勇者随行記録 8
宴は夜通し行われたらしく、
私が起きた頃にはそこら中に死体の山……いや、飲み潰れの山だった
「あら、マリエラおはよー」
ラヴィさんは元気に朝食を取っている
エステルさんもカグヤさんもすでに昨晩の宴の片付けをやっている
「また一人勝ち?」
「とーぜん」
親指をビシッと立てドヤ顔
ホントにラヴィさんに勝てる人物はいないっぽいな
「相変わらずラヴィりんは強いわねぇ」
店の奥からミチルオネェさんが出てきて私に朝食を持ってきてくれた
「いただきます」
ホットミルクにサラダ、目玉焼きとトースト
よく噛んで、飲み込んで、次の具にフォークを刺す
「あぁそうだ、カグヤん
さっきね、常連さんから面白い話を聞いたのよん」
ミチルオネェさんは掃除をしているカグヤさんに声をかける
「ん?面白い話とな?
妾に、ということはアーティファクト絡みじゃな」
「ご名答
実はね、アルカディア領を出て、ノーフォビア領に入ったすぐの森で大きなアーティファクトが見つかったらしいのよん
何人か研究者たちが調べたらしいんだけどね、
ウンともスンとも言わないみたいで手を焼いてるそうよん」
「ほう、しかしあの辺りは特にダンジョンも何もなかったはず…」
「あぁ〜私の故郷ですぅ国境沿いの森ですよねぇ」
エステルさんも話に加わった
そうか、ノーフォビアが故郷だったんだね
「あそこ森しかないよね、エステルって野生だったの?」
「ん〜そうなんですかねぇ」
いや、そんなわけないでしょ
私は持っていた地図を出し、アルカディアとノーフォビアの国境付近を確認する
「うーんホントに何もない」
国境から一番近くても馬車でも半日かかる距離にある
「なんにせよ、アタシらは旅をしながら宿屋をやるのが売りなんだし、
ちょっと早いけどアルカディアを出てみるのも悪くないんじゃないかな」
確かに
初仕事で勇者の同行という大役を果たして、
アルカディアではいずれ知名度は上がると思うから仕事はしやすくなるだろうけど、
それだとアルカディアからは動かなくなりそう
せっかくの移動宿屋なんだから、もっと色んな国に行ってみたいものだ
「おぬしらも中々アクティブじゃのぅ
安定を捨てて冒険を取ると?」
「ん、それが宿屋マリアベルのやり方だと思う」
「決まり、ですねぇ」
そうして次の目的地が決まり、一旦王都へ戻る準備に入った
「では王都に帰還するとしようか」
勇者の一声で私たちは砦を後にする
同行していた騎士団を砦の護りに残し、
来た時とは違い、少ない人数での帰り道
あの騒がしさが早くも懐かしい気がした
「帰りは魔導車で帰れるのはいいわね」
本当はメグルさんの空間転移で一瞬で帰れれば良かったんだけど、
物と違って、人ひとりですら一緒に転移するのは物凄く体力を消耗するらしく、
とても全員は運べないとの事で断念した
「妾たちと勇者一行のみだしな」
とは言え8人を楽々乗せられる魔導車ってホント凄い
……運転法の異常さを除けば……
「ほ、ホントに大丈夫なのよね?
ラヴィリスの運転
その小さい機械で動かしてるとか信じられないんだけど」
ラヴィさんはコントローラーをピコピコしながら集中している
「遊んでるようにしかみえない」
「どうしよ、寝不足でヤバい、魔力、もたない、かも」
しまった、徹夜の飲み比べでラヴィさんは限界間近だった
「帰りは魔導車だと出発前の王都でも話したはずじゃがな
全く後先考えん奴よのぅ」
すると、視界の開けた丘の上辺りで魔導車は停止した
「あー、無理、寝る」
ラヴィさん撃沈
仕方なく魔導車を降りて、
くつろげるように広めのテントとテーブルセットを設置し、
フカフカのベッドをラヴィさんのために取り出した
「悪いわねぇ、2、3時間寝たら復活するから……ぐぅ」
「彼女はいつもこうなのかい?」
寝てるラヴィさんを見ながら勇者は呆れている
まぁ今の状態だけじゃなく、今までの行動の事も含めて言ってるんだろうけど
「よく分からん奴じゃよ
どこをどう見てもエルフなのに…」
「エルフとは思えないほどぉ…」
「バカで品がない」
私たちの意見に勇者たちが苦笑いを浮かべる
「でもまぁ仕事中は結構しっかりしてるわよね?」
ハルカさんのフォローはまぁ同感ではある
しかし気になるのはさっきからハルカさんはモコモコの布でまた何か作ってるんだけど…
「喋らなければカグヤさんの次くらいには美人と認定しても差し支えないな」
さりげなくカグヤさんの隣に座るマリウスさん
なんか久しぶりに喋ってるとこ見た気がするな
「いやいや、シスターの次くらいだろう」
エステルさんの隣には勇者
そしてその隣にハルカさん
物凄い形相で勇者を睨んでいる
「時々変な事口走ってるけど、
ありゃなんなんだろうな?」
あー確かにオルガさんの言うようにそういうとこあるね
意味不明な単語がチラホラ出てくるのはホント謎
…………………
(((ホントになんなんだろうなこのエルフ)))
この場の全員の心の声が一つになった瞬間だった
陽が沈みかけた夕刻
王都の正門に到着すると私たちは魔導車を降りた
「今回は本当にいい任務だったよ
改めて君達に感謝を」
私は勇者と握手を交わし、ハルカさんにめっちゃハグされた
「マリエラちゃん、新作期待しててね!」
やっぱり着ぐるみ作ってたのか
「それじゃぁ私はぁ報酬を受け取りにぃアリアスさんたちとお城に行って来ますねぇ」
「あぃ〜よろしくねエステル」
疲れ果てたラヴィさんに代わり、エステルさんが報酬を受け取りに行く事になった
カグヤさんはアーティファクトの件でまた技術部に顔を出すとの事
「それじゃまた」
「あぁ君達の事は僕たちがしっかり宣伝しておくよ
アルカディアに戻った際にはまたよろしく頼むよ」
「ん、ありがと」
ふらふらのラヴィさんを連れて王都の宿屋へ行こうとするんだけど…
「あぁダメだぁ〜
マリエラ、おんぶ」
私にのし掛かってくるラヴィさん
無理に決まってるでしょ
「お、重い」
「あ〜モフモフ〜」
こうして私たちの初仕事は無事終了した
王都直々の依頼という事もあり、かなりの報酬を得た私たちは次の目的地であるノーフォビアへの準備を始めるのだった
第1章 勇者随行記録 完




