勇者随行記録 4
次元転送者
ディメンションブレイカーと呼ばれる存在がいるらしい
空間に穴を開け、距離に関係なく瞬時に移動できる能力を持っているそうな
「で、そのディメなんたらのお嬢ちゃん?
その子がなんで美中年を?」
「ディメンションブレイカーね
美中年はね“精霊の広場”にある素材からしか作れないみたいなのん
で、その子はどうやらその精霊の広場に住んでるっぽいのよん」
「ほへ〜」
精霊の広場
それは数々のレアな素材がひしめき合う、
素敵空間だそう
しかし、戦乱の最中魔族の強大な魔力が広場を取り囲んだことで、
時空から切り離され、
誰一人として入る事が出来なくなった場所として知られる
「なるほどな、時空から外れた無の空間にある精霊の広場
そこから移動出来るのは、次元を切り裂いて空間を移動出来るそのディメンションブレイカーならではということじゃな」
「あらん、そちらはラヴィりんのお友達?
ラブリーな子たちばかりじゃなぁい?
それにそちらの巫女ちゃんはラヴィりんと違って中々理解が早そうねぇ」
「時に店主よ、聞きたいことがあるのじゃがよいか?」
うんうん、と頷いたミチルオネェさんは、
まずは座んなさいと私たちをカウンターの席に座らせた
簡単なツマミとドリンクを出してくれて、
一気に飲み会の様相を呈してきた
「で?
何を聞きたいのかしらん?」
「そうじゃな、まずはそのディメンションブレイカーは何かアーティファクトを持っておらんかったか?」
「う〜んどうかしらねぇ
あぁ、そういえばアーティファクトかは分からないけど、
左手に宝石みたいなのが埋め込まれてたわね」
「ふむ、埋め込まれていた、か」
しばらく考え込んで、カグヤさんは今度は別の質問をし始めた
「もう一つ聞きたい
このダンジョンにアーティファクトはなかったかえ?
こう、四角くて中に物を入れられる感じの」
「電子レンジ?」
なにそれラヴィさん
「あぁこれのことかしらん?」
すると後ろのカーテンを開けて食器棚が露わになり、
その中心に四角い程々に大きな機械があった
「食材入れたら自動的に料理が出来るから助かっちゃってるの」
「おぉ、それじゃそれじゃ
(本当は武器を自動で作り出す物なんじゃがなぁ
まさか食材入れると料理を作るとは思わんかった)」
「妾はまぁそのアーティファクト技師でのぅ
良ければ少し点検させてはもらえぬかえ?」
「あら助かるわ、最近食材の水分のせいか調子が悪いのよん」
そして早速カグヤさんは四角いアーティファクトをいじり始めた
破壊するかどうかはわからないけど、
とりあえず目的の物は見つかったようだ
「あの〜
さっきのディメンションブレイカーぁさんの事なんですがぁ」
「あらあらなぁに?シスターちゃん」
「なぜぇここにそのお酒を持ってくるようになったんですぅ?」
「そうよ、そこ
そこが知りたいわ」
「なんでもその子、昔この辺りにいたことがあるみたいでね、
なんとなく忘れ物を取りにきたとか言って
ふらっと現れてね、
そしたら酒場になってるじゃない?
で、出会った記念にご馳走してあげたら大層喜んじゃって
次に来た時にはその美中年をウチでの食事代として渡してくれるようになったのよん
ありがたいわぁ」
私はあまり興味が無いのでジュースを飲みながら店内を物色し始めた
薄暗く窓もないけど落ち着いたいいお店だ
テーブルやイスもしっかりしてるし、掃除も行き届いている
ミチルオネェさんは見た目はアレだがちゃんとした人らしい
「よし、終わった
これで問題なく使えるであろう」
四角いアーティファクトをいじり終えたカグヤさんが再びカウンターに戻る
私は駆け寄り何をしたのか耳打ちしてみた
「ん?なに、武器を作る機能を無くして、純粋に料理だけを作るアーティファクトに改修しただけじゃ
これはこれで人の役に立つ物になっておったゆえ
破壊はせぬよ」
そう小声で言って席に着いた
なんとか目的の一つは達成された
「そのディメなんたらちゃんに会ってみたいわね」
おもむろにラヴィさんがそう言う
「美中年目当て?」
「それもあるけど、もしかしたらアタシ達にとっては凄く役に立ってくれそうな子かもしんない」
何か企んだようだ
「う〜ん、そうねぇ
もうちょっとしたらご飯食べに来ると思うから待ってみたら?」
そう言うと改修したアーティファクトの試運転がてらに、
いくつかの料理を作り振る舞ってくれた
「美味し」
「ですねぇ〜」
待つこと小一時間
しかしディメンションブレイカーさんは現れない
「おかしいわねぇ
いつもならもう来てもおかしくないのに」
すると店の上、つまり砦の方が騒がしくなる
大人数で駆け回っているような音が響き続けている
「あらやだ何事かしらん」
「砦はもう勇者たちが制圧してもおかしくない時間は経っておるはずじゃが…」
「何か不測のぉ事態ってやつですかねぇ」
「砦?そんなのがこの上にあるの?
気づかなかったわぁ
まぁ出られないから知りようもないんだけどね」
そっか、ミチルオネェさんはここから出られないんだった
「バストとヒップが大き過ぎるのも考えものよねぇ」
「そ、そだね、ラヴィさんよりはるかに大きいよね」
「こらマリエラ、なんでアタシを引き合いに出すのよ」
ともかく上の状況が気になるので、
私達が入ってきたさっきの扉の方まで行ってみる
「……ちょっと気になるから見て来る」
「んじゃみんなでいきましょ
カグヤのアーティファクトがあるとはいえ、
マリエラだけじゃ危ないっしょ」
結局いつもの4人で行動する
いきなり魔王でもいたらちょっと困るしね
流石にそれはないと思うけど…
「んじゃミチルちゃん、ディメなんたらちゃんが来たら足止めヨロシクー」
「りょーかい、そっちも気をつけてね~」
再びエステルさんが重い扉を開いて上へと上る
すると上から聞こえていた音がどんどん近づくのがわかる
元ダンジョンの入り口を開けて砦へ
「「「「うおぉぉぉぉぉ!」」」」
騎士団だ
騎士団の人たちが何かを追って走り回っている
「ちょっとなにやってんの?」
騎士団の一人の首根っこを捕まえてラヴィさんが質問する
「え?あ、ラヴィリスさん!?
皆さん何処にいたんです?
いや、そんなことより大変なんですよ」
彼の話はこうだ
幹部や魔族たちを殲滅し、砦を制圧した後
この一階に降りてきたら、
誰〜もいないはずの一階にポツンと女の子が一人で立っていたそうな
声をかけると逃げるように走り出すのだけど、
どうにも遅い
これは……
「これは自分たちを罠にかけるために引きつけてるんだと確信しました
つまりその女の子は魔族の生き残りなのではとさっきから追っているんですが、
これが全然追いつけない
あんなに足が遅いのに、ちょっと目を離すと次の瞬間いなくなってるんですよ」
オカルトはんたーい
私はラヴィさんの後ろに隠れた
「う〜ん、まさかの幽霊案件かぁ」
すると別の騎士の一人が声を上げる
「あ!いたぞ!そこの通路の先だ!」
声のする方へ全員が振り返る
そこには大荷物を抱えた女の子が一人、
息を切らせてへたり込んでいた
瓶底眼鏡に大きな三つ編みが二つ
とても地味な服装の女の子はこちらを確認すると立ち上がり再び走り出した




