勇者随行記録 3
砦内部では勇者一行と魔物や魔族たちとの激しい戦闘が繰り広げられている
しかし私たちはそれとは無関係に砦内部へと侵入する
「結構広いわね」
「これだけ大きいとぉ、
見張りの魔族たちがいてもおかしくないと思うんですがぁ」
魔族はおろか、魔物一匹見当たらない
「勇者たちの所に行ったのかな?」
「いや、さっきも言ったじゃろ秘密兵器がある、と」
そしてカグヤさんが私たちに見せたのは、
見慣れない小さく歪な赤い石の埋め込まれた機械
「魔除けの血石じゃ
この前の森の戦闘でロザリアクイーンを魔導車ではねたのは覚えておろう?」
「えげつなかった」
「うむ、あの時奴の血液が魔導車に付着しておってな、それを集めて作った物じゃ
ロザリアクイーンの血液はそれだけでかなり強力な魔力を持っておってな
結界を作るのにうってつけでの、
これを妾の作ったアーティファクトで奴の魔力を結界として外部に拡散、
それによりロザリアクイーンより弱い魔物や魔族は寄り付かんというわけじゃな」
「……うわ、チートじゃん
ロザリアクイーンより強いのつったら
もう魔王クラスくらいなもんじゃない?」
しかも効果は私たちの周辺だけに限定もできるけど、
かなり広範囲まで拡大する事もできるという
「超強力虫除けバリア」
「妙な名前を付けるでない
まぁ効果を広げ過ぎると勇者たちの仕事が無くなるからのぅ
今は妾たちの周りに限定しておる」
「これでぇ
安心してぇ探索ができるわけですねぇ」
エステルさんの持っていた剣のアーティファクトが紛失した今、
身を守る方法はこれしかない
まぁ十分過ぎるけど
「さて、それじゃ早速探索しまくりましょか」
「ん、頑張る」
まず向かうのは砦が建つ前にあったというダンジョンの入り口
「それはどう探すのさ?
床に適当に穴でも開ける?」
「それが出来るなら止めはせんぞ」
「よし、頑張ろう」
「やめよ、冗談じゃ
ちゃんとそれ用のアーティファクトを用意してある」
腕輪からそのアーティファクトを取り出そうとするカグヤさん
しかし……
「……ないのぅ
もしや工房に置いてきてしもうたか」
すると少し離れた場所からエステルさんが手をブンブン振ってるのが見えた
「あったよぉ〜」
どうやら見つけたらしい
「……エステルってさ、そういうとこあるのよ」
「アーティファクト並みの勘の良さってことかのぅ」
「ん、便利」
そこへ近づくと床の一部をごっそり持ち上げて私たちを待つエステルさん
魔女の時以来バカ力に拍車がかかってる気がする
「どうやって見つけたの?」
「こぅ〜フッと感じてぇ、ドバッと開けたらぁ
ゴゴゴゴゴぉ〜って感じで」
「ゴメン全然分かんない」
ともかくエステルさんの開けた床の下に
確かに地下へと続く階段がある
「魔族がここに入ったかどうかはわからんが、
慎重に行くとしよう」
「でも虫除けあるし大丈夫でしょ」
「これを使ってもトラップまでは逃げてくれんがな」
それもそうだ
慎重を期すためラヴィさんを先頭にして階段へと進み始めた
「自然の流れでアタシを先頭にするのどうかと思うわ」
長い階段を降りて行くとなにやらいい匂いがしてきた
その匂いに誘われるように足取りを早めると、
人一人がやっと通れるくらいの扉が現れた
長年使われていなかったのか、
錆びついて動かない
と、なるとここは…
「エステル」
「あいあいさぁ」
ギィィィっという音を立てて扉が開く
するとそこには…
「あれ?ダンジョンって言ってなかったっけ?」
ラヴィさんに続いて中に入ると、
……酒場だった
いい感じの照明が店内を照らし、小さいながらも雰囲気のいいお店が視界に広がっている
「ん?あぁら、いらっしゃい
って変なところから入ってきたわねぇ」
声をかけてきたのはオルガさんを更にデカくしたような女装したおじさんだった
「あー!
ミチルちゃん!ミチルちゃんじゃん!」
突然ラヴィさんが叫び出し、ゴツい女装の店主に駆け寄る
「あらん、ラヴィりんじゃないのーお久ぁ」
「なんじゃ、知り合いか?」
「みたいですねぇ」
どうやら知り合い同士みたいで、目的そっちのけで話し込み始めた
「半年も行方くらましてるから死んだかと思っちゃったじゃん」
「あたしも色々あったのよぅ
……あんた幻のお酒“美中年”知ってるでしょ?」
「そりゃもう、単なる架空の酒って言われてる奴でしょ?」
なんだそのキモいお酒は
「それを探してここまできたんだけどさ〜
地盤の崩落に巻き込まれて地下ダンジョンの途中に落っこちちゃったのよぅ
で、出口を探して彷徨った結果、出られなーいってなって
途方にくれてたら、地下民族の人達に出会ってね…」
で、なんやかんやあって外に出られないこのミチル…オネェ…さんに代わって食料なんかを取ってきてもらう事になったそうだ
そんなやり取りをしてるうちに、
沢山の地下民族が出入りするようになって、
とても仲良くなったらしく…
「じゃあもうここで酒場でも始めちゃおってなってね」
で、今に至る、と
「店のテーブルやイスなんかも持ってきてくれてね、
ホント助かっちゃったわ〜」
「だったら連絡の一つも寄越しなさいよ
酒場組合のみんな心配してたわよ」
「ゴメンね〜
こっちの暮らしが楽しくってつい
……で、よ
ちょっとこれ飲んでみなさいよ」
ミチルオネェさんが一杯の酒をラヴィさんに差し出した
「これは?」
「美中年って言ったらどうする?」
「マジで!?」
瞬時にグラスを掻っ攫い、一気に飲み干す
グビッと喉を鳴らして…
「くはぁ…
何これ美味しー!」
「これが正真正銘の美中年よん」
「…マジかぁ
これはヤバいなー
ミチルちゃん、どこで手に入れたの?
地下民族が持ってたの?」
「い〜え、持ってきたのはね、
次元転送者、
ディメンションブレイカーと呼ばれるお嬢ちゃんよん」




