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閑話:???視点

 今日はカルバント帝国の建国200年記念日でありこの国のいたる所でパレードや催しものがなされている――――そのため国の警備も甘くなりよそ者が簡単に領地内に侵入できる。

 


(ああ、この国はどれだけ平和ボケしているのだ、俺達はこの国の民、いや人間に迫害され苦しめられ続けているというのに)



 俺達はいつかこの手で奴らを追い出し、この地を安住の地にするため日夜動いている。そうしてこちらはいつも様子を伺い張りつめているというのに、この国の民がたかだか祭りの雰囲気に沸き立っている能天気さには呆れさせられる。



(しかし、この国に攻め入るにはまだこちらの力が足りぬのだ)



 この地には圧倒的に人間が多い。それでも俺達は徐々に仲間を増やしいつか皆が安心して暮らせる地を手に入れなければならない。



 今日は祭りの人ごみに紛れ宿敵ディートハルト国王の顔をおがむために城の領地内まで侵入したのだが、どうやらこちらにはいないようだ。



(仕方がない、日を改めるとしよう)




 そう思い、俺は道を引き返そうとしていた。 その時だった――――





「あるぅ日、森の中、くまさんに~出会たぁ~♪」





 鈴が鳴るような愛らしい歌声が聞こえ、そちらに目を向けると、1人の美しい少女がこちらに歩いてきた。俺はその姿を目で捉えた瞬間、少女から目が離せなくたった。





 少女もこちらに気がついた。





 俺は悲鳴をあげて逃げるか? と思った。しかし少女は声を上げるどころか俺をみても表情一つ変えなかった――――そう、虎の亜人種であるこの俺の姿をみても。


 人間は、俺達獣の血が流れる亜人種を嫌悪・恐怖し、ひとたび亜人種が人目に晒されれば大勢で排除しようとして来る。人間の、ましてや小さな少女であれば、この獣のような姿をみて泣き叫び逃げ惑わぬわけがない。そう思ってみていたのだが……




 この少女は微動だにしない。




 俺はこちらから声をかけた。




「逃げなくてよいのか、人間の子よ」




「何で?」



 すると、少女は、どうして逃げなくてはいけないの、と、聞き返してきた。




「……お前は俺が恐ろしくないのか?」




「うん」



 


 先ほどから全く表情を変えず、少女は答える。俺はゆっくり少女に近づき、その頬に触れた。間近で見る少女の美しさに圧倒されながらも、その瞳を見つめるが少女の瞳に恐怖の色など一切なく、晴天の如く澄み切っていた。



 

 俺は、訳も分からず胸が熱くなった。




「お前は美しいな」




 見た目だけではない、その内側に秘める何かに感嘆させられた。しかし、少女は何を言われたかわからないとばかりに首をかしげる。自分のことに無頓着なのだろう。





「お前の名を教えてくれ」





 この少女のすべてが知りたい、俺の中の獣がこの少女を欲して咆哮をあげている気がした。




「レティ」




(ああ、この少女の名前はレティと言うのか……)




 俺は体にその名を刻みつけるように繰り返し少女の名を唱えた。




 今すぐレティを俺のものにしたい、しかしこの城の領地にいるレティは明らかに王族か貴族の息女に見える。このまま彼女を攫って、もし俺が、いや、亜人種が王族の子を誘拐したと知れれば奴らはこれをきっかけに俺達を総攻撃をしてくるかもしれない……今はまだ衝突は避けなければならないのだ。




「レティ、俺の名はセガール、どうか次に会う時まで覚えていて欲しい」



 俺は不安になりながらもそう告げると、レティはしっかり応えてくれた。



「うん」



 名残惜しいが今は仕方あるまい。いつかまた、会いにくる、その時は――――


















必ず、お前を手に入れる

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