故郷に帰る 7
サンガ島に上陸するとおっちゃんは早速部下の二人に指示を出し、分散して捜索を始めた
もちろん私とラヴィさんはおっちゃんの後について行く
「サンガ島は小さい島だが全部回るにゃ時間がかかるからな、出来るだけ素早く済ませるために手分けした方がいい」
サンガ島は木々が少ないのだが、とても長い草が鬱蒼と茂っている
私が草むらに入ると全身スッポリ覆われて見えなくなってしまうほどだ
「おっちゃん、肩車」
「お前さんたち邪魔しに来てんのか」
などと文句を言いつつ肩車をしてくれた
足元の見えない草むらを進むと小さな岩山が見えてくる
「ところでオッサン
アンタが元々いた世界ってどんなところなの?」
異世界と言うからにはこの世界とはかなり違うんだろうか?
「あぁ、そうだな
そもそも文明そのものが大分違うんだよ
オレがいた世界は科学によって発展していって、
便利な機械や道具がたくさんあった」
「ん、この世界のアーティファクトも便利だよ」
「まぁそうなんだがよ、そう言うアーティファクト的なものが何処の家にでもあるってな感じかな
あと建物もスゲー高いビルやらバカでかい建物がそこかしこにあるんだ」
なにそれ超凄い
王都のお城みたいなのがいっぱいあるのか……
「ちなみにオレはそこでスナック……酒場をやっててな、
女房と一緒に切り盛りしてたんだ」
「あら奇遇、ウチもスナックやってるよ
まぁ一応表向きはギルドだけども」
そもそもスナックって何なんだろうか
「ほほぅ、なら今度飲みに行くかな」
そんな話をしていると、岩場の陰に人の足の様なものが見えた
おっちゃんは駆け足でそこへ近寄ると、私を下ろしてその足の主を確認する
「女か…とりあえずまだ息はあるな」
安否の確認を済ませると荷物の中から発煙筒を取り出して火を付けた
すると青い煙が上空高く上がる
「それなんの煙幕?」
「これでミハエルたちに無事発見した事を伝えるんだ」
煙幕を上げたのち、今度は女性を介抱し始める
「ベッドとか出そうか?」
「え、そんな事できんのか?」
「ん、ウチ宿屋だから」
そう言って私は腕輪からベッドを取り出し、
どこでも蛇口で水の確保もする
「ほー最近の宿屋はスゲーんだな」
いえ、ウチだけです
女性をベッドに横たわらせると、ラヴィさんが怪我がないか身体中を調べる
さすがにこれはおっちゃんにはさせられない
「軽い擦り傷程度ね
頭は打ってないようだから、転移中に気を失ったのかしら?」
おっちゃんは女性の身なりや持ち物を確認すると、
顎に手を当て考え込む
「……ふむ
どうやらオレと近い世界から来たみたいだな
服装や持ち物がオレの世界の物に似てる」
「じゃあやっぱり異世界転生者ってこと?」
「いや、正確には異世界漂流者ってとこかな
異世界からくる奴には大きく分けて二種類あるんだ」
一つ、おっちゃんのように元の世界で死んだ後に、魂や意識だけが別の世界に飛ばされて、その世界の住人として生まれ変わる異世界転生者
もう一つは生きたまま別の世界に飛ばされてくる異世界漂流者だそうだ
前者は以前の姿も持ち物も全て失って、文字通り生まれ変わること
ただし、記憶はそのまま残っている事があるらしい
そして後者は姿も持ち物もそのままの状態で別の世界に送られるという
「こっちの世界じゃ見ない格好、そして携帯電話を持ってるって事は、多分オレのいた世界の住人だろうな」
ケイタイデンワ?
よく分からないけど、どうやらカグヤさんの通信機みたいなものらしい
「……手当はこれでよし
で、あとは船まで運ぶのね?」
「そうだな
オレが背負って行くからマリエラは……どうすっかな」
さすがにまたあの草むらにそのまま入るのは嫌すぎる
「ん、ラヴィさん肩車」
「せめておんぶね」
仕方なくラヴィさんの背中に張り付いた
「んじゃ行くか
……あぁ言い忘れたが、サンガ島は時空の歪みが激しいから気をつけろよ
飲み込まれたらどこの世界に飛ばされるかわかったもんじゃないからな」
「そういうの早く言ってよ
ちょー危ないじゃん」
来た道を戻りながら周りを警戒する
さっきから妙な歪むような感覚が周囲で起こっている
「……来るんじゃなかった」
「勝手について来といて何言ってんだよ」
「ん、ラヴィさんはトラブルメイカー」
そんなやり取りをしていると、さっき部下の2人と別れた場所へと戻ってきた
おっちゃんが言うにはここで部下と合流する手はずらしいのだが、
まだあの二人の姿は見えない
「ミハエルとラルゴはどこまで捜索に行ってんだ?」
振り返ると先ほどの煙幕はまだ上がっている
あれを見逃してるとも思えない
「…ロードお……」
少し離れたところからなにやら声が聞こえる
「クロード王!!」
見ればさっきの部下の内の一人が走りながらこちらへ向かって来る
「おう、ラルゴ!
……ミハエルはどうした?」
「大蛇です!ミハエルがやたらデカイ大蛇に食われましたー!!」
バタバタとかなり焦って走って来るラルゴさん
……このパターンはもしかして……
ラルゴさんの後方の草むらからニュッと何かが顔を出す
とてもデカイ
そして……
「キモ!!
なにあれ!?あんなバカでかい蛇とか無理なんですけど!!」
まるで大型ドラゴン並みの大きさの大蛇がウネウネと蠢きながらこちらへやって来る
これはかなり怖い
「んー!ラヴィさん!はよ逃げて!」
「分かってるわよ!!」
しかしおっちゃんはその場を微動だにしない
女性を背負ったまま、向かって来る大蛇を見つめている
「何やってんのよ!その女の人ごと食われるわよ!」
「問題ない、オレを誰だと思ってんだ?
……この国の勇者なんだぜ?」
女性を背負ったまま、右手だけを自由にするおっちゃん
まさか素手でどうにかするつもりなのかな?
「腕力強化、属性強化」
おっちゃんの体と右腕が光る
「「出た、残念属性強化!」」
「んだよ!その変な呼び方は!気が抜けるだろうが!」
気を取り直して集中するおっちゃん
「……吹き飛べ!」
物凄い衝撃波と共におっちゃんのムキムキの拳が牙を剥いて襲いかかって来る大蛇の顔面を捉える
「シャァァァァァ!!」
一瞬ピタリと止まったかと思うと、
次の瞬間、風圧に押しつぶされるかのように大蛇の顔面はグチャグチャに吹き飛んでしまった……
「………あれはあれでキモい」




