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閑話:エドワード視点

 僕には3歳になる妹がいる。妹は母上に似ておりその容貌は幼児でもひときわ美しい。その美貌もだが、妹は普通の子どもとはどこか違う。僕は小さい弟達の面倒をみてきたのだが、その弟達の幼少期と比べると妹はとてもおとなしく、子ども特有にある感情の起伏などがみられない。弟達は些細なことでよく癇癪かんしゃくを起していたのに、妹は泣くことはおろかその顔に表情を浮かべることなど滅多にない。まるで表情の変わらないその様はどこか人形めいている。


 いや、人形めいていると言っては冷たい印象を受けるかもしれないが、妹の放つ雰囲気は居心地がよいのだ。落ち着いていてまるで彼女の周りだけ時間がゆっくり流れているかのように錯覚する。


 そんな妹との触れ合いは、僕がこれまで王族の長子として張りつめ、貴族と渉りあってすり減らしてきた精神を癒してくれる。


 妹を遠目にみた者は彼女を表情の乏しい人形の様で大人しいお姫様としてみているが、一度触れ合ってみるとその独特の雰囲気に魅了され、離れがたくなってしまう。


 その魅力に囚われ妹の護衛に立候補する兵士は多く、メイドたちは我こそがと競い合うように妹の身の周りの世話をしている。


 僕たちは妹の信者をこれ以上増やさないようにできるだけ妹を人目につかず部屋から出さないようにしているが、気がつくと妹はいつのまにか部屋から抜け出している。





 そうなると、城の機能が停止する。





 何故なら家族総出で妹を探しまわるからだ。公務中でも関係なく仕事を投げ出して。





 現在、僕も妹が部屋を抜け出したと知らせを受け捜索中なのだが……







「はぁ」



(ああ、今回はここにいたのか)



 草叢を手ではらうと、妹が庭の草花の横に座りこんでいた。





「やぁ、レティ、こんな所にいたのかい」




「エドワード兄様」



 妹はその澄んだ瞳でこちらを見上げてくる。



「またこんな所でひとりになって、危ないだろう」



 僕は妹の両脇に手をいれ抱き上た。



「兄様、おろして下さい」



「ダメだよ、このまま部屋に連れて帰るんだから、みんなレティが部屋にいないって仕事放りだして探しまわってるんだよ」



「……」



 久しぶりに君に会えたのだから、もう少しだけこの温もりを堪能させて欲しい。 


 しかし、レティは何故いつも部屋を抜け出していなくなるのだろう。 レティが退屈しないように、たくさんのヌイグルミや絵本におもちゃをプレゼントしているのに。



「何か嫌なことでもあったの? 誰かに何かされた? 何かあったら僕に言うんだよ」



「えぇ」




 妹は僕を見つめた後、素直に僕に身を任せた。そしてすぐに僕の腕のなかで眠りについた。ああ、この感触に物凄く癒される。


 あまり束縛するのは可哀想だがこう度々城の機能をストップさせるわけにもいない。次からは監視の目を厳しくすることにしよう。














ごめんね、レティ。僕らは君が可愛くて可愛くてしょうがないんだ。

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