閑話:セガール視点
「セガール、私皆と話がしたい」
部屋に入るなり、レティがいきなり言い出した。
「皆とは?」
グレイ達のことだろうか。
「ここにいる亜人種の皆と話がしたいの」
「レティ……亜人種には人間を心から憎んでいる者がほとんどだ。グレイ達のように話ができるのは極一部の者だけなんだ。だから……」
だからおそらくレティに会ってもまともに話はできないだろう。これまでの恨み憎悪を言葉にしレティにぶつけてくるだろう。レティに傷ついて欲しくない。何物からも守ってやりたい。だから無理だと会わせることはできないと言おうとしたのだが
「だからこそだよ。お願い」
「……」
お願いされてしまった。
「(うるるん視線)」
瞳がうるうるしている。宝石のようにキラキラしていて美しい。舐めたら甘そうだ。しかしその瞳に込められているのは欲や媚ではなく、何かを決意したとても強い想い。この瞳に見つめられると従わなくてはならない、そんな力がある。
「わかった。皆を集めよう」
「うん、ありがとう」
わずかばかりレティの表情が明るくなったように感じた。あまり表情を変えないが近くにいるとその機微は読み取れるようになった。思考はまったく読み取れないがな。
「いったい何を話す気なんだ?」
「ん、今後の私達について」
「……ほう」
今後の私達についてか。いったいどんな話をするのか。俺達の婚姻について認めさせようということだろうか。誰が認めずとも、何の障害があろうともレティは俺のものにするつもりだ。
まあいい、とりあえず集めれるだけ集めて話をきこう。
数時間後、皆は1つの部屋に集まった。任務についているものもいるため全員ではないが9割くらいは集まっただろう。レティに目をむける。
彼女は小刻みに震えていた。さすがにこれほどの亜人種を目の前にし恐怖を感じたのだろう。
「大丈夫か? 震えているぞ」
「いいえ、大丈夫じゃありません。けど……話をしなくては」
「そうか」
その姿、なんと健気で、凛々しく、華麗に咲き誇る花のようか。やはりこの娘はほかのどんな人間とも違う。肉体的強さじゃない、内からあふれるその力強さは何ものにも得難いもの。
レティは一歩一歩力強く歩き、亜人種の前にでた。
「皆さん、はじめまして。私はカルバント帝国第一王女レティツィア・マリアージュ=カルバントです」
そしてにっこり微笑んだ。
初めてみた微笑み。すべてを魅了する圧倒的なまでの美しさ。種族など関係なく、目が離せない。目の前で起こった小さい奇跡。俺でさえその衝撃で体が一瞬動かなくなったのだ。先ほどまで人間の小娘が何を語るのだ憎々しげに向けられていた視線が驚愕のものへと変わった。場は静まり返っている。
さて、俺のお姫様はこれ以上何をしてくれるのだろうか
どうかこれ以上俺以外を魅了しないでくれという期待はきっと裏切られるだろう




