第13話:レティ16歳 「主役のいない誕生日パーティ」
城内はレティツィア姫誕生16年の祝賀パーティで賑わっており、式場には多くの他国の貴族や王族に連なる者が招かれ、城下でも姫の成人を盛大に祝うためのパレードが催されて国中がいつも以上の活気であふれていた。
パーティ会場では皆が噂の姫様の登場を今か今かと待ち望んでいる中、数人の護衛官が転がり込むように扉から入ってきた。
「もっも、申し上げます! 城内にて亜人種を確認!」
「城内の警護にあたっていた護衛官が数十名負傷!」
「危険ですので皆様この会場から無闇に出ないでください!」
その知らせを聞き、会場内は一気にパニックになった。 「何故亜人種が!」「ここにいて大丈夫なのか!?」「どうなっているのだ!」と、皆が混乱に陥っていると、さらに負傷した護衛官が入っていきた。
「はぁ、はぁ、ひ、姫様を……、亜人種が、姫様を攫って城内から逃走! 我々で追跡したもののことごとく返り討ちにあい、姫様を見失ってしまいました!」
「げ、現在、死者はでていないようでありますが、姫様専属執事の者が意識不明の重症。今は騎士団に連絡をとり、亜人種が逃げた先の森を捜索中です。」
護衛官の彼らはかなり応戦したようで、ボロボロの姿で陛下に報告した。
「そんな、レティが……何故、どうして亜人種がレティを!」
報告を聞いたマリアーナ王妃はショックで倒れそうになり、その横にいたエドワード王子が王妃を後ろから支えた。
「目撃した者によると、姫様は意識がなく、ぐったりしたご様子で亜人種に抱きかかえられていたそうです!」
護衛官は報告を続ける。
「何故、何故亜人種がレティを攫うのだ! 警備の者は一体何をしていたのだ!」
激高した陛下が叫ぶ。しかし、この場にいる者の中に亜人種の行動の意図を知るもの者はいない。そもそも亜人種の身体能力は普通の人とは比べ物にならないのだ。 力ある亜人種に対しては護衛の者数十人が束になっても敵うはずがない。それこそ、大砲でも使用しないと亜人種とは渡りあえないのだ。
この世界には一応大砲や銃といった兵器が存在しているが、その機能は原始的なレベルであり、銃といっても火縄銃のようなもので発砲するまでに手間がかかるため、通常は銃よりも剣を好んで愛用し、大きな戦争や対亜人種との戦闘においてのみ兵器を使用してきた。
つまり、接近戦で生身の人間が亜人種に挑むということはほぼ自殺行為に等しいのだ。突然の奇襲で亜人種への対応などできるはずもなく、よほどのツワモノでもない限り亜人種と渡り合えるものなどいない。
突然の亜人種による奇襲、レティ姫の誘拐。いきなりのことで何がなんだかわからず場は混乱を極めていた。
「父上、私も騎士団と合流し、レティの捜索をします。アルフォンスとカールは城内の警護にあたっていたものから情報を収集し、侵入経路を探ってくれ。何か手掛かりがあるかもしれない」
「エドワード、頼んだぞ。私はこの場の収拾に努めよう」
「ああ、情報が集まり次第俺もレティの捜索に加わるからな」
「わかった」
何よりもレティの安否が心配な彼らは、レティ救出に向けて各々の役目を確認する。そこに話を聞いていたダニエル皇太子が名乗りを上げてきた。
「あの、僕もレティの捜索隊に加わらせて下さい! ここでただジッと彼女の帰りを待っているなんて出来ません!」
「いや、駄目だ、ダニエル。君は他国の皇太子だ。君の身を危険な目にあわせるわけにはいかない」
「僕はもう成人している大人です、自分の行動の責任くらい自分で取れます! 剣の腕だってその辺の護衛官よりもあるつもりです! 足手まといにはなりません、お願いします!」
「うむ。そこまで言うのならば……エドワードよいか?」
「わかりました。しかしいくら皇太子とはいえ足手まといになるようならその場で置いていきます、いいですね」
「はい、かまいません!」
陛下は城内の混乱を収めるためそれぞれに命を下し、事態の収拾をはかり始める。アルフォンソ王子、カール王子も城内の情勢を整え、情報をかき集めることに奔走した。
そして、エドワード王子の指揮のもと、レティ救出にむけて動き出す。
亜人種が何を考えてレティを攫ったのかはわからない。エドワード達には現在レティがどのような状態におかれているかもわからないが、レティは……普通の子ではない。きっと、無事でいるという確信にも近い期待を胸に、一刻も早く亜人種のもとから救出すべく行動を開始した。
主役のいない誕生日パーティ=混乱の宴




