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魔法少女デュエルブラッド  作者: 伯爵炎(バーニング)
第2話 炎翼の魔法少女
11/16

〈3〉

 プロミネンスセイバー!

 説明せねばなるまい。100人の魔法少女たちには、各自に専用の戦闘デバイス、すなわち武器が与えられている。それらは、各々のコスチュームのいずこかにセットされた、宝玉の内部に格納されている。


 セーラの場合は右腕のブレスレット。

 音声認証により、彼女の呼ぶ声に応え! 今、その姿をあらわす!!


「来い、『プロミネンスセイバー』-ッ!!」


 右腕を包む、炎の竜巻! 渦巻き、火の粉を散らしながら!

 やがてその火は、武器の形状を取る。


 巨大な棒状のそれを、セーラは一振り。

 風が。赤き風が吹いた。


 中から現れたのは、斧槍ハルバード

 機械的で武骨なフォルム。それ自体が発熱し、朱色に眼を灼くような輝きを放つ刃。

 実に獰猛で攻撃的な印象だが、特筆すべきはそこではない!


 おお、我々の目は狂ってしまったのか。

 柄だけでも身長の3倍はあろう、遠近感を無視するような、異常なまでに巨大なサイズ!

 その重量、実に150㎏超。神話の武具すら凌駕する驚異の重量だ!


「な、なんなのよ、それは……」


 プロミネンスセイバー。緋川セーラの凶悪なる専用デバイスの威容を前に。

 黒崎那由他なゆたは、怯えて後ずさる。


 無理もない。これは、およそまともな武器にあらず。


 この斧槍ハルバードは、斬る武器でも、叩き潰す武器でもない。

 受ければ、死ぬ。かすかでも触れれば、死ぬ。そうした類の物体。

 破壊する、粉砕するという概念が形を成した、恐るべき圧倒的殺戮兵装なのだ!

 神をも焼き殺す刃、その姿の前には機関銃といえど、おお、まるで玩具オモチャのよう。


 灼熱する刃、非常識なリーチ! これぞ!

 緋川セーラが絶望を切り裂くために得た、運命のつるぎである!


着火イグニッション、プロミネンスセイバー!!」


 こいつなら、やれる。どんな相手とだって、戦える。

 その確信を胸に、セーラは吠える。自らの魂とデバイスをリンク、再び炎の翼を広げ、斧に、刃に、心に火を点ける。


 ああ、その勇姿。

 火炎の風。激情の風。廃工場に立ち込めていた死の臭い、血の臭いを、強引なまでに吹き飛ばしていく、躍動する生命の風よ!


「来な、黒崎那由他ッ! こいつでアタシは、全てを焼き切ってやるッ!!」


「……やってみろぉッ!!」


 銃弾、銃弾が! 那由他の両手のマシンガン、周囲に浮遊するマシンガンが。

 秒間数千の殺戮の銃弾嵐を吐き出す。


 しかし。


「らぁぁぁぁーッ!!」


 ひと薙ぎ! ただひと薙ぎで、その全てを焼き切る。

 プロミネンスセイバー、これがプロミネンスセイバー! 炎の斧槍ハルバード!!


「行くぜッ!!」


 軽やかに、そう、本来重量的にあり得ないことだが、この150kg超の得物を軽やかに頭上で回し、炎の嵐を呼び起こして。セーラは斬りかかる。


「ぅラぁぁぁぁーッ!!」


「じょ、冗談じゃないッ!?」


 それこそ冗談のように巨大な刃が、頭上へ振り下ろされるのを。

 那由他は身を捻り、間一髪躱す。美しい黒髪の先端が数条、切断され燃える。


 そのまま床を粉砕する斧槍ハルバード、だが、それで終わるような魔法少女の武器ではない。


「……な!?」


「何て威力だ!?」


 黒崎那由他と、観戦するメッセンジャーが驚愕の声を上げる。

 破壊の刃プロミネンスセイバーは、床を粉砕するに飽き足らず! ヒビを入れ、叩き割り!

 小惑星激突のごときクレーターを作ったのだ!


 無人の廃工場が、地響きを立て揺れる、揺れる、そして崩壊する、崩れ落ちる!


「翼よ!!」


 落ちてくる瓦礫、天井を炎の翼で焼き尽くし、セーラは夜空へ舞い昇る。月を穿つ、紅蓮の弓矢のように! そして急降下、再び那由他へ!


 斬れ、焼き尽くせ。あの悪意を。滾る。炎が燃え盛る。

 魔法少女。いつか夢見た正義のヒロイン。

 その理想にたどり着くために。緋川セーラが炎となるために。


 討て。悪しき魔法少女を。殺戮の悪鬼を討て!


「終わらせてやるッ!!」


「ふざけるな、私はこんなところで……ッ!!」


 那由他もまた、ドレスのスカートの下、ガーターベルトに手を伸ばす。

 そこには、彼女の専用デバイスを収納した、黒の宝玉!!


「こんなところで、終わってたまるかぁぁぁーッ!!」


 少女の憎悪を、殺意を吸収し、闇の輝きを放つ宝玉。


 赤き正義の炎と、憎悪の黒き輝きが! ああ、世界を染めてぶつかるのか!!


 ……だが、その時。


「二人とも、今はここまでだよ」


 制止する、冷静な声は白き獣(メッセンジャー)

 月の夜空を背景に動きを止めるセーラと那由他の耳に。遠くの市街から、パトカーのサイレンが風に乗って聞こえてきた。



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