故郷に帰る 11
アンナマリー号に戻るなり、私はオロオロしながらカグヤさんとエステルさんにことの顛末を説明する
普段無口な分、説明に手間取る私を見かねて、
おっちゃんがフォローしてくれた
「すまん、オレがついていながら…」
「いや、そもそも勝手について行ったラヴィリスに非があるからのぅ
自業自得と言わざるを得ん」
「でもぉ困りましたねぇ
時空の歪みに飲まれたとなるとぉ一体どこのどの時代に飛ばされたのか分からないですしぃ」
そうなのだ
海に落ちて漂流したのならまだ何とかなった
……ような気がする、うん
しかし時空が違うとなると……
あれ?なんか忘れてるような……
「おんやぁ〜?
マリエラちゃんを思い浮かべて飛んだら、ここどこだべか?」
突如現れたのはメグルさんだ
先程カグヤさんが頼んだ美中年を届けに来たようなのだが…
「おーホントに空間移動出来んだねー」
何故かヒスイさんがオマケで付いて来てる
「おい、あのナイスバディのお姉さんは何者だ!?」
「ん、ラヴィさんのママ」
おっちゃん、ラヴィさんの事そっちのけでヒスイさんに夢中になりだした
「おぉあれがそうなのか!
……あれ?なんか見覚えあるような…」
「メグル、ヒスイを連れてこいとは頼んどらんぞ」
「それがなぁ話すと長くなるけどもな…
さっきラヴィさんの所に飛んだんだけども、
やたら人の多い所さ出てな
ラヴィさんの元にたどり着けずに人波に押し流されただよ」
そして仕方なく一度空間転移して、私の村のギルド、スナックあおいに寄るとそこに見慣れないオーガのお姉さん、ヒスイさんが…
で、案の定メグルさんに興味を持ったヒスイさんがあーだこーだと関わって、
結果、ここに連れて来てしまったと…
「いきなり現れたからビックリしたわよ
てかこの子なんか見覚えあんのよね〜どこで見たんだっけか…」
どうやらヒスイさんはメグルさんとを知っているようなのだが、
逆にメグルさんは全く知らないという
どういう事だろ?
「…ま、いいかー
しっかし空間転移に美中年、次から次へと面白い巡り合わせだったわ!
長生きはするもんねー」
満足気なヒスイさんを見て私は逆にいたたまれない気分になる
よりにもよってラヴィさんが行方不明になった時にヒスイさんが来るなんて…
……いやちょっと待って
「メグルさん、さっきラヴィさんの所に行ったって言った?」
「んだよ、ついさっきだでね
あんな人の多いとこ行ったのは初めてだよ」
「ちょっと待って下さい〜
それってぇラヴィのいる時空に行けたってことてすよねぇ?」
その場の全員の視線メグルさんに集中する
そういえばこの人、ディメンションブレイカーという見た目に反した特殊能力者だったわ
さっき何か忘れてたと思ったのはこの人の存在だったわけか
「オラ、時空転移が特技だでね」
「すまん、さっきからお前さんたち何の話をしてるんだ?」
「うんうん、あたしも全くついて行けてないんだけど?」
おっちゃんとヒスイさんにはちゃんと説明しないといけないね
……………………………………………
「……にわかには信じ難いが、
時空を飛び越える能力があるなんてな」
「妾も最初は空間転移程度の力と思っておったが、
ここ最近メグルの能力の研究をしておってな、
時空転移も出来るのではないかという仮説はあったのじゃが」
そもそも別の時空に存在する精霊の広場から私たちの所へ転移しているのだから可能性としては高かったわけだ
「ん、じゃあラヴィさんを連れて戻る事も可能って事だね」
「全くラヴィリスのやつめ、面倒事に首突っ込む性格は変わらないわね〜
……ん?ちょい待ち」
ヒスイさんはカグヤさんやエステルさん、そしてアンナマリー号の乗客たちの服装を見て何かに気付いたようだ
「……もしかしてラヴィリスもドレス着てる?」
「ん、着替える暇がなかったからね」
「それがどうかしたんですかぁ?」
ほぅほぅ、とヒスイさんだけが納得して大きく何度も頷いている
「…そうかそうか、ラヴィリスが時空に飲まれて…
あ〜なるほど、“アレは今日”だったのか」
不思議と落ち着いているヒスイさん
何か知っていそうなのだが……
しかしそんなヒスイさんより気になるモノが視界に入り、
私は何気なくふとヒスイさんの横にいる存在に視線を向ける
あれ?
「……ねぇ、ここに猫の獣人の人なんていたっけ?」
見慣れない、いや、顔はなんとなく見覚えがあるんだけど……
猫っぽい耳と尻尾がピョコピョコ動いている
「何をバカなことを、寝ぼけとるのかマリエラ?
そんな者おるはずが……」
全員の視線が猫の獣人の人に集中する
「それぇ…キリキリさんという方ではぁ?」
「え、いや待てよ、キリカは人間だぞ!?
なんで獣人になってんだ!?」
よく見るとやはり顔はキリキリさんだ
しかしいつの間にか猫耳と尻尾が生えている
「ほ、ホントだニャ!」
「語尾まで変わってる!」
「あ、いや、ごめん、今のは見た目に寄せてみただけ」
この人順応早いな
「あーそれ、こっちの世界に合わせてその人にあった身体に最適化してんのよ
普通は異世界から漂流してくるとそのままの場合が多いんだけど、
極たまーに身体が変化する人もいるのよねー」
説明を入れたのはまさかのヒスイさんだった
この手の話はおっちゃんかカグヤさんの担当だと思ったのだけど…
「最適化!?オレ、今まで何人も漂流者を助けてきたけど、そんな奴いなかったぞ?」
「だから、珍しいんだってば
あと、時間差もあるからすぐ変わる人もいれば何年か後になる人もいるらしいよ」
「というか、なぜおぬしがそんな事を知っておるのじゃ?」
そう、そこだ
なんでおっちゃんも知らない異世界漂流者の事情を知ってるのだろうか?
「そりゃまぁ、あたし自身がその最適化した異世界漂流者だからね」
ヒスイさん、この期に及んでそんなとんでも設定ぶち込んで来ないでよ




