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第3話:レティ3歳 「退屈は表情筋を麻痺させる」

 食っちゃ寝、食っちゃ寝してたら、いつの間にかレティは3歳になっていた。


(さすがにもう、自分のおかれてる状況を理解出来たよ……)


 どうやら私は、カルバント帝国の第1王女、レティツィア・マリアージュ=カルバントに生まれ変わったらしい。絶世の美姫であった母マリアーナ王妃の血をしっかり受け継ぎ、髪の色は白銀のようなプラチナブロンド、瞳は父に似た藍色、「3歳にしてこの可憐な美貌、将来は傾国の美女ですな!」と褒めたたえらるような見た目はバッチリ可憐なお姫様になっていた。


 だが、しかし……


 裏では、「姫様は生まれた時から1度も泣いたことがないそう」「まだ3歳なのに子どもらしい我が儘も仰ったことがない」「あまり表情が変わらないので何を考えておられるかわからない」「やはり普通のお子様とは違うようだ」と、噂されている。



(だって、精神は大人なのにそんな簡単に泣けないわよ?  何に対して泣けばいいわけ?  えっ、我が儘言わないっていうけど、メイドさんが毎日何から何まで身の回りのことやってくれるのに我儘言うことなんてないわよ。それに表情が変わらないっていうけど……この世界に娯楽って何もないのよね。日本で生活していたときは毎日ネットで笑える動画とか、2chの腹筋崩壊スレ見て爆笑してたけど、こっちじゃそんなのないし、毎日退屈で……退屈すぎてマジ笑えないから、表情筋がそのまま固まっちゃったじゃない! 私、お箸が転がっても笑える時代はとっくに過ぎてるわよ!)




「はぁ」




 何となく手持ちぶたさで草花をいじっでいると――――




(ガサガサ)




「!」




「やぁ、レティ、こんな所にいたのかい」



「エドワード兄様」





 草叢から金髪イケメソが顔を出した。





「またこんな所でひとりになって、危ないだろう」



 奴はこちらに近づき、私を軽々持ち上げた。




「(ちょっ、)兄様、おろして下さい」



(やめてー! 抱っことか恥ずかしいっての! 精神年齢考慮しやがれ!)




「ダメだよ、このまま部屋に連れて帰るんだから、みんなレティが部屋にいないって仕事放りだして探しまわってるんだよ」



「……(みんな仕事しろよ)」



「何か嫌なことでもあったの? 誰かに何かされた? 何かあったら僕に言うんだよ」



「えぇ(頼むからひとりにしてくれ)」




 この金髪イケメソ君は、カルバント帝第1王子エドワード様、御歳14歳の我らが長男様であらせられる。


 現国王陛下のパピィと王妃のマミィは、男の子が3人続けて生まれたから次こそは女の子をと切望していたらしい。そしてそこに待望の私が生まれたので両親は(こと)(ほか)私を溺愛しているようだ。またお兄様達も初めての妹で年がかなり離れていることもあり両親に負けず劣らずで私を猫可愛がりしてくる。



(溺愛されてるのはわかるけど、私に四六時中警護が張り付いて、私付きのメイドさんが常に待機、皆して日常生活の世話をこれでもかってやいてくるのはちょっと過保護すぎませんかね? これだけ甘やかされたら普通は碌な大人に育ちませんよ! メイドさん、もう3歳なんだからパンツくらいひとりではかせて!)



 これって姫という立場を考えたら普通のことなのだろうか。日本のゆとり教育の名のもとに、ゆるく、怠惰に生きてきた私にとって、煩わしい大学の講義やストレスの多い人間環境から解放されたことは単純に嬉しい。しかし、前世ではそれほど人から注目されることもなく、自由気ままに生活していただけに、常に人の視線に晒されている今の状況はあまり気持ちのいいものではない。



 年齢が幼いこともあり、まだ王族としての教育などは受けておらず、私の日常は絵本を読んだりメイドさん達の着せ替え人形になったり時間を見つけては私の様子をみにくる家族の相手をしているだけという、なんとも退屈なものだ。


 私は、生まれてから城の敷地内を出たことがない。城は周囲を林にかこまれており町までいくにはかなりの距離がある。まるで隔離されたかのような地形のため私は狭い範囲内でしかこの世界のことを知るすべがない。家族に城の外を見たいといっても許可してくれず城から出してくれないばかりか部屋からも滅多に出してくれない。



 だから私は時折護衛の隙をついて部屋を抜け出し城の敷地内を探検しているのだが、すぐに見つかってしまう。




まったく、息抜きに少しくらい城の探検させて欲しい。





退屈すぎて






退屈すぎて






もう私











眠くなってきた。おやすみなさい。













(私の表情筋は、永遠におやすみ中)

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