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竜の花嫁 1

魔導車に揺られ森を進む

大小様々な木々を避けながら、

私たちは依頼人の待つ竜族の住む山を目指していた


「こんな人気のない場所にホントに依頼人なんかいるの?」


見渡す限り自然の景色

人工物などまるでない

とにかく広い、広過ぎる



ここはアルカディア領から北に位置する国

“ノーフォビア”

アルカディアより広大な大地と自然豊かな国として知られ、

世界で最も多くの種族が共存する国である


しかし2年前、魔族との大規模な戦争の舞台となり、多くの兵を失い、

さらには突如現れたロザリアクイーンにより、

ノーフォビアが誇る勇者“白薔薇の姫”と数多くの優秀な騎士、冒険者たちを失う

これにより国力は著しく低下、同盟国であるアルカディアの力添え無くしては、自国を護る事も難しい状況となる

そのため今ではノーフォビアの王都のみならず、

この地に住む多くの種族の里や村などと手を結び、国としての存在を維持していた




ノーフォビアの森を目指してアルカディア領を出た私たち

せっかくなら仕事の依頼とカグヤさんの大型アーティファクトの調査を兼ねようということになり、

一度目的地だった国境沿いの森を通り過ぎて最寄りの街へとやってきた

ギルドへ移動宿屋マリアベルの広告を張り出してもらい、

出来るだけ国境沿いの森近くの依頼が入るのを待った


すると広告を張り出した翌日、

ギルドから一つの依頼が宿屋マリアベルに舞い込んだんだ


「花嫁探し?

えー困ったなぁアタシの美しさってばノーフォビアでも有名なのね〜」


「地元では全力スルーされてたけどね」


ラヴィさんに全力ハグされ嫌という程モフモフされる


「やめれぇ」


今回の着ぐるみはヒツジの着ぐるみだ

モフモフ感は前回の二倍といえる

アルカディア出発前に徹夜明けのハルカさんに無理やり着せられた

というか私の私服はどこ行ったんだろうか


「冗談はさておき、依頼人の合流場所が竜族の山ってのは気になるのぅ」


基本的にあまり人間と関わらないという竜族

その住処である山の麓が待ち合わせ場所に指定されていた


「でもぉ国境沿いの森の近くですしぃ

当初の目的とはぁ合致してますよねぇ〜」


そういうわけでとりあえずは行ってみようということになり、

早速荷物の確認をして魔導車に乗り込み出発したわけだ



魔導車は森を突き進む

足場が相当悪く、車体の揺れが大きい

ラヴィさんも運転には慎重になっているようだった


「車酔いしてきたかも…ウプッ」


お酒には強いのに乗り物には弱いのかな

長いこと車に揺られ、ようやく竜族の山の麓までやってきた

すると山の入り口付近に人影が……


「ん?あれは……メイドさん?

こんな森の中にメイドさんいるわよ」


自然溢れるこんな場所には似つかわしくないほど、

とても綺麗な身なりの一般的なメイド服に身を包んだ女性が、ピシッとした姿勢で私たちを出迎えてくれた


「お待ちしておりましたマリアベルの皆様

このような場所にお越し頂き感謝致します」


礼儀正しくおじぎするメイドさん

ちゃんとした人っぽいけど、大分無表情だ


「そなたが依頼人という事で間違いはないのかえ?

花嫁探しと書いてあったゆえ、てっきり男の依頼者と思っておったが…」


「いえ、ワタクシは依頼人であるミーシャ王子の臨時付き人でございます

…あ、申し遅れました

ワタクシ、派遣メイドのクレアディースと申します

お気軽にクレアとお呼びください」


再びおじぎ

とてもメイドさんらしいメイドさんだ

私たちも一通り自己紹介し、一度魔導車の中へ


「あのぉ派遣メイドってぇなんなんですかぁ?」


「はい、ご依頼頂ければどんな場所にも赴きまして家事全般から雑用までなんでもこなす職種にございます

マリエラ様方の移動宿屋と近いものがございますね」


座る姿も姿勢正しく、隙がない

プロのメイドってオーラが全身から溢れ出ている


「ラヴィさんもこのくらい真面目だったら良かったのに」


本日2度目の全力ハグからの全力モフモフ


「やめれぇ」


「して、本来の依頼人のミーシャとか言ったか?

その者はどこにおるのじゃ?」


するとクレアさんは小さくため息をつき、

状況を話し始めた


「その事なのですが、先程まで一緒に皆様をお待ちしてたのです

しかしなんとも落ち着きのない方でして、待ちきれないと先に森の奥へと走って行かれまして……」


私たちとの待ち合わせもあるためクレアさんはその場を動けなかったそうな

とりあえずその王子とやらを探すため、王子が向かった方向へと魔導車を出発させた



王子が向かった先はとても険しい道だった

先程よりも更に揺れが激しくなり、

私もシートから落ちそうになる


「マリエラ様、よろしければこちらへどうぞ」


そう言ってクレアさんは自分の膝の上をポンポンと叩く


「ん、大丈夫」


「いえ、遠慮なさらずに」


「だいじょう…」


「お早くお願い致します」


強引に押し切られ、仕方なくクレアさんの膝の上に乗せられてしまった


「……モフモフ

極めてモフモフでございますね

ワタクシ虜になってしまいそうでございます」


やはりそれが目的か

不本意ながらクレアさんにホールドされたまま、

揺れる車内で過ごすことになった



しばらくの後、

ついに魔導車の通れる道がなくなった事で、

私たちは渋々徒歩で進む事になった


「あのさ、魔導車の燃料、アタシの魔力以外でどうにかならないわけ?」


「ならんな、というかエルフほどの種族であれば問題ない燃費なはずじゃがな

おぬしの魔力が少な過ぎではないかのぅ」


「ほら、美人薄命って言うしさ、

美人エルフって魔力も希少な感じなんじゃないかと…」


「いいえ、エルフの美貌と魔力に関連性は皆無と存じます」


クレアさんの正論にラヴィさんが押し黙った


「……真面目か」



険しい道を歩くこと数分、

少し開けた場所に出る

沢山の木々にかくれているが、そこには綺麗な湖がみえた


「あれぇ?誰かいるみたいですよぉ〜」


エステルさんが指差す方に木々の陰に隠れるように湖を見つめる人影がある


「何やってんだろね?」


「あぁ…ノゾキ、でございますね

ちなみにノゾキに勤しんでおられるのが、

今回の依頼人であらせられます、ミーシャ王子にございます」


どうやら水浴びしてる女性をノゾいてる輩が今回の依頼人だったようだ


「はいアウト、帰ろうか」

「帰りましょうかぁ」

「帰るべきじゃな」

「よし、帰ろう」


「皆様、お気持ちはお察ししますが、

どうかお仕事をお続け下さいますようお願いいたします」


動揺する事なくお辞儀をするクレアさん

あぁ、あの王子いつもあんななんだろうなと察した瞬間だった……

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