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ミッションインポッシブルの果てに

魔女の鋭い爪が私を斬り裂かんと迫る


「さすがに無理」


「マリエラ!!」


スーーー


「ほいっ」


「……なっ!」

ズドン


大きな音と共に魔女が地面に倒れ込んだ


「一体何が………」


訳がわからないという魔女の顔

しかし私からは見えていた

魔女の右手、エステルさんの木刀に絡みついたそれが

思いっきり引っ張られたのだ

そう……


「……服がボロボロですぅ」


壁に叩きつけられたはずのエステルさんが

何事もなかったかのように立ち上がり、

そして魔女を引っ張り上げたのだ


「エステルさん!」


「バカな!

普通の人間なら潰れて死んでるはずだわ!

なのに……なぜ!?」


魔女が驚きの声を上げる

無理もない

あれだけ容赦なく叩きつけた相手が、

服が破れた程度で体にはかすり傷すらなかったのだから


「頑丈なのがぁ取り柄なものですのでぇ」


そう言って服に付いたホコリをパンパンと払った


「あの木刀の身体強化って凄いのね」


「………ふむ、そうじゃな

(はて?防御面まで強化する様に作った覚えはないがのぅ)」


とにかく魔女が呆気に取られてる今がチャンス!

私は緩んだ魔女のツルから抜け出し再び駆け出す


「む、しまった…!」


魔女も私の行動に気づくも、再びエステルさんに引っ張られ、いまだ立ち上がれない


「調子に乗るな!人間ごときが!」


私への攻撃をやめ、魔女の攻撃対象が完全にエステルさんへ向けられる


それを見計らい、私は一目散に駆け出し、コントローラーを手に入れると、すかさずラヴィさんたちの方へと投げ……


「ナイスよマリエラ!……っんな!?」


投げたはいいけど全然見当違いの方へと飛んでいく


「ノーコンかぁ!!」


「シスター!そっちへ行ったぞ!」


エステルさんがそれに気づき、魔女の右手が絡みついた木刀を床に突き立て走り出す


「何をしたいのか分からないけど、

思い通りにはさせないわよ!!」


魔女もそれを追う様に飛び上がる

しかし…


「な……」


魔女の目の前に丸いボールの様な物が現れ、

その瞬間、小さな爆音と共に破裂する


「小型爆弾じゃ、おぬし相手でも目くらましくらいにはなろうて」


それはカグヤさんが投げたものだった

魔女がその爆発に一瞬怯んだのが功を奏し、

エステルさんは私が投げたコントローラーをキャッチし、すかさずラヴィさんの方へと投げ込んだ


「オーライオーライ………んが!」


見事ラヴィさんの顔面に直撃

この人運動神経もないのか


「よくやった二人共!」


ラヴィさんの顔面に食い込んだコントローラーをカグヤさんが取り上げ魔導車に接続する


「痛たたたた」


「いつまでバカやっとるのじゃ

さっさと動かさんか」


顔面をさするラヴィさんを魔導車に引き込み、

簡単な説明を始めるカグヤさん


「えーと、これからどうすれば…」


結構イヤーな位置にいる私はどうしたらいいのか分からず立ち尽くす

すると、エステルさんがこちらへと走り込んできて、

フワッと私を抱えると魔導車の方へと駆け出した


「マリエラちゃん、怪我はないですかぁ?」


「いや、それはこっちのセリフなんだけど」


「おのれ、このまま逃がすものか!」


魔女が体勢を立て直し、再びこちらへと襲い掛かろうとする……が


ズガン!


「ぬがぁ!」


魔導車が容赦なく魔女をはね飛ばした


「え、えげつない」


「良い子は真似するでないぞ、さぁ乗れ!」


エステルさんと共に魔導車に乗り込むと、

一気にスピードを上げ、さっきまで魔導車を格納していた所へ入り込んだ


「向こうの入り口から出ないの?」


「小さすぎて魔導車は出られぬよ

この車庫の反対側に専用の通路を作ってあるのでな

そこを抜けて森へ出る」


言う通りに魔導車を操作して専用通路を走行、

それに気づいた魔女が起き上がり追いかけてくる


「はねられたのにピンピンしてるんだけど!?

あの魔女怖い!」


いや、そのちっこいコントローラーでこんな大きな魔導車を動かしてるラヴィさんも十分怖い


「すごい不安、その運転方法」


「妾も自分で改造しておいてなんだが、

よくそんなので上手く走れるな」


「これ楽しい!

アタシ凄くない?凄くない?」


危なっかしい見た目とは裏腹に

魔導車は安定して走行を続けている


「そのコントローラーのぉ

上の角にある2つのボタンはなんですかぁ?」


「LRボタンじゃな

それはドラフト……んが」


ラヴィさんがそのボタンを押した瞬間、

魔導車は真横に向いたままタイヤを滑らせる様にカーブを曲がる


「やめんかバカ者」


「えー、今の流れはボタン押す流れだったじゃん」


あんな無茶苦茶な挙動をとっても全く転倒しない魔導車

一体どんな仕組みになっているんだろうか


「出口が見えましたよぉ〜」


長い通路を抜け、ようやく森へと戻ってきた

魔女とは大分距離が離れたらしい


「頃合いじゃな……ポチッと」


カグヤさんが手元に持っていた何かのボタンを押す


「なにそれ、自爆ボタン?」


「おぬし、本当に阿保じゃのぅ」


爆発したのは背後のアーティファクト工房だった

耳を貫く様な爆音が響きわたり、

洞窟全土を崩壊させ、大きな爆煙が森を覆わんばかりに噴き出した


「魔女、どうなったかな」


「あれで死ぬようなら苦労はせぬよ

まぁ暫くは動けんだろうがな」




魔導車はそのまま走行し続け、あっという間に森の入り口へとたどり着いた

ラヴィさんはそこで魔導車を停止させ、

私達は爆煙立ち上る森を眺めていた


「えらい目にあったわねー」


「この非戦闘員だらけでよく生き伸びたと思う」


「あのぉ、私一応戦闘担当だと思うんですけどぉ」


「妾もまさかこんな頼りない連中と脱出する事になるとは思うておらんかったわ」


四人で大きなため息をついたあと、

不意に「あの爆煙の中から、魔女が追いかけてきたら怖いよねぇ」

とラヴィさんが嫌な事を言い出したので、

全員真顔で魔導車の発進を促した



こうして魔女討伐という私の初めての仕事は終わりを告げたのだった


『人使いの荒い巫女さんが仲間に加わった』



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