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勇者随行記録 2

一夜明け、今日は勇者一行が魔王幹部の拠点を攻略する重要な日


……だったのだか


「ゆ、勇者殿、面目次第もございません」


全員もれなく重度の二日酔いに見舞われていた


「いや、僕も潰された口だからね、

君達を責める権利はないよ、ハハハ…」


勇者も完全にダウンしてる



昨晩、存分に夜営を楽しんだ勇者一行と騎士団たちだったけど、

そろそろ休もうかと言う時にまさかのラスボス登場

……ラヴィさんだ


「君達〜!

夜はまだまだこれからよん!

アタシに飲み勝ったら、麗しのシスターか雅な巫女さんの好きな方のキスを進呈しまっす!」


「「「「おぉぉぉぉぉ!!!」」」」


テンションは最高潮

まさかのイベントに全ての男達が眠気も吹き飛ばし立ち上がる


「待たんかバカエルフ!

誰もそんな事承諾した覚えはないぞ!」


「あらあらぁ〜どうしましょうぅ〜」


勝手に賞品にされた二人はいい迷惑だ


「これだから男って…

アリアス、マリウス、オルガ、アンタたちはちゃんと寝なさい、よ……ってどこ行くのよ!」


「すまないハルカ

男には命を賭してでも、やらなきゃならない戦いってものがあるんだ」


それ今じゃないな勇者


「カグヤさんの唇をあんなむさ苦しい連中には渡さん」


マリウスさんは巫女さん派、と


「両手に華も悪くねぇな」


オルガさんにはファイアリザードがお似合いです


「あぁそうですか、はい頑張ってくれば?

さぁマリエラちゃん

バカな連中は放っておいて私たちは寝ましょうねー」


そう言ってハルカさんは私を連れて女性用に設置したコテージへと向かった


後で聞いた話だけど、飲み比べの結果はラヴィさんの一人勝ち

あの場の全員がラヴィさん一人に潰されるという大惨事の結末を迎えていた



そんなわけで一夜明けてノーダメージなのは女性陣のみだった


「最近の男どもはだらしないわねぇ〜」


あれだけ飲んでラヴィさんはケロッとしている


「バカエルフ、今度またあんな事やったらしばき上げるゆえ、覚悟せよ」


「まぁラヴィに勝てる人いないから、

大丈夫だと思いますけどねぇ」


「どうする?行く?もう1泊?」


「行くわ、行くわよねアリアス?

行かないとか言わせないわよ」


ハルカさんはご立腹


「あ、あぁそうだね

こんな事では勇者の名が廃る、這ってでも行って見せるさ」


残念ながら昨夜の一件で、その名はもう廃れてるけどね


「マジかアリアス、今動いたら確実に…ウプッ」


あのガタイのいいオルガさんがここまで弱るなんて、

一体何杯飲んだんだろ


「聞け!仲間たちよ!…うぷ

この戦いはアルカディア王の勅命である!

この機を逃しては魔王の幹部はより一層の力を得るかもしれない……うっぷ

そうなる前に我々で何としても叩かねばならない!ぉぇ」


勇者の言葉に気力を振り絞って立ち上がる騎士たち

この惨状がラヴィさんによるものだと思うとホントいたたまれない


「…それに、美しい女性たちの前で無様な姿は晒せない

そうだろ?みんな……ぅぷ」


今まさに存分に無様ですが


「あぁそうだ!まだ俺は諦めてないぞ!

シスターの寵愛を得るまではこんな所で死ねない!」


「その通りだぜ!

カグヤさんにキスしてもらうまで何度だってやってやる!」


「立て同志たちよ!

俺らの生き様、彼女たちに見せてやろうぜ!」


「「「「おぉぉぉぉぉ!」」」」


一体何と戦ってるんだ、この人たち


「よーし、よく言ったお前ら、死ぬ気で歩けよ

止まったら私が殺す!」


「「「「ひぃぃぃぃぃ」」」」


ハルカさんの怒りはピークだ

勇者の余計な激励の言葉が彼女に火をつけたっぽい



それからの行軍は凄まじかった

ハルカさんが先行し、敵の群れを見つけては草木諸共焼き払い、

彼女の通った後には雑草1本残ってはいなかった

まぁつまり……ストレス発散


その後に続く勇者一行と騎士団は

その光景を目の当たりにしては恐怖と二日酔いで嘔吐を繰り返す

さながら地獄絵図だった



「やっとついたわね」


魔王幹部が拠点としている砦にたどり着く

気付かれてはいけないので少し離れた所で再び休憩所を設け、

作戦会議へと入った


「ぶっちゃけハルカが先頭の方が進軍早かったね」


ラヴィさんの言葉に面目丸潰れの男たちが視線を逸らす


「ま、まぁしかし、ハルカのおかげで大分酒は抜けたよ

これなら砦の攻略には支障は出ないさ」


「そうじゃなきゃ困るわ

さすが私も幹部クラスの敵を一人では相手出来ないもの」


いかにも“私疲れたから後よろしく”感を出しつつハルカさんは自分の肩をマッサージした


「そ、そうだね

君にばかり負担させられないからね

頑張るよ、うん頑張る」


これは将来尻に敷かれる未来しか見えないね


「んじゃ、アタシたちはアンタたちが砦攻略してる間、好きにやらせてもらうから

そっちはそっちで頑張ってね」


「了解した

しかし護衛も付けずにいいのかい?」


「はい〜

自分の身は自分で守りますのでぇ」


「うむ、…なに心配は無用じゃ

秘密兵器も用意済みゆえ、こちらの事は気にするでない」


それを聞いて勇者たちは砦攻略の準備を完了し、

気合いを入れつつ砦へと入っていった



勇者一行を見送った後、

私たちは私たちの目的へと移る


「で、ここに危険なアーティファクトがあるってのは間違いないの?」


「うむ、数千年前ここは地下ダンジョンでな、

妾がその最深部に放り込んだのじゃ

その後、入り口は砂塵にまみれ、あんな砦が築かれたというわけじゃな」


私たちの目的、と言うか

カグヤさんの目的なわけだけど、

以前カグヤさんが言っていた“贖罪の旅”というのがこれにあたる


カグヤさんは何千年もの間様々なアーティファクトを作っては世界各地のダンジョンにそれを故意に置いてきたらしい

その最中、世の中は魔族との戦乱の時代を迎え、

カグヤさんも戦乱を早く終わらせたいがために超兵器的なアーティファクトを作り、置いていったそうだ

要は誰かが圧倒的な力で一気に魔族、ひいては魔界を制圧し、世界をまとめ上げれば戦乱は終わると安易に考えたとの事


しかしそれが逆効果となった

人間たちによって見つけられた兵器アーティファクトの存在で戦乱は更に激化

魔族を魔界へと追いやった後、今度はアーティファクトを巡って人間同士での争いが起こった

その結果人口は激減し、兵器アーティファクトの存在を恐れた各国の王たちはこれを厳重に封印し、今に至るとの事


兵器アーティファクトのいくつかは、

その各国それぞれに封印されてはいるものの、

未だ未発見の物が多く眠っているらしく、

それらを回収、破壊するのがカグヤさんの目的の一つだった


「あとはおまけでアーティファクトの材料が手に入れば儲け物じゃな」


そう、それがもう一つの目的


「そこら辺に転がってるもんじゃアーティファクトは作れないって言ってたね

そんなにレアな材料が必要なの?」


「当たり前であろう、

作ってる本人が言うのもなんじゃが、

アーティファクトは今の時代には完全なオーバーテクノロジーじゃ

それらの恩恵や奇跡の力を引き出すにはそれ相応の材料が必要となる

ゆえに今、妾が持ち歩いてるアーティファクトの殆どが未完成なのじゃ」


「なるほどぉ〜

でも危険なアーティファクトを破壊すると決めても

まだアーティファクトを作るのはぁ

何故なんですぅ?」


するとカグヤさんは荷物を腕輪に収め、砦へと向き直る


「それこそが贖罪なのじゃろうな

これから作り続けるアーティファクトは

兵器ではなく、人々の暮らしを豊かにするものと決めておる

……おチビの持つ蛇口や焚火装置のような、な」


「ん、役に立ってる」


カグヤさんはその言葉に微笑むと、

砦へと歩き出した


「ん、行こ」


「りょ〜か〜い」


「あいよー」




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