ゲートを司る者
暗い闇の中意識が遠のいて行くのを感じた。新は真冬が今どんな状況にいるのか、何をしているのかさえ分からないまま暗闇に飛び込んだ、意識が遠のく中で新は何一つ後悔していなかった。きっとこの先にあの日何が起きたのか、真実があることを確信していたからである。
『おーい、今日は何事だ?えらい騒ぎになってるみたいだが、あっ新聞くれ』作業着を着た男はそう尋ねながら新聞を手に取り会計を済ませる。
『それがよ、どうやら三人目が入ってきたらしいんだよ』店主はそう言った。
『それでこの騒ぎか、確かに今回の話には賛否両論あったみたいだしな、ファファス様に関しちゃ叛逆の印まで押されちょるし、平和は長くは続かんもんだの』新聞を開きながら男は言う。
『しかし、あのファファス様があそこまで反対の意思を示したということは何かしらのリスクが今回の話にあったってことだろ?』
『この話が決まってすぐに三人目が来ちまったってなるといよいよなのかね』
『ゲートを切り開く者、響きはいいがゲートを自由に開くのは神界が黙って見過ごすかね、しかし天界の王はゲートで何をしたいのやら、、それで三人目は審判の間にいるんだろ』
『よりによってあそこにたどり着いたのかいその子は?逃げ場はないか、さてファファス様どうするのやら』
場所は移り審判の間、三人目が現れたことで審判の間は騒ついていた。
『おい、どうする?この子は触って平気か?アルムス様がもうじきここに来ると連絡が来たが』
『害はなかろう、ひとまずその子に意識を取り戻してもらわねばおい、起こせ!』上司のような男が部下に命令を下す。
その部下が新に近づこうとした時であった。
『『その子に指一本触れるなよ』』
その声がすると同時に新の周りを爆炎が包み込んだ。轟音とともに唸る炎はやがて龍となり新を守るように包み込む。
一人の審判員が、声を震わせる
『炎神ファファス、、叛逆者だー早急に上部に連絡を、、』声が止まる。
『誰一人動くでないぞ』と老人は言う。
『これはこれはファファス様、こんなところで何をしているのですか?』突如審判の間の入り口から声がする。
『アルムス様、、』審判員たちは息を呑む。
そう、この二人はかつて『7大勢力』と言われた者たちなのである。
『ファファスよ、その少年を渡してくれるか?かつての同志と争いたくはない。その少年の力をお前は必要としているわけではあるまい。ゲートなどお前にとっては興味のないことであろうが』
『そうだの、興味はないがあのバカの間違いをそうやすやすと通させるわけにはいかんのぉ』 ファファスは笑いながら言う。
空気は氷るように冷たくなった。二人の間に無言の圧がかかる。アルムスが、天に手をかざすと同時にファファスのいる場所から無数の氷の刃が飛び出した。
『無駄だよ、ファファス!ここ審判の間は僕のテリトリーだ!』
一瞬にして審判の間は氷山のように氷で包まれた。『今なら、まだ殺さずに済むけど?』余裕そうにアルムスは問う。
ファファスの炎で壁を壊すのは可能であるがそれをやると新に危険が及ぶためファファスはそれが出来ずにいた、かと言ってこのままだとアルムスの流れだと感じていた。
仕方ないの
『破壊にはハカイを』
ファファスがそう唱えた瞬間、ファファスの周辺一体に衝撃破が吹き荒れ一瞬にして氷山を吹き飛ばしたのである。
『あのバカによーく伝えておいてくれんか、考えを改めよとな』
その言葉を残しファファス・アンドレードはこの場を後にした。
『べらぼうな爺さんだ』アルムスは笑いながらそう呟いた。
ファファスは炎の龍に乗り森の中に着地した。さてと、この少年は何故ここに来てしまったのだろうか?ファファスはその疑問を捨てきれずにいた。まっゲートを開く者と閉じるもの双方がこの世界に来てしまったか。まっこちらに閉じるものがいる以上向こうもむやみには動かぬかの、ファファスはひとまず現状は維持できたことに胸を下ろした。
『お前さんや、もう寝たふりはいいぞ!』
『えっ?バレてた?あのなんか怖すぎて、、トイレ借りてもいいですか?』
『おう、好きに使うといいここはワシの森じゃ』ファファスは新に怪我がないことに安堵した。
『どこから話すかの?まずはそなたが、何故ここに来たかを聞いても良いか?』ファファスは問う。
『妹を、、妹を救いたいと思って暗闇に飛び込んだんです。けど、そこには妹はいなくてあの場所にいたら爺さんが飛び込んで来てなんかよくわからんです。こっちからも質問したいんですけど、さっきの炎や氷は?』新は恐る恐る尋ねた。
『あれは神からの授かりものの様なものだ。今となっては、ただの争いの元じゃの!強大な力のために何人が消えたか、、。
お前さんにひとまず、この世界が何なのかを伝えよう。率直に言うとここはお前さんたちの言う黄泉の国のようなものかの、死者がたどり着く場所じゃ、そしてここは第二層目にあたる天界と魔界の共存する世界じゃ、第一層は神のみの世界、不可侵領域じゃ。一層から二層への移動は簡単じゃが、こちらからアプローチするにはゲートが必要と言われとる、それはお前さんの通ったゲートとは別物じゃ!わしら二層の者はこう呼んどるよ。』
『『ヘブンズゲートと』』