〈1〉
「-Duel blood wake-up-《デュエルブラッド・ウェイクアップ》!!!」
宣誓の言葉。運命に否を突き付け、血闘の道を切り開く、炎の言葉と共に。
セーラの全身は、燃え上がる火柱に包まれる。
制服が、肉体を縛る枷が、全て灰となり産まれたままの姿に。
魂の炎の中で、少女は古い己を自ら焼き尽くす。
「くっ……!?」
対峙する黒崎那由他が、思わず怯まずにいられない暴虐なまでの炎。
渦巻き、嵐となり。火が、緋が、夜の廃工場を染め上げる。
ああ、緋川セーラは今。生まれ変わるのだ。
不死鳥が、灰の中から甦るように。炎の中から、再び翼を広げるように!
「……燃えろ、アタシの炎ッ!!」
叫べ。熱く、もっと熱く。
今までの自分も、世界すらも。
「焼き尽くせぇぇぇぇぇーッッ!!!」
咆哮。炎が、爆ぜる。熱き業火が天井を、壁を、血塗れの床を舐める。焦がす。
そして。火炎を引き裂き、現れたのは。
緋色の瞳に宿すは爆炎。白の長い髪には焔の煌めき。
黒と真紅の戦闘衣装は、肩の露出した軽装ながら、それゆえに野獣のような闘う者の優美さを備え。
他方プリーツのミニスカートが、少女らしい可憐さを演出する。
炎を従え、ドレスのように纏う、赤の魔法少女。
涙も絶望も焼き尽くす、「炎」という概念がそのまま少女の姿に顕現したような。
神話の英雄たちと同じく、ヒトの祈りを具現化したかの姿。
それが。セーラの新たな姿、魔法少女としての姿だった。
・ ・ ・
「さあ、開戦の時だ! 100人の魔法少女、勝ち残ったただ一人に『奇跡』を授けよう。その血を、魂を燃やし! 存在の全てを賭けて最強の座に至れ!!」
高揚した声で、白い獣が朗々と告げる。
「なにがなんだか、わからねーがッ!!」
炎に彩られた全身を、その掌を眺め回しながら、セーラは。
2丁拳銃を構えた『蹂躙の魔法少女』黒崎那由他と向かい合う。
「これだけはわかる、この炎は! てめぇを、ぶちのめす力だッ!!」
鼓動の熱さが教えてくれる。
これはお前の炎だと。悪を憎み、理不尽を焼き払うことを願う、正義に燃える魂の炎だと。
固有魔法『不滅の炎』、緋川セーラの精神の火。
想いに応え、今。暴風となり吹き荒れる!!
「着火、ブレイズハートッ!!」
拳に炎を宿すセーラを前に。
「あはっ♪ あはははははははーはははははぁ♪」
血染めの黒いドレスを翻し、黒崎那由他も狂気の高笑いを上げる。
「いいわよ、来なさい、来なさいよ! やっと、やっと、魔法少女を殺せるッ♪」
解き放つは自らの固有魔法『蹂躙魔弾』、那由他の知る銃をピストルからマシンガンまで無限に生成する、虐殺特化の邪悪能力!
拳銃を投げ捨て、より凶悪な! サブマシンガンを2丁両手に構える!
無論、通常は片手で扱える武器にあらず。
しかし、これは魔法少女の戦い。魂を糧に奇跡を行使する、超常の戦士の激突である。
世の常識など捨て去るべし!!
「あははぁ♪ いい声で! 鳴かせてあげるわ♪」
「……やってみろッ!!」
炎を引き連れて、今。緋川セーラは駆け出した。