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竜の花嫁 9

夢…

夢……

これは夢なんだろう

私は意識があるのかないのか、フワフワした感覚の中にいた


「今日も来たのね×××××」


大きな白い翼を持った美しい女性が誰かに向かって話しかけている

しかし名前のところが何故か聞き取れない


「…………」


“×××××”と呼ばれたこれまた大きな白い翼を持った女性が何か話してるようだけれど、

何故かこちらは声が全く聞こえない


「そう、そう言ってもらえると私も嬉しいわ」


すると声の聞こえる方の女性は部屋の奥から美味しそうなスコーンと紅茶を運んで来た

それを声の聞こえない方の女性が美味しそうに頬張る


あぁなんだか私もお腹が空いてきた……


……………………………………




ふと目が覚めるとネフェニルさんの背中の上だった

どうやら眠ってしまった様だ


「……お腹すいた」


「あら起きたのね、私もお腹が空いたわ

丁度川沿いの開けた場所に出たから一休みしましょう」


ネフェニルさんから降りた私は早速休憩所の準備をした

テーブルにイス、そしてメグルさん用にベッド

調理機材を取り出してセッティングを終えた

幸いにもネフェニルさんがいるおかげで焚火装置に使う魔力には困らなかった

それにエステルさんもいたこともあり、料理も問題なし


「すぐに作るのでぇ、少し待ってて下さいねぇ」


料理が出来る間、私とネフェニルさんはイスに座り、

流れ続ける川をのんびりと眺めていた


「こんな風に落ち着いて休むのはいつ以来かしら

いつもは追手を気にして夜もロクに眠れない日々が続いていたから」


「ん、ごめん

私たちが森に行ったせいだね」


するとネフェニルさんはハッとした顔で慌てて今の言葉を取り消した


「ごめんなさい、そんなつもりで言ったわけじゃないのよ

ただ、こうして誰かと一緒に行動するなんて考えてもいなかったから、不思議なのよ」


「旅はいいですよぉ〜」


紅茶を運んできてくれたエステルさん

2人分のティーカップに慣れた手つきでお茶を入れると、

私とネフェニルさんの元にそっと置いた


「こんな快適な旅は貴方達ならではなんでしょうね

普通ならこれだけの準備にも時間が掛かるし、あんなフカフカの大きなベッドも簡単には用意出来ないもの」


紅茶を手に取り口へと運ぶ

その優雅な香りが口いっぱいに広がって、先ほどまでの疲れが吹き飛ぶ様だった


「あの子たちもね、紅茶が好きだったわ…

そうそう、少ないお菓子を取り合いながらよく騒いでいたわね…ウフフ」


この感じはロザリアクイーンのそれではない

多分、この雰囲気は先生のネフェニルさんだ


「あの子たちはどうしているかしら?

もう随分と立ち寄れてないけれど、ちゃんと食べているのかしら?」


きっと記憶が混濁している

彼女の中では2年経った事の認識はあっても、

教会の子供たちが亡くなった事実は抜け落ちているんだ


「いえ、そうね、あの教会には“エステル”がいるもの

きっと大丈夫ね、あの子はとても頼りになる子だもの」


その言葉に耐えきれなくなったのか、

エステルさんはティーポットを手放し、ネフェニルさんを後ろから抱きしめた


「エステルさん……」


「エステル?なぁに、そこにいたの?

いつまでも甘えん坊さんね

みんなは元気にしているかしら?」


泣いていた

ネフェニルさんを抱きしめるエステルさんも、

そして楽しそうに笑っているはずのネフェニルさんも…


「……先生、お誕生日おめでとうございます…」


気付けばネフェニルさんの胸元には、

元エステルさんが先生へのプレゼントとして作ったペンダントが掛けられていた


「あぁ…とても綺麗ね……ありがとう、エステル」


それだけ告げるとネフェニルさんは気を失った様に眠ってしまった


「また目覚めたら忘れてしまうのかな?」


「そう、ですねぇ

……でも、悲しい記憶はこのまま忘れた方が幸せなのかもしれないですねぇ」


眠ったネフェニルさんに毛布をかけて、

エステルさんは料理の続きへと戻った


再び陽が落ちる

今日はこのまま泊まる事になるだろう

コテージを用意し、

エステルさんは寝ているネフェニルさんを起こさない様にコテージ内のベッドへと運んだ

きっと朝には物凄くお腹を空かせているだろうからと、

サンドイッチを作り置きし、スープもすぐに暖められる様に置いておいた



翌朝

川で顔を洗い、出発の準備をする

メグルさんはまだ目を覚まさない

やはり人を連れて空間転移するのは相当体力を消費するらしい


「おはようお嬢さんたち」


ネフェニルさんが起きてきた

昨日と様子は変わらないようだ


「ん、おはよ」


「おはようございますぅ

お腹空いてますよね、すぐ食べられるようにサンドイッチを用意してますよぉ

あと、スープもすぐに暖めますねぇ」


ありがとう、とネフェニルさん

ふいに胸元のペンダントを手に取り見つめている


「とても綺麗ね、誰のプレゼントだったかしら…」


「……きっと…すぐに思い出しますよぉ」


そんな時だった

川の向こう岸の草むらがガサガサと揺らめく

すごく忘れてたけど、今手元に超強力虫除けスプレーはない

魔物が襲ってきてもおかしくない状況だった


「問題ないわ、あなたたちは私が護るから」


ネフェニルさんが前に出る

確かに今、こんなに頼りになる味方はいない


ガサガサガサガサ


音がどんどん近くなり、

やがてハッキリとその正体が露わになった


「あぁ良かったですわ、

ようやく人に出会えましたわ」


女の人だそれも頭に二本のツノ、シッポ

そして背中には竜の翼のようなものが……


「これって…王子と同じ、半竜半人なんじゃ…」


「花嫁ゲットですぅ〜」


あ、でも人型ダメなんじゃ……





一方その頃、アタシらは牢屋の中にいた


「こら、何が森の病院よ

これじゃ森の牢獄じゃないさ」


「これは興味深い、まさか森の病院がこのようなことになっているとは…メモメモ」


メモってる場合か!

にしても、アタシら以外にも沢山の人達が閉じ込められている

各所に等間隔に並ぶ部屋に数名づつ、

男女別に隔離されている


森の病院の入り口だと思った穴に入り階段を下ると、

そこにはノーフォビアの王都の騎士たちが数名待ち構えていた

さすがに対抗は出来ないと判断して大人しく捕まり、ズラッと並んだ部屋の一つに押し込められたわけ

正直訳わかんない


「君たちはノーフォビアの民ではないな?」


「正確にはワタクシと一緒にいた男性はノーフォビアで暮らす者でございます」


「うむ、そして妾とそこのエルフはアルカディアから来た

妾たちはアルカディアの勇者の知人でもある

早く解放せねば国家間での問題になるぞ?」


私たちを拘束した連中の頭らしい男がドア越しに話しかけてくる

ドアの小窓から見える人物は、

チョビ髭を生やしたなんともいけすかない感じの男だ


「君たちは旅の者だろう?ならば旅先のトラブルで行方不明になる事などよくある話だ」


つまり聞く耳持たないってことか


「心配はいらない、我々に協力さえしてくれれば、

君たちに危害を加える事はない」


「アンタら何企んでんのよ?」


いやらしくニヤリと笑い、チョビ髭は腕組みをし、踏ん反りかえる


「……革命だよ

今このノーフォビアは間違った道を進んでいる

優良種たる我ら人間の尊厳を捨て、

あろう事か蛮族どもと手を組むなどと…

……本来ならば我々人間がこの国の全権を握るはずが…」


なるほど、クーデターに巻き込まれたらしい

チョビ髭の言い分はそういう事らしいけど、

そもそもそうなったのは勇者や騎士たちの減少に伴う国力の低下のはず


「今こんな事やって、無駄に戦でも始めたらそれこそこの国の危機なんじゃないの?」


「無論そんな事は分かっている

そのために我々にはどうしても“姫様”の帰還が必要なのだ

姫様さえご健在であれば再び国は力を取り戻す!

蛮族どもの手など借りなくともな!」


姫様?

それってこの国の勇者の事かな?


「白薔薇の姫のことなら確か2年前にロザリアクイーンに殺されたはず

アンタたちが知らないはずないでしょ?」


するとチョビ髭は豪快に笑い飛ばし、私たちの部屋のドアを蹴飛ばした


「愚かな!

君たちは知らんだろな!

あの戦いで姫様は死んではおらんよ!

その証拠に遺体は発見されていない!

それなのに現王はその事実を隠蔽し、即座に捜索も打ち切ったのだ!

それもこれも蛮族どもと手を組むためにな!」


事実かどうかはすぐ分かる

カグヤはコッソリとクレアと共に部屋の隅に移動する


「…今の話は本当かえ?」


「はい、以前見た極秘の文書にも白薔薇の姫の遺体は確認されていないと記載がございました

その点においてはあの者の言っている事は正しいかと

……ですが…」


「ロザリアクイーンに連れ去れた可能性は?

アタシら一度あの魔女とやり合ってるのよ

その時実験台にしてやるとか言われたわ

お姫様もそうなった可能性があるんじゃないの?」


しかしチョビ髭のニヤケ顔は変わらない


「残念だがそれはない

多数の死者は出たものの、生存しその現場を目撃した者たちも多くいるのだ

ロザリアクイーンが誰かを連れ去ったという目撃報告はされていない

つまり、姫様はロザリアクイーン魔の手から逃げ延びたと考えるのが自然ではないかね?」


ノーフォビア最強と謳われた白薔薇の姫が、

自分の部下を置いて逃げるなんて思えないけどね

もうちょい情報を引き出しとくか

すると後ろからクレアがコッソリと私に質問内容を告げてきた

……それになんの意味があるのか分からないけど、

まぁいいか


「ところでアンタらは“ロザリアクイーンの顔は見たの?”」


「ん?魔女の顔など知らんよ

2年前のあの日も燃え盛る炎と瓦礫の山でそれどころではないからな、部下たちも生きのびることに必死だったようだしな」


だ、そうだよクレア


「ふむふむなるほど、でしたら納得でございます…」


こら、説明せんかい


「あーなるほどな、そんな状況では連れ去ったかどうかも怪しいと言いたいのだろう?

バカめ、そんな事は顔が見える位置でなくとも遠目で見て分かるだろうに」


そりゃそうだ

けど、その質問はアタシが考えたんじゃないしねぇ


「つまり、アタシらには革命とやらの手伝い、

もしくは姫様の捜索をやれってことなわけ?」


「察しが良くて助かるよ、無論一人は人質として残ってもらうがね」


こんなもんか、

あとはカグヤたちと作戦会議だね


「すぐには答えは出せないかなぁ

ちょっと考えさせてよ、前向きに検討するからさ」


「ふん、まぁいい

だがそんなに時間はやれんぞ、代わりなんぞいくらでもいるからな」


それだけ言ってチョビ髭はその場を立ち去った


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