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故郷に帰る 6

航海3日目

私たちはアンナマリー号の甲板に出て外の景色を眺めていた


「見渡す限りのぉ海ですねぇ」


「国のほとんどが海とは言え、ホント何もないわね」


潮風が気持ちいい

空は青と海の青が溶け合うような水平線

そのど真ん中にいるような感覚が清々しさと、

逆に孤立したような恐怖感すら感じてしまう


「あ、おっちゃん」


船首に立ち、周囲を見回すおっちゃんがいる


「おぬし何やっとるんじゃ?」


「……仕事だよ

こうやって海や孤島なんかを眺めて、人が落ちてねーか確認してんだ」


人が…落ちる?

よくわからないので、とりあえずおっちゃんの側まで行ってみる


「あんま乗り出すなよ、海に落ちるからよ」


「アンタ勇者でしょ?

それにしちゃ地味な仕事してるわね」


「地味か、まぁそうだな

けどよ、これが意外と重要でな…

オレが異世界転生者なのは言ったよな?

実はな、マリサメリサにゃ結構よくオレみたいな奴が突然落ちてきたりすんだよ」


おっちゃんによれば、マリサメリサの国全体に時空の歪みがあちこちにあって、

そこから別の世界から飛ばされてきた人たちが、

その歪みを通って落ちてくるそうだ

しかしこれだけ海ばかりの場所だ

ただ落ちた、じゃ済まない

大半の場合、海に落ちてそのまま溺死

運良く陸地に落ちても、無人島で食べ物もなく餓死

サバイバル経験のある人だとしても、島に棲む野獣に食べられる……

などの理由により、ほぼ死んでしまうそうな


「だもんで、こうやってオレたちが少しでも早く見つけ出して救助するってのが仕事なわけだ

元々アンナマリー号は豪華客船を装った救助船でな

客を乗せつつ周辺の海や孤島を巡回して、

異世界転生者がいないか確認、見つけ次第救出するってな感じだ」


「毎日そんな感じなの?

王様なのにあちこち出回ってて大丈夫なの?」


「ですねぇ〜

それにぃ船を出すのにもお金かかりますしぃ」


国のほとんどが海である事で、国民の数はそう多くはない

そしてその国民の生活基盤はおのずと漁業が中心だ

とはいえ、それで経済的に問題はないかといえばそうではない

魚の獲れる量は季節によって変わるし、天候の影響で不漁の時も少なくはない

そんな状況では税金も多く取るわけにもいかない

そして税金が無ければ救助船を運航することもままならない


「そこで考えたのがこの豪華客船ってわけさ

これなら金持ちの客を乗せて金を稼ぎながら、国中を航行できて救助も出来る

それにアンナマリー号以外にも数隻同型の船があってな、

国民の多くは漁業と兼業で客船でも働いててな

これで出来るだけ国民の働き口も確保してんだ

まぁ一石三鳥ってなわけだな」


「色々考えてんのね」


「まぁな」


船に当たり弾ける波の音が心地よい

たまにやって来る海鳥や海の生物たちが姿を現わすと、乗客たちが歓喜の声を上げていた


「……もっとも大昔はマリサメリサも普通の大陸国だったらしいけどな」


おっちゃんのその言葉にカグヤさんが反応する


「そうじゃな、確かメグルの住む精霊の広場もマリサメリサにあったと聞く」


「おや、巫女さんはこの国の事情に詳しそうだな?」


カグヤさんは多くは語らなかったが、

過去のマリサメリサの事を知っているようだ


「妾もよくは知らぬがな、

その昔、大きな時空変動が起こり、マリサメリサのあちこちの陸地を削るように別の世界へと飛ばしてしまったそうじゃ」


その一つが精霊の広場……

あれ?でもそれって確か


「魔族の魔力のせいで広場が時空から切り離されたとか言ってなかったっけ?」


私と同じ疑問をラヴィさんが投げかける


「表向きは……な

まぁいずれ話す時もあろうが今は気にするでない」


それだけ言い残してカグヤさんは船内へと向かう


「あ、カグヤ〜

メグルに美中年頼んでおいてくれる?」


了解、と手を振って応えてカグヤさんは行ってしまった


「ん、どしたんだろ、カグヤさん」


「船酔いでもしたんじゃない?」


「そんな雰囲気じゃないと思いますぅ」


一方、さっきまで海を見渡していたおっちゃんの視線が一点を凝視している


「……時空の歪みか、ありゃサンガ島の方だな」


すると急に走り出して船内へ

その様子に私たちも後に続いた


「どうしたの?」


「たぶん異世界転生者だ

サンガ島あたりに時空の歪みが見えたんだよ

これから船をそっちに向ける、

お前さんたちは部屋に戻ってな」


それだけ言って操舵室の方へ行ってしまった


「………んふ、面白そーね」


まぁた自分から厄介事に首突っ込もうとする


「時空の歪んでるんだからぁ危ないよぉ〜」


「見るだけ見るだけ」


「ん、じゃあ私とエステルさんは部屋で待ってる」


「えー行こうよー楽しいよー」


……子供か



ほどなくして船内放送でサンガ島に立ち寄る事が乗客に伝えられた

表向きは観光の一環という事になっている

ただし船からは降りられないと付け加えられているのだが……


数十分後、船はサンガ島付近まで接近し、停船した

辺りは透き通った綺麗な海で、美しい珊瑚礁が甲板からでも眺めることができた


「捜索はオレとミハエル、ラルゴの3人だ

停船中はお客にサービス忘れんなよ、あくまで観光のひとつって程なんだからな」


「了解ですクロード様、お気をつけて」


船長たちに見送られ、おっちゃんとお付きの2人は小型船でサンガ島へ…


「ん、上手く行ってしまった」


「でしょう?さっきこの小型船使うって言ってたからねー」


小型船の荷物に紛れておっちゃんたちちついて来た私とラヴィさん

流石に船が小さくて隠れきれないのでカグヤさんとエステルさんは豪華客船でお留守番だ


「ん?今誰かなんか言ったか?」


「いえ、我々はなにも?」


まずい気付かれたかも


こちらへ近づいて来るおっちゃん

荷物に掛けられている布をめくられたらまずい


「どー考えても誰か入ってるよな、コレ」


不自然に盛り上がった荷物の一角

そう、それ私とラヴィさん


「はぁ…部屋で待ってろって言わなかったか?」


布をめくられ、私たちを確認すると、

おっちゃんはため息をついて頭を抱えた


「ん、ラヴィさんに無理矢理」


ラヴィさん無言の全力モフモフ


「なーやめれぇ」


「ったくしょうがねぇな」


すでに引き返せないところまで来ているため、

おっちゃんはそのまま仕方なくサンガ島まで小型船を進めるのだった



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