竜の花嫁 8
一方、その頃……
マリエラたちを見送ったアタシたちは王子の依頼を続行していた
面倒くさい、非常に面倒くさいけど仕方ない
仕事だからね、うん
「もう、その辺の適当なドラゴン捕まえて結婚しちゃいなよ」
「またいい加減な事を……
と、言いたいところじゃが、妾も賛成じゃ
もうどのドラゴン見ても何も分からんわ」
探索から数時間
いまだに成果なし
いくら仕事とは言え付き合ってられん
「いやいや、もうちょいだからさぁ
なんかこう、いいとこまでは行ってると思うんだよなぁ
オイラこう見えて面食いだから、やっぱ可愛い子じゃないとさー」
知らんわ
とにかくなんか適当なの捕まえて王子に括り付けてそのまま竜族の里に送りつけてやろう
そう思った時だった
「皆様、あちらをご覧下さい」
クレアの指差す方向に何やら白い毛玉っぽいのが見える
そこそこでかい
「なんじゃアレは?
アレもドラゴンなのかえ?」
「いえ、耳長族にごさいますね
なんと奇遇な事でしょうか」
よく見ると大きな体で、耳の長い毛玉のような生き物だった
「巨大ウサギじゃん」
「ウサギだな、ウサギって耳長族だったのか
知らなかったな」
王子、アンタ仮にも同じ国の森に住んでんのに知らなかったのか、と心の中でツッコんどく
「てーことは、森の病院もこの辺にありそうね?
わざわざメグル呼んだ意味なくない?」
「いいえ、耳長族を見つけたとしても、森の病院にたどり着けるという訳ではごさいません
なんでも目印となる小さな苗木が……」
クレアの長話なんか聞いてられない
とりあえずドラゴン探しも飽きたので、アタシは巨大ウサギ捕獲に方向転換した
「モフモフさせなさい!ウサギー!」
おっと、大声を出し過ぎた
気付いたウサギが一瞬振り返り、即座に逃げ出す
「待たんかバカエルフ!
花嫁探しはどうする気じゃ!」
「飽きた……じゃなかった、
アレ追えば珍しいドラゴンに会える気がする!気がするの!」
「おー!さすがエルフの姉さん!
オイラも追うぜ!」
「んなわけあるまい!
騙されるなバカ王子!」
あっという間にカグヤが見えなくなる
よし、小うるさいのから逃げられた!
……と、油断したその時だった
何かにつまずき盛大に転ぶ
「ギャフ!」
続いて同じように転ぶ王子
「ぶは!」
「はぁ〜やれやれ、
これじゃからバカは困るんじゃ」
「おや?おやおやおや?
皆様、ラヴィリス様がつまずかれたこの苗木…」
アッサリ追いついたクレアとカグヤは、
アタシと王子がつまずいた物をまじまじと見つめていた
「まさかこれが森の病院の目印とか言うのではあるまいな?」
そんなご都合主義な展開あるわけ……
ゴゴゴゴゴ
アタシの足が当たった反動か、
苗木が周辺の土ごと持ち上がり始める
とってもご都合主義だった
「アタシ、分かってた
分かっててやったのよ」
「左様でございますか」
冷たい反応ありがとうございます
「これが森の病院かー!
なんだよ、二手に別れた意味ないな」
全くだわ
まぁ興味はあったし、ドラゴン探しは飽きたしで迷わず病院の入り口に入り込む
「さて、マリエラたちはどっこっかなー」
「ラヴィリスめ、完全に花嫁探しに飽きよったな」
入り口に入るとすぐ地下へと続く階段があり、
相当な長さなのが分かる
これホントに病院なの?なんかのダンジョンじゃない?
「およそ病院という様相ではございませんね」
「これじゃ見つからんわけじゃな
そもそもあのような目印、小さな苗木など何処にでもあろうに
間違える輩も多かろうというものじゃ」
アタシたちは思いがけず森の病院にたどり着いた
しかしそこにマリエラたちがいない事を今はまだ知らない……
「ヘックチ」
エステルさんに背負われたメグルさんが小さくクシャミをする
「寝ながらクシャミなんてぇ器用な人ですねぇ」
どれくらい歩き回っただろう
私たちは見知らぬ森の中を彷徨い続けていた
エステルさんとネフェニルさんはまだ元気だけど、
私はさすがに疲れてきた
「あらお嬢さん、大分お疲れの様ね?」
そりゃあなた達と違って一般人だからね
「ん、ちょっと休みたい」
しかし周りは鬱蒼と茂ったジャングルの様な場所
とても落ち着いて休めるところじゃない
すると私の目の前にネフェニルさんが進みしゃがみ込む
「仕方ないわね、さぁ私の背中におぶさりなさい」
「ほえ?」
予想外の展開に戸惑った
エステルさんがそうするならまだしも、
まさかロザリアクイーン…ネフェニルさんがそんな行動に出るとは思いもよらなかった
「どうしたの?おんぶすると言ってるのよ
早くなさい」
「ん、ありがと」
素直にお言葉に甘える
ネフェニルさんの背中は暖かく、そして柔らかかった
とてもアルカディアの森で戦った人とは思えなかった
「お優しいんですねぇ〜」
「ちがっ…あ、足手まといになられても困るだけよ
こうした方が速いものね
あとモフモフだし……」
ネフェニルさんは心なしか顔が赤い気がする
ずっと後ろをついて歩いていたエステルさんは、
それからはネフェニルさんに並ぶ様に隣を歩いていた
「ネフェニルさんは教会に行った後はどうするの?」
「……そう、ね
しばらく身を隠したらまた落ち着ける所を探さないといけないかしらね」
ノーフォビアに来たのはきっと先生の記憶が無意識に教会へ呼んだだけなんだろう
でなければ、見つかれば1番危険なこの国に来る事はないはず
なんとかしてあげたいけど、病院どころかその教会さえどこにあるのか分からない
「もし良かったら、一緒に…」
一緒行こう
そう言おうとすると…
「やめておくわ、確かに貴方達と一緒にいれば快適な旅が出来そうだけれど、
やはり私は魔族だもの
貴方達にとっては敵でしかないわ
それに人間にも魔族にも追われる身よ
色々面倒なことになるのは分かるでしょう?」
そのまま彼女が口を開くことはなかった
私もそれ以上は何も言わず、なんとなく彼女の背中をギュッと抱きしめていた




