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第28話レティ16歳:「皆に聞いてもらいたいの。 私は――」

 クリスとの再会を果たしたレティであったが、再会を喜ぶ間もなくセガールとクリスは再び戦闘モードに突入。レティが制止の言葉をかけようとするよりも先に懐かしき声がその場に響いた。


「皆控えよ! ここで争ってはならぬ!」


 切り裂くような言葉の先にいたのは、カルバント帝国国王陛下だった。 


 その言葉にクリスはしぶしぶ戦闘の構えを解くもぎらついた視線でセガールを睨みつけていた。


 陛下がこちらに駆け寄ってくる。レティの姿を全身くまなく見て、その目に安堵の色を滲ませた。


「無事で、よく無事であったなレティ、さあ、パパの胸に飛び込んでおいで!」

 

 さっきの威圧感ある王様の成りを捨て去りデレデレの親馬鹿顔になって両手を開き腰を少しおとして受け止めようとしている陛下。


 その姿をみたセガールは一瞬思案し、問いかけるように聞いてきた。


「……おろした方がいいか?」


「え。うん(おろしてくれるのはいいけど、何、あそこに飛び込めと? こんな大観衆のかなパピィの胸に飛び込んでキャハハウフフー怖かったわービエーンとかやれってか。どんな罰ゲームですかコラ。)」


 おろしてもらったものの、飛び込む気はまったくない。するとその陛下の横をすり抜け、煌めく金髪に年を重ねてなお失われない美貌をもつそのひとがレティに駆け寄りその体を抱きしめた。


「ああレティ、私の可愛いレティ! よく無事でいてくれたわ、きっと生きてるって信じていたけれどあなたのその姿を目にするまで心臓がはりさけそうで私はいてもたってもいられなかった! もうどこにもいかないで、お嫁にだっていかなくていいわ! ずっと王宮で私達が面倒みてあげるから! ああ私の愛しい娘!」


 マミィがぎゅうぎゅうにレティを抱きつぶす。そしてレティのおでこに頬に歓喜の口づけを無数にふらす。

 これまで陛下や王子達に比べてレティにたいするスキンシップが少なかった王妃。レティを立派な淑女にしようと毅然とした姿で接してきたが、そのうちに秘める娘への愛は決してほかの家族に劣るものではなかった。今回レティ誘拐で愛する娘が消えたことが彼女の心の均衡を壊してしまったらしい。わまりの目もくれず熱い抱擁をこれでもかと晒す。

 

 おそらく人類史上最も美しいであろう美貌の親子が感動の再会を果たしている姿に人種など関係なくまわりは胸きゅんさせられた。


 あのセガールでさえ美貌の親子の麗しい姿に「ほう」とため息をもらした。


(マミィからのハグ! 子供の時以来だわ……わわお胸が柔らかい! いい匂いがする! なんていう癒し! ここが楽園か!)


 マミィの抱擁を堪能しながら横目でパピィをみるとしばらく受け止め体制で固まっていたのち、ゆっくりと姿勢を直し、悲しみ、羨ましさ、羞恥さが入り混じった複雑な表情でこちらを眺めていた。


 そうしているうちにアルフォンス兄様とカール兄様がやってきて2人もレティの無事をその手で抱きしめ確認しようとするも亜人種の兵士に行く手を阻まれレティに近づくことはできずパピィと同じようなしょっぱい表情でこちらを見ていた。


「亜人種の方々、いったいどういう目的でレティを連れ去ったのかな。説明してもらおうか!」


 カール兄様がセガールに向かって吠えた。


 セガールが口を開こうとする前にレティが待ったをかける。


「それは私から話す、その方がいいでしょ? ね、セガール(お前が話すと嫁発言とか子作り発言とかおかしなこと言い始めるからな! よけいなことは言わせねーよ!)」


 力一杯セガールを目で制す。それにセガールは頷いた。


(そう、私は決めたんだ。親を亡くした亜人種の子供たちにこれ以上悲しい思いをさせないと。人間が犯した非道な行いで傷ついた亜人種の皆がもう傷つかないように復讐が復讐を重ねる連鎖にならないように私にできる精一杯の行動をするって。だからそのためにこの体で、ない智恵を振り絞って、まわらない口先をフル回転でまわして、使えるこの顔で私は私の自己満足のために行動する!)




「皆に聞いてもらいたいの。私は――」




 さあ、働け表情筋。


 少しでも同情をさそうように。


 彼らの悲しみが伝わるように。


 私のこの気持ちが受け入れてもらえるように。








(私の話を聞けぇぇぇーpart2!)

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