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閑話:???視点

 長年続いている亜人種と人間の間に生まれた深い憎悪の感情。俺達の住処を奪い、略奪し、平然とこの地に君臨した人間。住処を追いやられ、居場所をなくし、身を潜めながら暮らす亜人種。肉体的には俺達亜人種の方が圧倒的に優れているというのに、何故俺達が人間に屈辱を味わせられてきたのか。それは――――人間に優れた兵器が存在したからだ。




 亜人種よりも人間の方が何倍も数が多い。しかし問題は人員の数の差ではない。生身の人間など10、20人いたところで屈強な亜人種の前では赤子のようなもの。問題は兵器なのだ。俺達の使う切れ味の鈍いただの鉄の塊のような棒とは比べ物にならない鋭い剣、火を噴く銃、大きな鉛の玉を打つ大砲。そういった武器の差が、人間側を優位に立たせていた。 




 だが、人間に武器の面での優位がなかったらどうか。答えは簡単だ。武器のない人間など簡単に俺達で制圧できる。 



 そして、俺達は時間をかけて遂に武器を手に入れた。人間が俺達に使う兵器と同じ、鋭い刃の剣、銃、大砲、爆薬。 



 俺は決して人間を滅ぼしたいわけではない。俺は亜人種の皆が安心して平和に過ごせる居場所が欲しいだけだ。 



 

 レティと出会い、人間すべてを憎んでいた頃の愚かな俺はもはや居ない。俺は決意したのだ。




 年頃になり、ますます美しくなったレティ。彼女の魅力は種族など関係なく惹きつけてしまうに違いない。美麗な顔の表情は全く変わることがないが、彼女の瞳に秘められ強い力は言葉よりも雄弁に彼女の心情を物語っているのだろう。無表情さと相まって彼女に見つめられると不思議な感覚に陥ってしまう。物怖じせず堂々とした風格。まさに王族の器。人を惹きつけてやまず自ら膝を屈したくなるような存在は彼女をおいて他にはいないだろう。



 



  



 




 思考に耽るのもたいがいにして、そろそろ彼女の様子を見に行かねばな。 慎重に事を運んだつもりだが、少々手荒になってしまった。もうレティは薬が抜けただろうか。グレイに任せているから警護は大丈夫なはずだが……。まさかグレイが襲いかかってはいないだろうな。いや、グレイはそんなことをする心根のヤツではない。そんなヤツではないんだが……。心配だ。 


 レティの眠っている部屋の扉をノックし、中に入る。


「グレイ。レティの様子はどうだ?」


「セガール!」


 中に入るとレティはすでに目を覚ましていた。薬による後遺症はないだろうか。あれからだいぶ時間もたっている。腹も空いているだろう。


「あぁ、レティ、目を覚ましたか。先ほどは手荒にしてすまなかったな。どこか具合の悪いところはないか? 腹は空いてないか? 何か温かい飲み物でも持って来させよう。おいグレイ。グレイ? いつまで固まっているんだ。お前まさか……」


 案の定、グレイはレティに魅入っていた。レティの魅力に惹きつけられぬ者などいないだろうが、グレイ1人を警護につけたのは失敗だったか。いや、他の者が一緒にいても同じか。仕方がない。


「はっ! いや、悪い。お前の言っていた以上にこの娘があまりにも綺麗でつい、な」


「馬鹿者が。レティの食事の準備を指示してこい。今すぐにだ」


「りょーかぃ!」


 レティに見惚れるグレイを部屋から追い払った。いくら見惚れていてもお前にはやらんぞ、グレイ。


 数時間ぶりに意識のある彼女を見つめる。やはり眠っていて人形のような彼女よりも、目をあけ動いている彼女の方が何倍も美しい。宝石のような瞳は強い意志を宿し煌いている。


「答えて。ここは何処なの? 何故私を誘拐したの?」


「ああ。それは話すと長くなる。もうすぐ夕食だ。食事をしてからゆっくり事情を話そう。皆にもレティを紹介せねばならぬしな」


「わかった」


 彼女は誘拐され、こんな状況だというのにまるで動じていないようだ。


「相変わらず、お前はどんな状況でも取り乱さないんだな」


「そんなことない。十分混乱してる」


 口ではそういうが、全く表情には表れてはいない。本当に、たいしたものだ。


「そうか? まあよい。では、夕食にしようMy Little Princess?」



 姫をこの腕のなかにしっかり抱きしめる。

 


 人間の国、大国カルバント帝国の姫、レティツィア・マリアージュ=カルバント。



 俺の愛しい姫。レティ。




 お前にはこれから生涯ずっと俺の傍に居てもらう。








 俺の、俺だけのお姫様。






   


(マイリトルプリンセス)

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