、足りないかよ?
悔しそうに叫ぶんだ。
その声は、猫にちゃんと響いていた。
§§§ 競赤祭四日目、午後六時
「――まだ私は何もぉっ!!」
だからこそ、渓谷墓地の地下で猫は絶叫する。
小さな惨劇に膝を折って、絶叫する。
視界を焼くような銀色の中で、少年と女性は床に転がって命の終わりに瀕していた。メイド服の女性は腹部に血溜まりを産んで徐々に青褪めていき、その数歩奥では少年が仰向けになって倒れたまま、ピタリとも動かない。
あるいは冷静だったならば、外傷のない少年の方は命に別状なしと気づけたかもしれない。だが涙目で叫んだ猫に、そんな余裕はなかった。
「――っ!」
猫は、仲間から教わった方法で必死に止血を始めた。
一度は対立した相手だという事は、手を緩める理由にならなかった。猫は、まだ何も返せていないのだ。謝罪も、感謝も、何一つ。
十九年と二か月の人生を振り返っても思い当たる場面がないほど、猫は必死だった。滅多に涙を見せない気丈な猫が、頬に流れ落ちた一筋を拭うこともせずに、歯を軋ませ、彼女らの命の終わりに必死に抗い続けた。
必死で、必死で、本当に必死だった。
背後の足音を、聞き逃すくらい。
「セぇ、シリー?」
「――――」
「お兄、さん?」
「――――」
か細い音色が、時間差で二度、震えて響く。
振り返れば、ギーズと悪魔、そして七瀬沙智と共に行動していた桑色髪の少女。見知った三つの顔が、階段前で呆然と立ち尽くしていた。
猫は対応に困って目を伏せた。猫は、どうしようもなく、この状況を説明するだけの語彙を持ち合わせていなかったのだ。
猫がこの現場に出くわしたのは本当に偶然である。そもそも猫が渓谷墓地に足を運んだのは、ある少女の死がキッカケだった。ずっと避け続けてきた宿敵ミシェルの墓に複雑な想いで報告に向かった猫は、その生来の嗅覚で異常な熱気の中に血の匂いを嗅ぎ取った。謎の黒い墓標の近くに地下へと続く階段を見つけ、匂いの源を探り進み、つい今しがた凄惨な狩りの跡地へやって来たのである。
だがそれを訴えても、無意味だと猫は感じた。
少女らから見れば、考えは間違いなくこう帰結するだろう。七瀬沙智らと対立していた猫が、執念深く追い込んで、今まさに止めを刺そうとしているのだと。
その証拠に、桑色の少女の瞳で、鮮烈な怒りが灰となる。
事実は違うが、弁明の言葉はない。
そう諦める猫の前で、他の二人は冷静だった。
「落ち着けトオル、恐らくあやつの仕業ではなかろう」
「それに、どうもいがみ合ってる余裕はなさそうだぜ」
憎悪が孕んだ瞳が指差した方へ、猫も顔を向ける。
遅れて、猫もその意味を理解した。
二対の柱が連なる最奥に、王は眠っていた。
その全身をフロアと同じ美しい銀に包み、原初の恒星に等しき火焔の寝息を立て続ける。猫が女性の蘇生に必死に努める間も、銀色の巨像は我関せずと瞑目して座禅を組み、復活の時を今か今かと待ち侘びていた。
赤の大魔王は、静かにフロアの最奥に座っていた。
猫は、その圧倒的な存在に気づいてやっと、自分がどれほど余裕がなかったのかを理解した。一度認識してしまえば、鮮烈な銀から目を離せない。
一方、背後で納得できない少女が、声を荒立たせる。
「彼女でないなら一体誰が!?」
「パジェムに決まってる。――シアンも聞け。あの野郎は間違いなく魔神信仰会と裏で繋がっている。七瀬沙智らに大魔王の封印場所を嗅ぎ付けられたから、口封じしたに違いない。野郎の狙いは、正直まだ分からんが」
「――――」
確かにギーズの言う通り、パジェムの匂いが残っている。
鼻をひくつかせ、猫の頭の回転は速かった。
パジェムの狙いは恐らく、赤の大魔王討伐の栄誉――。
彼は甚く歪んだ勇者像を思い描いており、ヤマトに強い対抗心や劣等感を抱いているというのが客観的に見た猫の感想だった。『雷鬼王』すら一撃で屠った伝説の聖剣を奪って、不倒の大魔王を倒してヤマトより大きな名声を獲得する。
もしも彼が七瀬沙智の正体を知っていたならば、そういう考えに至るのを、猫はごく簡単にトレースできた。いかにも姑息なパジェムらしい。
ギーズが彼の狙いに首を傾げるのも無理はない。
七瀬沙智が六人目だと知らないなら。
裁かなくてはならない。
あの姑息な愚か者を、いつか必ず。
そう思う一方で。
「でも、パジェム抜きで倒せないでしょうね」
猫は眠れる銀像を仰いで、小さく吐息を溢した。
それから、猫は足元の少年を見下ろす。
「――――」
昨晩、ある少女が称号に抗って命を落とした。
少女が死んで、猫の本音を閉じ込める頼りない心の檻は、音を立てて決定的に崩壊した。自分自身の犠牲を以てして赤の国の住民に伝えようとし、しかし大多数には伝わらずに終わってしまった想いを、猫は確かに受け取った。
いいや、湧き上がる衝動を、もう認めざるを得なかった。
――勝手に、限界を決めてしまうな。
救える者と救えない者の間に定めた、境界線。
ある時は称号を言い訳に、ある時は歴史を言い訳に。
本当の願いを隔てる、限界線。
その願いを諦めたくないという衝動を、様々な立場の人間が、様々な言葉で呼び覚ましてくれた。真正面から、葛藤を帯びて、誓うように、時には感謝を込めて、時には声すらなく、時には悔しさに拳を震わせて。
どうしようもなく拗らせた猫に、諦めずに叫び続けてくれた少年がいる。猫が自分の限界を越えられると信じて、叫び続けてくれた少年がいる。
「ええ、分かったわよ」
「シアン?」
「もう、自分に嘘つくのはやめる」
猫はその場に屈んで、少年の胸に指を乗せる。
これは儀式。猫の一方的な儀式だ。
もしも大魔王が目覚めれば、沢山の想いが無為に帰す。
パジェムは信用できず、敵は歴史上一度も傷もない名を冠する大魔王。それでも猫は、仲間の死の代償を身勝手に他人に押し付けたりなどしない。敵ではなく、守りたいものを優先する。守りたいものをもう見失わない。
全部を救い切る格好良い桜の勇者を、諦めない。
彼のお蔭で、猫は思い出せたのだ。
何のために聖剣を振るいたかったのかを。
「ねえ、聞いて」
自分が守りたいもののために全力を尽くす。あの時、砕けた階段の下で必死に叫んだ七瀬沙智の在り方こそが、猫の目指したい――。
――勇者像だった。
§§§ 午後九時
少し時間が経過して、自治会庁舎。
七瀬沙智の友人がいち早く赤の大魔王の存在を報せたため、二階講堂には緊急会議の場が速やかにセッティングされていた。猫とギーズが庁舎に戻った時には、赤の大魔王の封印融解は他の勇者にも周知の事実であった。
その円卓には、疑惑の男の姿もあった。
パジェムがいることは、猫も想定内である。
ただ一点、猫が大いに驚いたのは――。
「――はあ!? アルフが早馬っ!?」
「信じられないかもしれないけれど本当よ。嵐の中を走ってきたみたいに泥だらけの格好で庁舎にいたコーディの下へ報せに来てくれたわ。何でも『大天使マヨワセルの幻覚に、匂いだけを信じることで打ち勝ったのだー!』だったかしら?」
「数万年にたった一度の奇跡ですぅ!」
セリーヌが人差し指を顎に当てて記憶を掘り起こし、確認を求めた猫の背後でコーディが拳を震わせて涙していた。視覚に頼らず、嗅覚だけを信じて目的地へ。我が子のように接してきた迷子兎の成長に、猫は抱き締めて褒めちぎりたい衝動に駆られたが、下唇を強く噛んで何とか我慢する。
今は、復活目前の大魔王こそ問題の主軸である。
思わず頬が緩みかけた猫にクスリと笑いかけ、しかし直後セリーヌは襟をピシャリと正した。瞬間、場に緊張が走り空気が重く変容する。
最初に共有が図られたのは、現状についてだ。
「アルフちゃんが報告してくれた『赤の大魔王』封印場所は渓谷墓地にある地下空間。全体が銀色の鉱石で覆われたフロアの最奥よ。地下空間全体に封印を補助する魔法陣が広がっているらしいんだけど、そこに解れがあるみたい」
「魔神信仰会が何か細工をしたってところか」
「ええ、ここ数日の国内の気温上昇も大魔王復活の予兆だったって訳ね。――本当に残念、何で犠牲が出る前に気付けなかったのかしら」
一通り封印について説明した後、セリーヌは緑色の髪を指先で弄りながら、何かを悔やむように、そう付け加えた。
犠牲という単語に周りが怪訝な反応を浮かべる中、その反応に気づいたセリーヌは自身の失言に顔を顰め、こう補足する。
「渓谷墓地に居合わせたギーズとシアンが、その場所で二名の『遺体』を発見している。身元の確認はまだだけれど、恐らくは大魔王の封印解除を進めていた魔神信仰会が、偶然迷い込んだ彼らを口封じしたものと思われるわ」
細い指を組んで、どこか悲壮感ある光をセリーヌは瞳に浮かべる。
整った横顔は、辛そうで、切なそうで――。
その全てが、演技だと猫は知っていた。
渓谷からの道中で、ギーズとセリーヌが示し合わせてパジェムの悪事を追っていた点は猫も理解していた。失言を装って、現在医務室で治療中の七瀬沙智らの事をパジェムの頭から切り離す。『賢者』と呼ばれる女の悪知恵だ。
実際、金髪の性悪男はエルフの策略に気づかず。
「ほほーう、遺体ねえ」
「――ふ」
浮かれた表情で満足げに腕を組んだ無様な男を、二つ隣りの席でギーズが鼻で笑った。一方で、こちらの状況を知らないヤマトは話の軌道を戻す。
「で、封印は結局どうなんだ?」
「こうやって話している間にも破られるかもしれないわ。競赤祭期間中に赤の大魔王が真価を発揮すれば、この国には文字通り灰しか残らない」
「誇張でもないんだろうな。歴史を見れば」
ヤマトの落胆した様子に、猫は赤の国のもう一つの呼び名を思い出していた。英雄ボルケと大魔王が炎を争った、歴史と灰を刻む国。何度も、何度も、この国は避けられない煤と灰塵を繰り返してきた。
何より、問題を複雑化させているのは一つの称号。
この国に人々を縛る、鎖である。
「ジョズエさん、『イズランドの決まり』は無効にできないの?」
「残念ですがまだ二十七時間も効力が残っています。祭り五日目が終わらなければ称号の規定は解除されません。外部機関と協力して、何とか自治会役員総当たりで住民に避難を促しているのですが、国境を越えられないのがネックでして……」
「思うように避難は進んでない、だな」
同席していた自治会役員の濁した声を、ギーズがはっきり言葉にする。称号のせいでどうせ逃げ切れないという諦観の念が、どこか国民にはあるのだろう。
悪夢の五日が終わる前に大魔王が目覚めれば、甚大な被害は免れない。
重い空気の中、セリーヌは口を開く。
「とにかく、私たちは至急決断しなければならないわ。魔神信仰会がこのまま封印の解除に手こずり、『イズランドの決まり』が失効するまで大魔王が復活しないことに期待して、住民の避難準備に協力するか」
最も現実的で、最も神様頼みなのが、この案だった。
救える者だけを、最低限救う選択肢だ。
「あるいは」
もう片方は、非現実的。
実現不可能にさえ思える。
それでも――。
「――赤の大魔王を倒すか」
全部を救い切ることができる、唯一の選択肢だ。
猫がセリーヌの声を奪い取るように呟くと、場は一層静まり返った。『大魔王』撃破が如何に高い高い壁かを、各々の『魔王』戦で出た被害に少なからず苦汁を舐めた勇者たちは身を以て知っていた。
だから、最初の声は当然だった。
カランと氷が溶けて、反対意見が出たのは。
「かーっ! お前ら分かってんのかぁー? 敵は『大魔王』だぞ。その称号がもはや、絶対に誰にも倒せない化け物だという証明なのさっ! 俺様ほどの天才に聖剣エクスカリバーがあってようやく勝てるレベル! あの英雄ボルケですら引き分けるしかなかった化け物をどう倒せと、ああ? 俺様は戦うのは反対だね!」
「これと同じ立場なのは癪だが、俺も反対だな。相手は千年の歴史で一度も黒星を知らない『大魔王』だ。一番最悪なのは俺たちが大魔王を倒せずに破れて、かつ悪夢の五日間が終わる前に奴が目覚めて暴れ出すってパターンだ」
一見論理染みていて、実は感情で否定しているのがこの二人。
パジェムとギーズの二人である。
猛烈な勢いで主張を展開したパジェムは、恐らくは復活した大魔王を名誉のために自ら倒すことを狙い、魔神信仰会と同盟にある。しかし、七瀬沙智から聖剣エクスカリバーを強奪できていない状況での攻略は拒絶。
チラチラとパジェムの方を鋭い視線で睨んでいるギーズは、単純にパジェムと一緒に戦うのが嫌なのだろう。信用のおけない人物に背中は預けられないというのは警戒心の強い彼らしい。尤も、心理的には猫も同じだが。
一方、賛成意見を口にしたのはヤマトだった。
「だが、チャンスじゃないか?」
「何だとぉ?」
「渓谷墓地の封印の効力はまだ死んでいない。もしかしたら、力が弱まっている今だけが、大魔王を滅ぼせるチャンスかもしれない。無論ギーズの懸念通り、戦力を全て消費して負けたら元も子もない。だから、情報収集に焦点を当てる」
「――――」
「討伐の糸口を掴むための、撤退視野の攻略を提案する」
ヤマトのハキハキとした物言いに、猫も含めて一同目を見張る。
彼は適当な雰囲気で、呆れた様子のメイリィに軌道を正されるのがいつもの様式美だった。だが、赤の国で再会して以降のヤマトは、少し雰囲気が違う。
その理由を、何となく猫は知っていた。
「おいおい、泣き虫ヤマトが成長したもんだなあ、ええ!?」
「諦めるのは格好悪いって教わったのさ」
堂々と接するヤマトに、思うように揶揄えなくて舌打ちするパジェム。その様子を無言で面白がったギーズは、真剣な眼差しを左側へ遣る。
「セリーヌ、あんたは?」
「私はヤマトの意見に消極的な賛成という立場かしら。チャンスなのは間違いないわよ。ただ問題は、そのチャンスがまだそれでも高い壁ということ」
「やっぱ『大魔王』って点が難題か」
猫たちよりも二百年近く長生きしているエルフの豊富な人生経験が、セリーヌ自身の判断を鈍らせているように猫には思えた。
カランとまた、グラスの中で氷が溶け落ちる。
議論は、しばらく平行線を辿った。
ヤマトが戦うべきと主張すれば、セリーヌが如何に大魔王が恐ろしい存在かを示す歴史を語り、パジェムが牙を見せて首を振り、ギーズが難色を示す。決して交わることのない平行線。しかし元を辿れば、そこにある理由はシンプルだった。
だから、猫は一言こう告げた。
「――あなたたちは本当に歴史が好きね」
「あんだとぉ!?」
「事あるごとに千年の魔神支配の歴史を引き合いに出して、一度も前例がないと騒ぎ立てる。そこを勝手に限界と決めつけて、新たな一歩を否定する。心の内の衝動を否定する。ねえ、あなたたちはそんなに怯えるのが好きなの?」
猫は、知っている。
限界に挑み続ける者を。
「もしここに『六人目』がいたら言うでしょうね」
「――――」
「『五人が目指した反撃はその程度だったのか』って」
小さな少女の小さな抗いは、誰の目にも留まらなかったかもしれない。
小さな少年の小さな願いは、高い壁に潰されてしまうのかもしれない。
それでも――。
「パジェム、あなたの自慢の聖剣なら大魔王の一撃だって防ぎ切れる。六人目やヤマトなんかよりもずっと強いんでしょ、違わない?」
「――――。ふむ、確かにそうだ。エクスカリバーなんぞなくとも俺様の聖剣ゾルファガールがあれば、赤の大魔王など赤子も同然よ!」
小さな誓いは、誰の耳にも届かなかったかもしれない。
小さな命は、何の役にも立たずに散るのかもしれない。
それでも――。
「ギーズ。あなたの不安は分かるけど、今は五人の力を合わせることが必要よ。パジェムもこうしてやる気になっているのに、あなたは不満?」
「ビビりかぁー? ギーズ君はビビりなのかなぁー?」
それでも――。
それでも守りたいと、猫は思った。称号も、歴史も、仲間の死も、何も言い訳にしない。境界線を引かず、救える者全部に手を伸ばしたいと。そんな格好良い誰もが憧れるような勇者になりたいと、なれるんだと、なるんだと。
猫は、自分が今まで目前に引き続けた自分の限界を越えたかった。
先ほどヤマトに向けられたのと似たような目が猫に向く。そんな眼差しが猫の座標で交差する理由も、同じく、猫は何となく知っていた。
「良いも悪いも可能も不可能も、現実的に判断してたお前らしくねえ」
「ふふっ、そんなに彼らの言葉は痛かったかしら?」
きょとんと首を傾げるヤマトやパジェムの前で、猫はそっと自分の胸に手を置いた。その声は、複雑な色を奏でて、猫の胸を痛いほど鳴らしている。
ここに、本当の心があるんだよと、今も猫に教えてくれる。
だから猫は。
いいや、シアンは――。
「目の前に立ち塞がる高い高い壁。称号や、歴史や、脅威や、もっと別の柵が壁となって私たちに限界を引いた。壁の向こうにある未来も、壁に挑みたいという衝動も、どうせ全部無意味なんだ。そう思って、真っ暗闇の中で顔を上げたら――」
世界は、真っ暗闇。
でも爆発の直前、その姿こそ。
「――あいつは、いつだって限界の先にいるんだ」
猫の、憧れた勇者だった。
§§§
そして、日を跨いで午前一時半。
古に刻まれし火焔の王と。
反撃を謳う青き五芒星が。
渓谷墓地地下、悠銀の間にて。
「――『風ドラ』ッ!」
遂に、衝突する――。
【赤の大魔王・銀像】
ボルケの封印に対抗して赤の大魔王が銀の鎧を覆った姿だよ。スキルが一切使えない代わりに、渓谷墓地の地下空間だけなら封印下にあっても活動することができるんだって。その銀の鎧は瘴気を結晶化させたもので、羽化前の『魔王』が持っている瘴気の鎧よりずっと強固。反撃の勇者たちは、この化け物にどう立ち向かうんだろう。
※加筆・修正しました
2020年6月6日 加筆・修正
表記の変更
ストーリーの一部変更
・沙智ら捜索メンバーの変更
視点の変更




