第5話:レティ10歳 「ある日、林の中、虎さんに出会った」
はい! 10歳になりますます美少女お姫様っぷりに磨きがかかったレティちゃんです。
今日は国の建国200年を祝い祝賀祭が開かれ国中がお祭りムードらしい。私はいつも通り部屋から出してもらえずメイドさんからその話を聞いた。家族の皆は式典に参加するため城を留守にしており城には現在私と僅かな兵士やメイドだけが残っていた。
そして私はこれ幸いと護衛の目をかい潜り、数年ぶりにひとりで城の外に出られ城の敷地内にある林の中を散策することに成功した。
(ああ、自由にできるって本当に楽だわー、うん、気分がよいので唄でも歌いますか!)
「あるぅ日、森の中、くまさんに~出会たぁ~♪」
ノリノリでお馴染みの歌をうたっていると――――
ん?
え!?
ちょ!!
何故か、目の前に虎がいた。
アレ? 何でこんな所に虎? えっこのまま私死ぬの? あっ、本当に死ぬ前に死んだふりすればいいんだっけ……いや、それはクマにしか通じないか! ちょ、マジどうすればいい? 誰か助けて!
「逃げなくてよいのか、人間の子よ」
(わぉ! 虎が喋った! ん? よく見たら顔だけ虎で体は普通の人間みたい・・・)
「何で(顔だけ虎なの)?」
「……お前は俺が恐ろしくないのか?」
「うん(普通に恐いけど)」
虎さんは私の方にゆっくり近づいて来て、私の頬にそっと手を添えた。
(や、マジ、何なの? これって何かの異世界イベントか何か?)
どうすればよいのかわからず、ジッと私の瞳を見つめてきたのでこっちも見つめ返してやった。
「お前は美しいな」
は? いきなり何ですか。確かに私が超絶美少女なのは自覚ありますけど←
首を傾げる私に対し、虎さんは私からゆっくりと離れた。
(ふう、食われるかと思ったよ。びっくりさせやがって。)
「お前の名を教えてくれ」
「(えー、何で教えなきゃいけないの? でもいきなり怒って襲われても嫌だしなー)……レティ」
名前を教えると、レティ、レティと何度か私の名前を口ずさむ虎さん。そして、何か考えこんだあとに、自分の名を告げてきた。
「レティ、俺の名はセガール、どうか次に会う時まで覚えていて欲しい」
「うん(? 何でまた会うことになってんの)」
それだけ言い残すと、虎さんは林の奥に消えて行った。
(・・・マジびっくりなんですけどー。もしかして、彼が前に聞いた亜人種ってやつなのかな? はじめて見たけど――――今改めて思うと、ちょっとカッコよかったかも? 私、虎とか豹とかネコ科の動物好きなんだよね。や、一番好きなのはワンコだけど!)
そのあと私は、昔飼っていたワンコ達に思いをはせながら、他に亜人種ってどんなのいるのかなーとか、もしかしてシベリアンハスキーみたいなのいないかな、いたら是非お友達になりたいなどと考えていた。
――――そう、私はまだこの時、亜人種のことについてよく知らなかったのだ。
(ある日、林の中、虎さんに出会いました。)