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第20話:レティ16歳 「私の話を聞けぇぇぇー!」

(やばい、頑張って微笑んでみたらそのまま筋肉が固まってしまった! くそっ、このまま固まったまましゃべるしかない。しゃべってるうちに筋肉もほぐれるだろうし。よっしゃー)


「皆さんとこうして話をできる場を用意してもらい、とてもありがたく思います。これまで私達人間は亜人種の方々に対し酷い迫害を行ってきました。種族が違う、見た目が違う、その文化・歴史が違うと、理由は様々だったでしょう。些細なことで傲慢に驕った人間の心理によって迫害を受けた皆さんに今更私ごとき小娘一人の謝罪など何の足しにもならないとわかっています。けれど、言わせてください。みなさんに、あなたがたの家族に酷い仕打ちをしてごめんなさい。許してくれとは言いません。私達は償いをしなければなりません。私は私のすべてで語りかけます。人間と亜人種の共存の道を。人間すべてが皆さんの敵ではありません。分かり合えるのです。だからどうか……」



 レティは人生ではじめてこんなに必至に話した。亜人種に不快な思いをさせないように口調にも気をつかった。こんなに長文を声に出して話したことはない。いつも脳内でマシンガントークしているが声にはでていないので、普段のレティを知っている家族がこの姿を見たら驚愕で顎の骨が外れるほど口がパカーンするだろう。


 そして固まったままの表情筋がツライ。口回りの筋肉が悲鳴を上げてる。あまりの辛さにレティは知らずしらずポロポロ涙をながしていた。


 微笑みの顔に涙を流し必至に訴えるその姿に、話を聞いていたモフモフ戦士たちは胸を鷲掴みにされた。音にすると「ズキューン!」だ。しかし、なんとか絞り出すように彼女の話に返答を返した。


「お、おれたちの恨みはあんた一人が謝ってどうにかなるほど生易しいもんじゃないんだ! みんな人間を滅ぼすことを目標に今日まで生きてきたんだ!」


 その言葉に「そ、そうだよ」「娘っこ一人に謝られたからって……な」まわりもザワザワと同調の言葉をもらす。



(そうだよね。わかってるよ、私ひとりの言葉じゃどうしようもないことだって。でも私が言わなくっちゃ)


「私は、みなさんの味わってきた苦しみも悲しみもわからない。想像はできるけど、実際はもっともっと酷いものだったと思います。でも、私は知っています(・・・・・・)。争いが何を生むか。憎しみに憑りつかれた先に何があるのかを知っています。人と亜人種が争い、たとえこの国の人間すべてを皆殺しにできたとしても、カルバント帝国の他にも周囲にはたくさんの人間の大国があります。この土地を一時的に手にいれたとしても待っているのは他国とのさらなる争い。これまで一定の距離を保っていた戦いとは違い他国も参戦すれば大規模な殺戮が行われるでしょう。それでも戦いますか、人間を滅ぼしますか、終わりのない争いの連鎖を望みますか」


(わたしは知ってる。多くの小説、漫画、ドラマ。いろんな物語を知っている。争いはいつだって悲しい結末しかないことを知っている。復讐はさらなる復讐を生み恨みの連鎖はどこまでも続くということを)


 レティは元ヲタク女子大生。レティはいろんな分野を幅広く愛する寛容なヲタクだった。どんな分野のものも忌避なく手をだした。浅く広く。あまり深入りせず。あまり感情移入はしない方だった。だからこそ第3者視点で冷静にツッコミをいれていた。正義を愛し、悪を愛し、善悪のなさをも愛した。だから人間を憎む亜人種が正しいと思うし、亜人種を迫害する人間の気持ちもわからなくはない、両者のことがよく見えているといっていいだろう。


 レティの言葉に黙る亜人種達。しかし、「だって、じゃどうすれば」「戦う以外の方法なんかあんのかよ」ぼそぼそ小さな声で言い合う。


 セガールがこちらに歩いてきて私の隣に立つ。私の顔を何故か自分の袖口でゴシゴシこする。


(わっぷわわ、なんで顔こするのよ!)


 セガールにとったら優しくしてるつもりだろうが非力なレティにとったら結構な力で顔をふかれた。乱暴にふかれたおかげか、筋肉がほぐれいつもの表情に戻った。そしてわたしの顔をみてどこかホっとした様子のセガール。そして言い放った。


「俺は人間を滅ぼすことを望まない。俺はこのレティと契りをかわし、人間との共存を求める!」


(おいいいいいいいいいいい、ここでそれいうかあああああああああああ)



「「「「「まじですかあああうおおおおおおおおおおお」」」」」

「そんな、そんなことがああああああああああああああああああ」

「人間と亜人種が契りを結ぶなんて、しかも帝国の姫とだとおお」

「セガール様ロリコンだったんですねええええええええええええ」



セガールの言葉をきき、一斉に亜人種達が咆哮を上げ騒ぎ出した。



「み、みなさん、あのちょ、ちがくてあの」


(だめだ、皆雄叫びあげてて私の声かき消されてる……わたしセガールと結婚するつもりないですから! 違うから、話し合い、話し合いで人間にも争わないよう呼びかけていこうとって……っちょっとおおおおおお)


 ドヤ顔のセガール。焦るレティ。騒ぎだす亜人種達。


















(みんなー私の話を聞けぇぇぇー!)

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