嘘の塊
この作品は元は長編だったんですが、書き終わりそうになかったので短編に変えています。
リズムに違和感を感じるとは思いますが、どうか生暖かい目で見守って下さい。
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とある学校の教室で二人の男女が緊張した面持ちで向き合っている。
「◯◯君、ずっといつも明るくみんなを笑わせてくれるあなたが好きです。
付き合って下さい」
「すいません、今は誰とも付き合う気はありませんので...」
「...そうですか、ありがとうございました」
「すいません、これからも学校では話しかけてくださいね」
少女が勇気を持って告白すると、男の方は丁重に断りをいれている。
少女の顔は整っているのだろうが、今は涙でぐしゃぐしゃになってしまっている。
少女が泣きながら去って行くと、一人残った男は、
「僕と一緒にいても面白く無いだろうに...」
男は自嘲を含んだ笑みで呟く。
男は顔立ちは整っていて、性格も良いと言われているが誰とも付き合った事がない。
何度か告白されたこともあるが、全て丁重に断っている。
それもそのはず、男は人の感情が理解できないのだから。
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その男は生まれた時から異状だった。
子供なのに全然泣かず、おねだりもしない。
両親は不気味がり、徐々に子供から離れていった。
(自分が周りと違うから愛されない)
子供は幼いながらもそれを理解し、そして親に愛される為に無邪気なフリをした。
おかげで両親との仲も良くなり、子供は何不自由なく成長した。
小学生になると先生に気に入られる為、中学生になり次は友達を作る為に
と、どんどん演技を重ねていく日々を過ごしているとふと思う、
(自分の本音が分からない )
男は常に演技を続け、一切自分の本音を言わずに過ごした為、
自分が何を思っているのか分からなくなっていた。
今考えているのもシリアスを醸し出す演技をしているのかもしれない、
何がしたいのか分からない...これすらも演技かもしれない。
男は自分が信じられなかった。
だがそれでも演技を続けないと自分を保てなくなっていた。
それからも演技を続け、男は高校生となりそれでも演技を続けていた。
高校生となって、友人も増えて男は女性と関わる事も増えていた、
が、それでもじぶんが分からず、
唯一できた趣味が本を読み、その登場人物が何を考えているかを想像する事だった。
それを続けていれば、いつかはじぶんの感情を創造できると信じていた。
しかしどんなに努力しても、じぶんの感情は分からず、男はそのまま大人に成り、
仕事をし、演技を続けていた。
大人になると、周りの人も演技をしているのかもしれないと疑心暗鬼になり、
じぶんだけでなく他人も信用できずに、結婚する事もなく過ごしていた。
そんな男も、40を過ぎた頃に病気に掛かり余命幾許もないと知り、
最後にじぶんの本音を知りたいと思ったが結局それも叶うこと無く、死ぬと悟った。
「最後に自分を知りたかった...」
その言葉を最後に男は息を引き取った。
男の葬式にはたくさんの人が駆けつけ、大々的に行われた。
世の中不思議なもので死後の世界というものがあるらしく、
男は死んだ後もじぶんの葬式を見ていた。
葬式でたくさんの人が泣いたのを見ても罪悪感が浮いてこない事を思い
(もう完璧に壊れているのか)
と思った時に、
「やぁ、君はたくさんの人を幸せにしたから何か1つ望みを叶えてあげるよ、
たとえ演技だとしてもね」
どこか神々しい光が告げてきた。
変な夢だとは思ったが、先ほどの言葉からして自分が演技をしている事に、
気づいていそうなので、
「それならば、自分の本音を教えてください、じぶんは壊れているんでしょうか?」
「そんな事でいいのかい、それは簡単君は愛されたがっている
んだよ」
その言葉を聞いた男は息を呑むと同時に、どこか納得した顔をしていた。
「そんな事が??」
「うん、君の行動原理はいつも『愛されたい』が元になっているよ」
「そんな事の為に俺は今迄くだらない演技をしていたのかよ!」
「いやぁ、やっと口調を変えたね。それにくだらないというけど、
君の演技のおかげで救われた人も居るんだよ。
演技が良かったとは言わないが、演技も含めて君の一部だと思った方がいいよ」
泣き続ける男は、徐々に透けていく、男は最後に
「初めて本当に感謝できます、今迄の俺の人生は無駄では無かったんですね」
「あなたの来世に幸多からんことを」
「お疲れ様、和泉君」
今日も世界は平和に廻る
願わくばこの世に幸せがいたらんことを
私の演技で誰かが幸せにならんことを
〜〜END〜〜
......あれ?なんでハッピーエンドになった?バッドエンドの予定だったんだけど...
申し訳ありませんでした...




