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故郷に帰る 5

「異世界…転生…じゃと!?」


「あらぁこれまた凄い人生送っちゃってる人ですねぇ」


エステルさんには言われたくないと思う


とりあえず話についてけない私とラヴィさんはポカンとしている


「んでまぁ、この世界よりももっと文明の進んだ世界にいたんだが、

事故って死んじまってな…

そんでこっちの世界に飛ばされたってわけだ」


「話には聞いたことがあったが、実際に異世界転生者に会うとはのぅ

して、なぜそれがラヴィリスを娘にという話になるんじゃ?」


おっちゃんはコホンと咳払いをし、

少し照れ臭そうにしながら頭を掻いた


「なんというか、夢だったんだよ

成人した娘と酒を酌み交わすのがさ……」


転生してからずっと、前の世界の奥さんと娘のことが気掛かりだったそうな

こっちに来てすぐ、特別な力と知識のあるおっちゃんをマリサメリサの前王が勇者として迎え入れた事で、

毎日忙しく働き、

独身で子供のいなかった前王に養子として引き取られ、

前王が亡くなった事で王位を引き継いだ

そうして今に至るのだが、

やはりそれでも前の世界の事が忘れられずにいると…


「オレがあっちで生きてりゃ、成人した娘と女房とで酒が飲めたのかと思うと、今でもそれが心残りでな……」


しんみりと天井を眺めるおっちゃん

それを聞いてラヴィさんも少し寂しげな表情になる


「…分かったわよ、で、なに?一緒に酒を飲めばいいわけ?つか、それ昨日散々やったよね?」


……確かに

あんだけ飲めば充分夢叶ってない?


「いや、だってよ〜昨日はまだ他人だったじゃねーか

しかも飲み比べって、親子でやるもんじゃねぇよ

ちゃんと娘っぽく接した上で、じっくり酒を飲むってのがいいんじゃねぇかよ」


「………ハァ

ま、いいわ

それで気が済むんならやってやるわよ」


よし!とガッツポーズしたおっちゃんは花束と一緒に持ってきた大きな紙袋をラヴィさんに手渡した


「なにこれ?」


「オレの娘に相応しい服を選んどいた

これ着て、今夜7時に昨日のバーで待ち合わせな!

あ、ちゃんとオレの事を父親だと思って接してくれよな!頼むぞ!いや〜楽しみだなぁ」


浮かれた笑顔で立ち去るおっちゃん

ありゃ本気でラヴィさんを娘にしたかったんだろうな

事情が事情だしラヴィさんには頑張ってもらおう


「安請け合いして大丈夫かの?

おぬし、ヒスイとすらまともな親子やっとらんのじゃろ?」


「ラヴィってぇ娘って感じしないもんねぇ」


「ん、ただの飲み会で終わりそう」


そんな私たちの心配をよそに、ラヴィさんは自信満々だ


「なんとかなるっしょ

にしても、マジで結婚とかじゃなくてよかったわぁ

安心したらもはや娘だろうがなんだろうが、なんでもやれる気がしてきたわ」


……とっても心配です



……………………………………


約束の時刻、アンナマリー号のバー


おっちゃんは一足先にカウンター席に座り、軽くウイスキーを飲んでいた


「クロード王、今夜はやけにご機嫌ですね」


「そう見えるかいマスター?

いやなに、ようやく夢が叶いそうなんでな

……あれからもう数十年か、長ぇようで短かったな

本物の娘ってわけにはいかねーけど

アイツはどこか似てる気がするんだよな…」


そんな風にしんみりしてる所にようやくラヴィさんが姿を現した


ちなみに私たちも少し離れた席から状況を観察している


「……ちょっとオッサン!

なによこの服は!」


見ればラヴィさんはやたらフリルのたくさん付いた可愛らしいピンクの服に身を包んでいる

凄い、とても似合ってない


「オッサンじゃねーって!

ち・ち・お・や!ヘイ!ぷりーずこーるみーパッパ!」


あれ?そのやり取りちょっと前にも見たな


「うっさいわオッサン!

こんな恥ずかしい格好させんじゃないわよ!」


「似合ってるじゃねーか!

ロリータファッションだよ、お人形さんみたいで可愛いぞぉ!」


「うがぁ!やめろー!」


初っ端から親子とは思えない状況に陥ってしまった


「ま、まぁまぁ落ち着いて下さいお客様」


バーのマスターが気を遣い、ラヴィさんを席に座らせると、サービスとして一番高いお酒を提供した

すると嘘みたいにラヴィさんの怒りは収まり、

今までのアホな表情から、少し大人の表情へと変貌する

……この人お酒さえ飲めればなんでもいいのか


「んで、オッサン…」


「ん、んん!違うだろ?パパだパパ!」


ハァ〜っと深いため息をつき、分かりましたとばかりにやる気のない表情で応えるラヴィさん


「パパ〜臭ーいキモーいあんまり寄らないで」


「やめて!そのやたらリアルな娘やるのやめたげて!

オレのささやかな理想をぶち壊すなよ!」


顔を両手で覆ってイヤイヤと体を揺するおっちゃん

ありゃ本物の娘にも言われたことあるんだな


「めんどいわねぇ……んじゃ」


気を取り直してTake2


「パッパ〜ン!アタシぃブランド物のバッグが欲しいわぁ」


「しょうがない奴だなぁどれが欲しいんだい?

…って違うわ!そうじゃねーよ!

なんだよ、ちょっといかがわしくなっちゃったよ!」


「いかがわしいってなによう!お金持ちのお嬢様風に言ってみたのに〜」


「…え、そっちなの?

ごめん、オジサンちょっと恥ずかしくなっちゃったじゃん!

つかなんでそんな変な設定持ってくんだよ!」



ハタから見てるとコントにしか見えない

こりゃダメだな


「なにやっとるんじゃ、あやつら」


「あれはぁあれでぇ親子っぽくもなくもないかも?」


「ん、仲は良い、と思う」



「えーもうなんだよこのエルフー!

全然娘って感じしなーい!オジサンちょっとショックなんですけどー!」


「はぁ?アンタが娘になれっつーからやってんでしょうが!」


「はぁぁぁぁぁ……

もういい、ヤメだヤメ

相手間違えたわ完全に」


今までで一番長いため息をついて、おっちゃんはテーブルに突っ伏した


「仕方ないでしょ、こういうの慣れてないのよ

自称母親の人ともなんかこう、親子っぽくできないしさ……」


ラヴィさんは両手の指を組んで頭を乗せる

こちらはこちらで困ってはいたようだ

しかしなぜか今度はおっちゃんの目がキラリと光る


「…自称母親?

お前さんの母親ってどんな人?」


「え?あぁオーガ族なの、血は繋がってなくてさ…」


「つまり未婚の母的な?」


「…え、えぇまぁそうかな」


ん、なんか話の流れがおかしくなってきてないかな?


「オーガ族の…未亡人」


いや、違う違う

完全に妄想入っちゃってる


「って、どしたのオッサン」


「……なぁラヴィリスよ

お前さんを娘にするのは諦めた

……そこで、だ」


嫌な予感、これはまさしく勇者特有の残念属性発動の兆しだ


「お前の母さん、紹介してくんね?」


「アンタ、前の世界の娘と嫁さん忘れられんとか抜かしてたよな?」


ラヴィさん渾身のドン引きの表情

もはや汚物を見る目だ


「だってよぉ!オーガ族の女っつたら、ボインボインのバインバインって有名じゃねーか!

しかも滅多にお目にかかれないレアな種族だし!

美人か?美人だよな?」


「ん、ボインボインのバインバイン

そして超美人」親指ビシッ


「マリエラちゅわん!アンタ余計なこと言・わ・な・い!」


ガシッと頭を両手で掴まれ、

こめかみをグリグリされる

さすがにこれは……


「あうぅ…いたい〜」


この後、部屋でめちゃくちゃモフモフされた…



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