第14話:レティ16歳 「目覚めたら……だから、ここ何処よ?!」
ある日、我が家にやってきたシベリアンハスキーのダイ。
私は犬が好きで好きでたまらず、家族に何でもいいから犬が飼いたいと言い続け、たまたま保健所で処分される予定の犬を1頭譲り受けることになった。念願の愛犬ゲット。しかも私が大好きな犬種シベリアンハスキー。 私はこれでもかっ!っていうくらいダイを可愛がった。
そして構い過ぎてダイには嫌われた。
ダイはクールな性格のため、あまりベタベタされるのが好きじゃないらしく、休みの日しか家にいないパピィによく懐いた。
私も人にベタベタされるのは嫌いだからうっとうしぃという気持ちはよくわかる。
しかし、人にベタベタされるのが嫌いといってもワンコは別だ。ワンコにはいくらでもベタベタ、モフモフしたい。どんなに冷たくされてもツンケンされてもダイが可愛くて仕方なかった。あぁ、ダイ。元気にしてるかな。ご飯たくさん食べてる? ちゃんと散歩連れて行ってもらってるかな。私がいつも手入れしていたサラサラの毛並みは保たれているな…………
意識がだんだん浮上してきて、うっすら目をあけるとそこにはダイの顔が……
「だい……な……の?」
ダイだと思ってのばした手にフサフサの毛が触れる。
しかし、そこにいたのは、シベリアンハスキーのようなウルフのような(どっちだ!)、左瞼に傷のある亜人種だった。
(え? 誰? どういう状況? 私、確か前の世界で飼ってた愛犬のダイのこと思い出してて……って! そうだ! 祝賀パーティに参加する予定で、クリスと一緒にいた時に奇襲受けて、通路逃げてる途中いつの間にかセガールに捕まって、そんでクリス吹っ飛ばされて……クリス無事かな? んで、クリスが吹っ飛ばされたあとセガールに薬くっせぇ布かがされて意識が遠退いてそれで……どうなったんだ?)
一気にいろいろ思い出して混乱してきた。
「お前、名前はレティだったか?」
目の前のワンコ亜人種が話しかけてキタ!美声!
「ん(? そうえばこの素敵な毛並みのワンコはいったい誰だ?気を失う前にチラッとみたような?)」
「セガールの言っていた通り、不思議な娘だなぁ。あ、俺はグレイっていうんだ。よろしくな!」
(こっちこそよろしくモフモフ……ところで、ココ何処?)
目覚めた場所は、電気がついていても薄暗い部屋。窓もなく壁が土っぽい。地下か洞窟の中だろうか? 家具や私が寝かせられているベッドはそれなりに高級そうだ。いったい私はどういう扱いされてんの?
「ここ何処? 何故わたしを攫ったの?(今すぐお家帰せモフモフ! もう少しで美味しい料理にデカウマな誕生日ケーキ食べれるとこだったのに! こんにゃろーモフモフ!)」
レティ→怨みをこめてワンコを睨みつけた
グレイ→うっとりレティを見つめた
レティ→更に更に力強く睨みつけた!
グレイ→うっとりレティを見つめた
レティ→根負けして目を反らした
グレイ→無言でレティを見続ける
(だ、誰かこの流れを変えてくれー、そんで説明プリーズ!)
グレイが何も話してくれず、じっと私を見続けるなか、部屋の扉が音をたてて開かれた。
「グレイ。レティの様子はどうだ?」
扉から入ってきたのは、セガールだった。
「セガール!(いいところにキタ!)」
「あぁ、レティ、目を覚ましたか。先ほどは手荒にしてすまなかったな。 どこか具合の悪いところはないか? 腹は空いてないか? 何か温かい飲み物でも持って来させよう。おいグレイ。グレイ? いつまで固まっているんだ。お前まさか……」
「はっ! いや、悪い。お前の言っていた以上にこの娘があまりにも綺麗でつい、な」
「馬鹿者が。レティの食事の準備を指示してこい。今すぐにだ」
「りょーかぃ!」
グレイはすぐに部屋から出ていき、私とセガールがふたりきりになった。
見つめあうふたり。
「答えて。ここは何処なの? 何故私を誘拐したの?」
「ああ。それは話すと長くなる。もうすぐ夕食だ。食事をしてからゆっくり事情を話そう。皆にもレティを紹介せねばならぬしな」
「(や、今すぐ知りたいんですけど! ここが何処かぐらい今言いなさいよ! なんだよ長くなる事情って! めんどくさいことに巻き込もうとしてんじゃないでしょうね? 今でも十分面倒事になってるけど……何はともあれ、お腹はへってるし、ご飯もらえるっていうなら、ご飯食べようじゃないの!)わかった」
「相変わらず、お前はどんな状況でも取り乱さないんだな」
「そんなことない。十分混乱してる(ただ表情に出ないだけよ! ついでに口筋もあんまり動かないから最近喋るのも辛くて話すのも淡々となっちゃうんだよ! 脳内ではマシンガントークだよ! 伝われ!)」
「そうか? まあよい。では、夕食にしようMy Little Princess?」
レティの思いは1%も伝わっていない。
(マイリトルプリンセスだ……と。私もう小さくねぇーよ、立派なプリンセスだよ! 胸だってDカップくらいあんだぞ! レティちゃんはもう立派なレディなのよ! レディとして扱え! 敬え……って違うか)
脳内ひとりつっこみしながらぶつぶつ文句を考えているとセガールに軽々お姫様抱っこされ、何処かに移動させられる。
(ちっくしょー! あとでこのモヤモヤ発散にセガールとグレイまとめてモッフモフにしてやんよ!)
部屋を出ると廊下は洞窟のようになっていて延々と続く道の足元に等間隔でランプが置かれていた。
幽霊が出そうな雰囲気がぷんぷんしそうな趣があり、ちょっとビビったレティはキュッとセガールの服を強く握りしめた。
(目覚めたら……ここ何処?)




