第4話:レティ5歳 「5歳のハローワーク」
退屈なお姫様生活にもだいぶ慣れてきた私レティ、只今5歳。はじめは部屋から抜け出して城を探索出来ていたが、お付きの護衛を増やされメイドさんがさらに片時も離れず傍にいるようになって完全にひとりの時間がなくなった3歳の夏から今に至る……
(今では周囲の視線に晒されても全然気にならなくなったわよ! むしろ360度どの角度からでも来い! こちとら無我の境地を習得済みよ!)
散策さえ出来なくなった私は、日がな一日妄想したり、たまに目を開けたまま寝て過ごした。
(そして私の平均睡眠時間は15時間!)
おかげ様で(?)私の表情筋は機能停止をおこし、遂には完全なる無表情になった。意図的に表情を作るには全神経を総動員しなければならないし、笑顔なんてつくったら次の日には顔面筋肉痛になる(笑)
今ではみんな私を「レティ様の美しさはもはや人間のものではない」「本当に、動かなければ精巧なヴィスクドールのようだ」「レティ様のレアな微笑みをみたものは心臓が止まってしまう」とか言っている。
(へぇ…心臓本当に止まるか試してみますか? ニッ……ッ、ぐぁ、無理、頬筋が攣った!)
しかし転生というファンタジーを体験したというのに、毎日ボーッとして過ごすだけとは……いや、魔王討伐頼まれたり壮大なスケールの話もってこられても困るけどね。
ちなみにこの世界に魔王は存在しないが、獣と人間の血が流れた亜人種というものがいて度々人間と亜人種の間で争いがおこってるとかなんとか。 私は実際に亜人種の方と会ったことがないので詳しくはわかりませんが。
自慢じゃないけど私、前世は二流大学の平凡学生だった。それに現在進行形で運動神経皆無・知能も前世のままだ。そりゃぁ、同い年の子どもと比べたら今の私はチート無双俺つえーできますけど、子ども相手にやってもねぇ……
今は何もなく平穏に暮らしているが、転生というファンタジーを経験したからにはいずれ何かのイベントに巻き込まれる可能性は大いにある。
そうなった時、今から下手に動いてチート認証されてみ? 「お前はチートだから、すべて任せておけば問題ない、さあ、私たちのために戦ってくれ」とか言われてイベントに駆り出されたらたまったもんじゃない!
可もなく不可もないように、「姫様って強かったっけ?」「えっ、あのお姫様? 何か特殊な才能とかあった? 印象にないな」「姫様は人より賢いかって? ないない、平凡な姫様だぜ(笑)」くらいの認識を持っててもらわないと困る。だって実際にただの平凡な一般人なんだから。
(ああ、何かの勇者パーティとかに駆り出されることなく、人間関係のいざこざに巻き込まれず、このまま普通のお姫様として生活してゆくゆくは争いと無縁のどこか小国にお嫁に行きたいもんだわ。)
正妻だといろいろ面倒だから側室になって旦那様にはいい感じで私を放置してもらえたら最高だな。あとは何か趣味を見つけてそれに没頭したい、娯楽がないし自分で小説書いたりするのもいいかも。
あと犬を飼おう、最後はネ○とパト○ッシュみたいに2人で穏やかに逝きたい。
うん、なかなかいい人生設計じゃない←
スリルのある日常なんていらない。
イケメソとの燃えるような恋なんてしたくない。
誰かのために、大事な何かを守るためにとか、そんなことで自分の命をかけて戦うなんて私にはできないしやりたくない。
そうよ! 私の目指すは人生は、怠惰に、楽して生きるよ!
異世界転生のおきまり事項なんて無視!
とりあえず今からよさげな嫁ぎ先をピックアップしとかなくてわ!
5歳レティツィア、将来の安定した嫁ぎ先、探してます。