勇者随行記録 5
謎の少女の追跡任務になぜか私達も参加することになった
しかし走り回って疲れたのか、騎士団全員が息を乱しながらその場に倒れた
「まぁその重装備じゃくたびれるわよ」
「しかし追いつかんのぅ
あちらも疲れとるはずじゃが」
「もう少しって感じなのにぃ
角曲がったらいなくなってたりぃ
不思議ですぅ」
そう、さっきから何度も何度も追いつきそうになっては姿をくらますという謎の追いかけっこが続いていた
すると騎士の一人がこう言った
「……ありゃ魔女だ
俺たちとんでもないことに巻き込まれたんじゃないのか!?」
「そ、そうか
こりゃ魔女が見せる幻覚ってやつか
出来れば魅了の魔法でもかけてくれりゃなぁ」
ん?なんかおかしな事言い始めたぞ
「魅了ってお前、そんなの掛かったらヤベェだろ」
「え、お前掛かった事ないの?マジで?
もうね、凄いんだぜ?ありゃこの世のものとは思えないくらいの……」
「その話詳しく」←勇者
「え、なになに俺にも教えろよ」
騎士たちがざわつき始めた
とんでもなくどうでもいい話題で
「こいつらほっといて探す?」
「それが良いじゃろうな」
しかし先に動き出したのは騎士団だった
「……そうか、魅了ってそんな凄いのか
なら行くしかねぇな」
「あぁ行こうぜ俺たちのパラダイスへ!」
「「「「おぉぉぉぉぉ!」」」」
冷静さを失い、今にも走り出さんとする騎士団
「男ってバカねぇ
魅了?そんなんアタシ一人で魅了してやろうじゃないの」
と言ってラヴィさん全力のセクシーポーズ
「…………魔女を追えぇぇ〜!」
そして全力のスルー
ラヴィさんの横をすり抜けて騎士団は魔女?を追って通り過ぎた
「………何これ、近年稀に見る恥ずかしさなんだけど」
赤面し、うずくまるラヴィさん
するとポンポンとラヴィさんの肩を叩く……
「……ハルカ、アンタいたの」
「気持ちはよく分かるわ
けど、まぁ……」
遠くを見つめるハルカさん
「今のはホント恥ずかしい」
まさかの追い討ち
「だぁぁぁぁ!言わんでいいわぁー!」
「バカエルフは放っておいて探しに行くぞ」
この時ラヴィさんは決意した
「今夜も全員潰してやる」と……
「あの謎の少女を捕まえるんでしょ?
だったらいい方法があるわ」
自信満々のハルカさん
なんだろこの嫌な予感、まるでラヴィさんが何かやらかす時と同じ感じがする
「じゃーん!
昨晩徹夜して作った新兵器よ!」
自慢げに出したのは熊の着ぐるみ風の衣装だった
モコモコの素材にフードのてっぺんには熊の耳の飾りが付いている
「……ハルカ、これなんか小さくない?」
「マリエラちゃん用だもの」
「……ハルカ、なぜおチビの寸法を知っておるのじゃ?」
「それは昨晩マリエラちゃんが寝てる所を……違う、私見ただけでサイズが分かる特殊能力持ってるの、特殊能力持ってるの!」
大事なことなので二回言った模様
「そういえばぁ
昨晩は二人でコテージに泊まってましたよねぇ」
「はいアウトー通報、通報」
「待ってラヴィリス!
お願い、単なる出来心だったの!
だって、見てたら似合いそうなんだもん!」
あの夜そんな状況になってたなんて知らなかった
勇者の関係者とんでもないな
「そんなことより、それ着たらあの女の子捕まえられるの?」
「ほぉら!本人着る気まんまんよ!
私、悪くない!」
いや、そうでなく
……やだこの人ラヴィさんと同じ匂いがする
「ああいう地味子ちゃんはこういう可愛いものに弱いのよ
だから、あそこの角を曲がった先にこれを着たマリエラちゃんを配置しとけば
絶対ゲットできるわ」
熱弁するハルカの指差す所
曲がり角の先は袋小路になっていた
要するにそこに追い込んで着ぐるみ着た私がその地味子ちゃんをキャッチするという事らしい
「ん、分かった、やる」
あの子の事がなんか気になるので、
恥ずかしいけどやる事にした
……さっきのラヴィさんの恥ずかしさに比べればまだマシだしね
「なに、マリエラその哀れみの表情は」
「じゃ、じゃあ早速着替えましょうね
そこの部屋は空き部屋になってるから
行きましょ」
なんかハルカさんの目が怖い
数分後、
私のモコモコな熊の着ぐるみモードか完成した
「か、可愛い〜」
「ちょっと待ったハルカ、
アンタその鼻にティッシュ詰めてるのはなに?」
「着替え中にハルカさん鼻血出してた」
素直に起こった事を簡潔に述べる
「こら、うちの子に何をしたハルカ」
「何もしてない何もしてない
見てただけだから!見てただけ、だ・か・ら!」
これで勇者の仲間なのだから先行き不安になる
「犯罪者まっしぐらだのぅ」
「マリエラちゃん、大丈夫だったぁ?
……モコモコ〜」
エステルさんに優しく抱きしめられた
心配してるというより、着ぐるみの感触を味わってるっぽい
「ん、問題ない」
「さて、ハルカの処分は後でするとして
とりあえず作戦決行しましょうか」
一度騎士団を集め、作戦を説明する
全員バラバラに通路に立ち、
女の子が現れたら上手くこの袋小路に追い詰めるというもの
ハルカさんの考えではそこでモコモコの私に抱きついて離れないだろう、と
「了解しました!」
「今度こそ捕まえてやる」
「そして魅了の魔法を…」
まだ諦めてないのか
「おチビ、これを持っておくが良い」
カグヤさんが渡して着たのは手のひらサイズの機械
恐らくはアーティファクトだと思う
「遠距離会話が可能なアーティファクトじゃ
横のボタンを押しながら話せば、妾が持っている同じものからおぬしの声が聞こえてくるようになっておる
無論逆も然り
捕まえたらそれで連絡すると良い、すぐ駆けつけるゆえな」
「ん、ありがと」
そして二階にいたオルガさんたちも合流し、
全員が一階のそれぞれの配置についた
「さぁいつでも来るがいい、魔女
僕に魅了の魔法……いや、成敗してくれる」
ダメだなこの勇者
……あ
「釣れた」
カグヤさんからもらった遠距離会話機…長いな
通信機と名付けよう
その通信機に向かってカグヤさんに知らせた
「なに!?もうか?」
ドタドタと私のところに駆け寄るみんな
しかし……
「……えーと、ハルカさんや
何してるのかな君は」
釣れたのはハルカさんだ
さっきから抱きついて離れない
みんなから冷ややかな視線を浴びせられている
「だ、だってぇモコモコのモフモフなんだもの〜」
「離れなさい」
「あと五分、あと五分だけ、……ハァハァ」
自分で立てた作戦を自分でぶち壊すハルカさん
「エステルー、この地味子ちゃんをつまみ出して」
「あいあいさぁ〜」
「地味子は私じゃなーいー」
エステルさんにガッチリホールドされて退場するハルカさん
もう戻って来ないで下さい
惜しくも一人退場したのち、
再び作戦を開始する




