竜の花嫁 11
「ちょっと待ってくださぁい
あなたが〜ノーフォビアの王女様という事はですよぉ?
そのお姉様っていったら…」
第一王女って事で、
それってつまりは…
「ん、白薔薇の姫だよね?」
ブンブンと物凄い勢いで頷く自称第二王女様
視線はネフェニルさんから全く離れない
「お待ちなさい
私は魔族よ?その私があろうことかノーフォビアの勇者なわけがないじゃないの…」
するとまた頭痛がするらしく、ネフェニルさんは頭を抱えて苦しみ出した
まさかの展開だけど、これはネフェニルさんの記憶を揺り起こすキッカケになるかも
ここは思い切って攻めてみる状況なのかもしれない
とりあえず自称第二王女様…セシリアさんにこれまでの事情を全て話してみた
……………………………………………
「やはりですわ!
お姉様は2年前のお誕生日の日、森にある教会に向かうつもりでしたの
けれど魔族襲撃の一報を受けて出陣なされて…」
行方不明になったわけか
それもまさかの魔族堕ちという形で…
「それにお姉様は隠してるつもりだったのでしょうけど、
私、知っていたんですのよ
ネフェニルという偽名を名乗って教会に通っていた事、
ご自分の財産を投げ打ってまで森の教会を維持し続け、身を削りながら寄付も続けていた事も…」
「ネフェニルさんが…先生さんが白薔薇の姫、
だったんですねぇ」
「わ、私…が?
やめて頂戴、わた、しは…ロザリアクイーン…
魔王にすら匹敵する力を持つ魔女…」
「違うよネフェニルさんは人間だよ
とっても優しくて、誰よりも他人を大事にしてくれる
この国の強い勇者で、あの教会の優しい先生なんだよ」
ネフェニルさんの瞳から涙が溢れて出す
いまだに記憶が混濁した状態で混乱しながら、
それでも本当の彼女の心が苦しんで泣いている
「どう、して…わた、しは…」
「先生、みんなずっと待っていたんですよ…
私もあなたに会いたかった…」
エステルさんがネフェニルさんの両手を握り、
そのまま胸元のペンダントへ…
「エステルはあなたの力になりたいって、
そう言ってたんです
だからせめて、彼女の事だけでも思い出してあげて!」
「あ…あぁ………エス、テル…
エステル!…エステル!
ごめんなさい!守ってあげられなかった!!
沢山の子供たちも!
私の……大切な…家族だったのに!」
泣き崩れるネフェニルさん
それを抱きしめるエステルさんとセシリアさん
ようやく全てが一つに繋がった
その時だった
寝ているメグルさんのカバンから声が聞こえてきた
「誰かおらぬか?マリエラ!エステル!メグル!
誰でも良いから返事をせい!」
これはメグルさんの持ってた通信機からだ
カグヤさんの声が聞こえている
すかさず駆け寄り通信機を取り出す
「ん、聞こえてる」
「うむ良かった、今おぬしらはどこにおる?
妾たちと同じように部屋に閉じ込められてるのかえ?」
ん?
なんのことだろう?
「森にいる
メグルさんが空間転移に失敗した」
「なんじゃと?
いや、まぁそれなら幸いじゃ
ちとまずいことになったのじゃ、説明する故エステルも呼んでくれぬか」
どうやら緊急事態らしい
私は通信機を持って、エステルさんたちの元へと戻る
そしてカグヤさんたちの置かれている状況を説明された
………………………………………………
「そう、まさかグラハムがクーデターを…
確かに彼は私を良くは思っていなかったものね」
記憶の戻ったネフェニルさんはカグヤさんたちの話と私たちの話を擦り合わせ、
状況を整理した
「彼の目的の一つは私の殺害、
それも私が生きている事を国民に知らしめた後、他種族に殺させるくらいは考えていそうね」
「ですわね、あの男は常に人間以外の種族を陥れる事ばかり考えてますし」
そしてその混乱に乗じてクーデターを起こし、
王都を乗っ取るつもりなのだと
そうなればこの国に他の種族が生きていける場所は無くなる
「となるとぉ〜先生が彼らに見つからなければぁ
今のところ行動には移せませんかねぇ?」
するとネフェニルさんは沈黙し、自分たちの行動を考え始めた
今までの精神の不安定さは消え、
どことなく頼りになる感じを受ける
これが白薔薇の姫という勇者の姿なんだろうね
「いいえ、むしろ私が出向きましょう
彼らの居場所が分かっているならば一網打尽にする好機
森の病院を拠点にしたのが運の尽きと思い知らせてあげるわ」
ネフェニルさんを中心として森の病院奪還とクーデター阻止の作戦会議が始まった
森の病院は元々ネフェニルさんが創設した病院だった
様々な種族が平等に治療を受けられるようにと
またグラハムの様な心無い者たちの侵略の危険も考慮し、
場所は極秘、各種族の長たちにのみ目印の見分けかたを知らせていた
もちろん地下という場所のため、万が一の時のための避難方法や脱出方法も考えられている
これが今回のカギとなる
「各部屋の床に隠し階段があるの
そこから更に地下に降りるとあの教会に繋がる道があるのよ
耳長族の職員は全員周知しているはずだから、
なんとか各部屋に閉じ込められてる他の人たちにも知らせる事が出来れば…」
「ん、逆に教会側から病院の各部屋に行って連れ出すのはどうかな?
……まぁ教会がどこにあるのか今は分かんないけど」
今迷子だもんね
こればっかりはどうにもならない
しかし……
「いいアイディアね、
それに問題ないわマリエラちゃん
この森は私にとっては庭の様なものだわ
すでに場所は把握してるから、あとで教会までの地図を描いてあげるわ」
物凄く頼もしい
さすがはこの国の勇者
「ですがお姉様、見張りの目をかいくぐって全ての人質を誘導するのは難しいのではありませんの?」
セシリアさんの言う通りだ
少なからず監視役は置かれているはず
そいつらに気付かれれば逃げ遅れた人たちが危ない
「ひと騒動起こす必要がありそうじゃのぅ」
「でもアタシら戦えないから変な事したら結構マズイと思うんだけど?」
するとエステルさんが立ち上がり、メグルさんを見た
……起きている、メグルさんが目を覚ましたらしい
「じゃあその時はぁ私がメグルさんとぉ病院に転移してきますぅ」
そうしてエステルさんがひと暴れするという事らしいけど……
「転移?どういう事かしら?」
そう言えばネフェニルさんにメグルさんの能力は話してなかったな
私は簡単にディメンションブレイカーのことをネフェニルさんに説明した
「………なるほどね
それなら私が行くわ、大切な家族をそんな危険な所に行かせられないわ」
ネフェニルさんはエステルさんの手を握る
「先生……でも」
「お姉様なら心配いりませんわ
何と言ってもこの国の勇者ですもの」
確かに
このメンバーの中で唯一にして最強なのはネフェニルさんだけだ
エステルさんは、ほら、剣のアーティファクト無いからね
しかしエステルさんは納得していないようだった
「それでも心配ですぅ
もう大切な人を失うのは嫌なので…怖いんです…」
ネフェニルさんの手を離そうとしない
するとネフェニルさんはエステルさんを抱きしめて、
あのペンダントをエステルさんに手渡した
「これを預かっておいて
私にとって命と同じくらい大切なペンダントよ
必ず無事に戻ってくるから、それまであなたが持っておいて」
泣きそうなエステルさんを納得させ、
ネフェニルさんは私を見る
「ん、じゃあ作戦はこう
私たちが教会に着いたらネフェニルさんがメグルさんと病院の中に転移、
敵がネフェニルさんに集中してる最中に私とエステルさん、セシリアさんが病院に入って人質を脱出させる」
「ならアタシらもそれなりに敵を引きつける役を買っときますかねー」
「そうじゃな、逃げ遅れも少なからず出るじゃろうし」
「了解致しました、微力ながらワタクシも奮闘させて頂きます」
作戦は決まった
早速準備に取り掛かり教会を目指すことに…
「……あーオラが寝てる間に何があっただか?
誰が説明して欲しいだよ…」




