第2話:レティ0歳 「こっち見んな!」
再び目醒めても、全く状況は変わっておらず私はみんなにレティツィア様と呼ばれる乳児になっていた。
え、レティツィアって私のことですか?
――うん、レティツィアって私の名前みたい……全国のレティツィア様、変な名前なんて言ってスミマセン。改めて聞くと、とっても素敵な名前(ぇ
ちなみに、私を産んだらしい美人なマミィと、鬚面のダンディなおっさん(おそらく私のパピィ)は私のことを愛称でレティと呼んでいる。
マジで、この状況誰か説明してくれないかな?
これではまるで転生小説の主人公みたいな状況だ。私は転生モノの小説が好きでよくサイト巡りをしていた。これまで何度か「あー私も転生してみてー!」とか思ったこともある。もちろん冗談でだが。
マジな話なら転生なんてお断りしたい。だいたい私は転生モノのテンプレである様な子どもを助けようとして車に轢かれるなんて芸当はできないし、そんな勇気や正義の心は持ち合わせていない。しかしほかの理由で死んだ記憶もないし、転生させてくれる神様に会った覚えもない。
やはりまだ夢を見ているのだろうか? それにしては……長い夢だな。
夢であるはずなのにこの体、お腹は空くし尿意も感じる。体が触れている周囲の感触はリアルであり、夢から目が覚めるような気配は一向にない。加えて意識はこれまでにないくらいにはっきりしている。
「あうぅ~(くそっ)」
頭の中はクリアだが、実際には口は回らないし体は自由に動かない。やっぱりこれは夢じゃない……つまり、転生したってことなんだろう。
徹夜でレポート書いていて、少しだけ仮眠をとるつもりなだけだったのに、どうしてこうなった。
(やべっ、そういえば、私、レポート書きながらネットで18禁サイト開いてそのまま放置してた気がする! あのままの状態だったら親に見られてるんじゃない!? うおおおおやばいって! 頼む! 私の嫁! いつもフリーズして書きかけのレポート削除してたでしょ!?、いつも通り自動で電源OFF発動しててよ! 今回の書きかけレポートは削除してても許すから! うをおおおおおおおお!)
軽くパニックになって手足をバタつかせる。
「もう、レティちゃんたら、そんなに動かないの! おむつ変えられないでしょっ」
「あうぅ」
(――――マミィ、今は前世の心残りに浸らせて、お願い。前世の生き恥に悶えてるのに、いい年した大人が現在進行形でおむつ変えられるダブル精神攻撃のコンボ……私の人としての尊厳はどこいった! いっそこの記憶を消しさってくれ!! 私のライフはもうゼロよ!!!)
「はーい奇麗にしましょうね。本当にレティちゃんは泣かなくてえらいでちゅねぇ~」
「むぅ」
(大学生になるまですくすく健康に成長した成人済みのレディは腹が空いたりトイレ行きたくてなっても泣けないのだよ……いや、今は赤ちゃんだけどさ)
しかたなくママンに身をまかせ、おしりを拭いてもてっているのだが……
だがしかし、
是非言わせてもらいたいことがあるんだが。
「レティのおしりはプリプリで、かぶりつきたくなるくらい可愛いなぁ」
(まず、パピィがキモい。めっちゃ顔デレデレしてるし、発言が変態くさい。)
そして――――
「この娘が僕らの妹なんだね」
「……天使」
「ちっせー」
(お前ら誰だっ! 今こっちは排泄中だぞ!)
マミィにおむつを替えられ、近くでパピィがニマニマし、3人の男の子がこちらをキラキラした眼で見つめている。
ひとりは金髪碧眼のマミィによく似た少年。あとの二人は黒髪で目の色は藍色、どことなくパピィに面影がある子達だ。黒髪の一人は背が高く大人しそうで、もう一人はまだ幼くやんちゃそうな顔つきをしている。
きっと私の兄弟達なんだろう。赤ん坊の私に興味津々なのがありありとわかる。
わかるのだが。
(この! 乙女に対するデリカシーのない奴らめ!)
とりあえず、お前ら――――
「こちぃみんにゃー(こっち見んな!)」




