第19話:レティ16歳 「動き出せ表情筋!」
(とりあえず、「レティちゃん計画☆目指せ亜人種と人間仲良しこよし平和な世界で楽しく怠惰に老後をおくろうぜ! うなれ私に秘められたチートよ! 動き出せ表情筋! ブチやぶれ悔恨の歴史パート1」を脳内でまとめてみよう……作戦名長いな。ま、いいや。これまでの歴史を振り返ったって人間側が圧倒的に悪いことは覆しようのない事実。人間にはその自覚なし。まずはそこをわかってもらわないと。亜人種は迫害されて当たり前っていう意識を正さなきゃ。そして亜人種側だけど、みんながみんな人間を憎んでるわけではないみたい。けど大半が人間なんて滅んでしまえと思ってる。共存の方法が一番いいのだと、争わないことでのメリットを争うことでのデメリットをわかってもらうしかない)
突然なんの理由もなしに転生した平凡な女子大生だったレティ。特別な知識はない、戦うための力だってない。勇気もなければ聖女さまのような無差別の慈悲深い心も持っていない。しかし転生したことで望んでもいなかった人外な美貌を授かった。普通の女なら喜ぶことなのだろう。もしも美貌に加えて己の身を守るための力がセットであったなら喜べた。魔法が使える、剣術や武術が優れている、戦わずとも戦術を考えられる知能がある、そういった戦える力があるなら、どんなアクシデントに巻き込まれようと対処できる力があるなら優れた容姿を喜べるだろう。
だか美貌だけ。これまで生きてきた世界とは全くことなる異世界で、美貌だけあってどうする。美しい容姿は人の目を引く。その美しさを良しとするものは愛でるだろう。しかし嫉妬、憧れ、嫌悪、執着、依存。その存在に必要以上のトラブルが付きまとう。対処できる力がなければ喜ぶことなどできない。
戦うための力がないレティだが、彼女にはチートに匹敵する素養が1つある。そしてそれこそが彼女の武器をなりうるのだ。
◇◇◇
モフモフ天国から離れ、最初に目を覚ました部屋で一人悶々と考えていたレティ。どう行動に移せばよいのか。 話を聞いてもらえる機会は与えてもらえるのか。そして話をまともに聞いてもらえるのか。自分から誰かのために、何かのためにとか行動したことないからドキドキしてしまう。でも、やらなければ。
扉が開く音がした。セガールが部屋に入ってくる。
「セガール、私皆と話がしたい」
「皆とは?」
「ここにいる亜人種の皆と話がしたいの」
「レティ……亜人種には人間を心から憎んでいる者がほとんどだ。グレイ達のように話ができるのは極一部の者だけなんだ。だから……」
「だからこそだよ。お願い(たのむぜええええ必殺上目使いしてあげるからあああ)」
「……」
「(うるるん視線)」
「わかった。皆を集めよう」
「うん、ありがとう(よっしゃああ、がんばるぜ!)」
「いったい何を話す気なんだ?」
「ん、今後の私達(人間と亜人種)について」
「……ほう」
数時間後、レティは広い部屋へ案内された。その部屋へ一歩踏み入れてみた光景は圧巻だった。おそらく数は100にも満たないだろう。さまざまな種類の亜人種がそこにいた。大人の亜人種たちは皆屈強の戦士のような風格でものすごい威圧感があった。普通の人間がこの場にいたなら気絶しているだろう、おしくは精神異常をきたしているだろう。恐ろしい獣の群れにたった1人の人間がいるのだから。だが、レティは怯まない。恐れない。むしろ興奮している。
(ふおおおおおおおお! すげえええええええええ)
ぷるぷるふるえるレティを見て、さすがにこれほどの亜人種に恐怖を感じたのだろうとセガールは声をかける。
「大丈夫か? 震えているぞ」
「いいえ、大丈夫じゃありません。けど(あのオオカミ面モフりてええ、いやんあのキツネさんの毛並素敵んさわらせてえええええんっと、ヤバイ、落ち着け自分いったい何しに此処に来たんだ思い出せ、は、そうだ)話をしなくては」
「そうか」
(今は我慢、ガ、マ、ン。あとで仲良くなったら触らせてもらうんだ。だから待っててねモフモフどもめ!)
レティは一歩一歩力強く歩き、亜人種達の前にでた。
「皆さん、はじめまして。私はカルバント帝国第一王女レティツィア・マリアージュ=カルバントです」
そしてにっこり微笑んだ。
(あれ、主人公の表情筋って機能停止してるんじゃ……?)




