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魔法少女デュエルブラッド  作者: 伯爵炎(バーニング)
第2話 炎翼の魔法少女
16/16

〈8〉

 昼休み、風の冷たい屋上で。


「……来たわね」


 セーラは、黒崎那由他と対峙していた。

 黒ドレスの殺人鬼「蹂躙の魔法少女」、黒崎那由他。

 けれど今は、無害な一高校生にしか見えない。

 ……その瞳の底に輝く、嗜虐的な光を除いては。


 間合いを取る。

 今はどちらも、魔法少女に変身はしていない。


「心配しなくても、今やり合うつもりはないわよ。『伝令者メッセンジャー』から聞いてないかしら、変身するにしたって、魔力の高まる夜でないとね」


「……そうかい。じゃ、今ならあんたを叩きのめせるわけだ」


 魔法無しの喧嘩なら、自分が勝つだろう。セーラは揺さぶりを掛けてみるが、


「ふふ、やってみる?」


 唇をぺろりと舐めて、好戦的な獣の眼をする那由他。

 その表情に、セーラはここでの決着を諦める。

 魔法少女の契約をして、まだ1日。本当に夜しか変身できないのか、試してはいない。


「それで? アタシに何の用だ?」


 脱色した長い髪を掻きながら、セーラはため息交じりに聞いた。


「あら、貴女の方こそ私に、色々聞きたいのではなくて?」


 屋上のベンチに座り、弁当を広げながら那由他。

 のり弁に、ウインナーや玉子のシンプルなおかずだ。


 一緒に座ることはせず、フェンスの金網に背中を預けてセーラは、買っておいた焼きそばパンを食い千切る。緋川セーラが雌オオカミに例えられる所以の、ワイルドな仕草だ。


「100人の魔法少女で戦って、最後に残った1人が奇跡を手に入れる。そんなルールだったな」


「そうよ、その為に皆、あの白いのと契約したわけ。私は2か月前ね。古い子だと、10年前らしいけど」


 玉子を箸で口へ運びながら、那由他は答える。どうやら本当に、今戦うつもりは無いらしい。


「……ああ、言っとくけど。主催者のコトとか聞いても無駄よ。私も知らないから」


 セーラの視線に、那由他は箸を振りながら、


「他の子の情報だって、期待しないでね。厄介な奴が『殲光』と『鉄騎』、ってくらいかしら、私が分かってるのは。でも、それもどうでもいいよね?」


 うっとりとした瞳で、


「どうせ貴女、私に殺されるんだし。……ああ、早くハラワタ引きずり出してあげたいわぁ♪」


 そんな挑発は無視して、セーラはパックの牛乳をストローでひと啜り。


「あんたも、願う『奇跡』だかが有るってわけか」


「あら、聞きたいかしら?」


 悪戯っぽく、と呼ぶには凄惨過ぎる那由他の笑みに、セーラは首を横へ振る。


「……やめとくぜ。どうせ、ろくなものじゃないんだろ」


「あはっ、あははははははっ♪ 賢明よ、それが」


 腹を抱え、耳障りに笑う那由他。

 やっぱりこの女からは、嫌な臭い……血の臭いがする。

 あまり仲良くはなりたくない……必要なければ関わりたくもない手合いだ。


 それでもセーラは、1つだけ聞かずにいられなかった。


「あんたが、学校を休んでた理由だけど。両親が、この銃殺事件の最初の被害者だっていう……」


 ごくり、と息を飲んだ。


「あんたが、殺したのか?」


「……調べたのね。先生にでも、聞いたのかしら」


 那由他の瞳に、冷たい憎悪が危険な光を走らせた。

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