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魔法少女デュエルブラッド  作者: 伯爵炎(バーニング)
第1話 - Duel blood wake-up -
6/16

〈6〉

「おらぁぁぁっ!!」


 セーラの頭突き!


「あ、がっ!?」


 脳震盪を起こしたか、スキンヘッドの男が、白目を剥いて崩れ落ちる。


「こ、この女、強ぇ!?」


 再開発区域、荒れ果てた廃工場で。

 男たちは思い知る。今宵の獲物は、とんだ雌狼であったと。


 緋川セーラ。女番長のあだ名は、伊達ではない。かつて正義の味方を目指していた頃。父に教わった武道は、今も彼女の内に根付いている。


 ただし、荒ぶる喧嘩殺法として。

 彼女に乱暴しようと、この廃工場に連れ込んだストリートギャング達。

 十数人のうち半数が、すでに、その石頭の。

 頭突きの餌食となって地に伏せていた。


「……まだやんのか。あ?」


 セーラ自身にはコンプレックスの元の、鋭すぎる眼光も、こうした時は便利だ。

 燃える炎を放つようなその瞳に、男たちは怖気づく。


 だが。


「な、なめやがって!!」


 ゴロツキの一人が、バタフライナイフを開く。

 さらに、


「おいおい、餓鬼にいつまで手間取ってんだ。さっさと剥いちまえや!」


 卑猥に舌なめずりしながら、仲間たちが集まってきた。


(……ちっ、どうもよくねー状況だな)


 セーラは、心の中で舌打ちする。別に、悪漢どもを成敗するつもりもないし、それを一人で出来ると思うほど己惚れてもない。


 自分は、正義のヒロインでは。魔法少女ではないのだから。

 父と同じで、刺されれば、銃に撃たれれば、死ぬのだから。


 早く、逃げなければ。完全に囲まれるより先に。


 この廃工場に付いてきた時点で、油断があったかもしれない。これしきの人数なら叩きのめせるという甘い見通しが。


(やば、震えてきやがった)


 向けられたナイフの光に、思わず足がすくむ。

 それを悟られないよう、眼光に力を込めて。突破口を見出すべく眼を滑らせたその時。


「あはっ♪ あははははっははははははははは♪ 楽しそうなダンスパーティね♪ 私も混ぜてよ♪」


 無邪気に、冷酷に。少女の姿をした死神の笑い声が、廃工場に響き渡った。



 ・ ・ ・



「なんだぁ、この餓鬼?」


 男たちが素っ頓狂な声を上げるのも、無理はない。

 廃工場の入口、破れたシャッターの間に立っていたのは。


 ニコニコと微笑む、黒髪の少女。この治安の悪いスラム街には似つかわしくない、ひらひらとした漆黒のドレス。薔薇園で紅茶でも飲むのが合うような、ゴシックロリータの少女だった。


「へへ、お嬢ちゃんも、可愛がってほしいのか?」


 バタフライナイフを閃かせた男が、好色な笑みを浮かべ、黒ドレスの少女に歩み寄る。

 その一歩一歩が、死への歩みであることを悟れるはずもなく。

 乱暴に少女を犯し、獣欲を満たそうと手を伸ばし……。


「ふふっ♪」


 瞬間。少女の瞳を、悪魔の愉悦が彩るのを見て。

 セーラは、全身の血が凍るように感じた。


(あいつは……)


 まともな存在じゃない。

 悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。悪。

 この世に存在してはならないモノ。死と悪意を撒き散らす何か。


 そんな悪魔でなければ、あんな風に、残酷には笑えない。


「逃げろぉッー!!」


 自分でも訳が分からないうちに、セーラは叫んでいた。


「……え?」


 その必死な声に一瞬男が振り向いたその時。

 黒ドレスの少女は、冥府の月のように、さらに口角を狂気の笑みの形へ吊り上げた。


「……固有魔法、『蹂躙魔弾ジェノサイドバレット』」


 銃声。ああ、それは銃声。

 一瞬で。廃工場は地獄へと。血の世界へと。



 


 



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