第9話:レティ10歳 「プラスされた日常」
そんなつもりじゃなかったのにGETしてしまったイケメソ執事。ちなみに、私がいつもイケメソ、イケメソ言ってるのは「いけめん」ではなく「いけめそ」だ。決してイケメンと褒め称えているわけではない。
今更だが私は3次元のイケメンが嫌いだ。もちろん2次元に関しては別だが。2次元の美男子なら24時間見続けられる。しかし現実世界で男のくせに、手入れしてる女より肌が綺麗だとか努力もせずに磨きあげられた美貌を見せつけられると見惚れるよりもイラッとする。きっと私の中の美意識に関する嫉妬心か何かが反応しているのだろう。といっても私はめんどいから美容に関する努力はしないけどね。
女性が日々美しさ保つため少しでも綺麗に見られるよう努力する様はいじらしいと思えるが、男性が女性と同じように、いやそれ以上に美容を気にしたりするのはハッキリ言ってきしょい。
現実の男は雄々しく野性味があっていざって時は好きな女一人食わせていける甲斐性があればそれでいいのよ! 無駄にキラキラする必要なんてないのよ! 目がチカチカすんだよ!
……なぁ、そう思わないか?
「クリス」
「はい、姫様」
目覚めると目の前にクリスのキラキラ輝く顔面がどアップであった。毎度ながらマジ心臓に悪いんですけど。
「(とりあえず)おはよう」
「おはようございます」
私専属の執事になったクリスティアーノ、名前長いからクリスね。はじめに会った時の野暮ったい雰囲気やおどおどした感じは現在微塵も感じられず、本日も光り輝いております。クリスには礼儀作法とこの国の歴史・文化、一般教養から王族や貴族のしきたりについて毎日数時間勉強をみてもらっている。彼はどうやらスーパー執事らしく、疑問には何でも答えてくれるし、雑学に関してもおばあちゃんの知恵袋みたいなそんな知恵いつ使うのっていう知識までたくさん知っている。流れるような動作、優雅なしぐさ、豊富な知識に見事な話術。その優秀さには私の家族も感心しており、「さすが、レティの選んだ執事だ」と褒めていた。
そんな優秀な執事なわけだが……彼は勉学以外にも、朝の目覚めからはじまり夜の就寝までずっと傍にいてあれこれ世話をやいてくる。ぶっちゃけウザいほどに。朝、顔を洗うことも自分でさせてもらえず「私が清拭するのでじっとしていてください」と言い、着替えに関しても自分で着れると言ったら衝撃受けましたみたいな顔して「そんな、いけません、姫様、王族とは皆にかしずかれ敬われるものなのです。衣服の着脱でさえ御手を煩わせる必要はないのです。」とかなんとか言ってあっという間に着せ替えされる。テーブルマナーの勉強の際は自分でフォークとナイフを握って食べれるが、それ以外の食事の時は彼が雛鳥にエサを与える親鳥のごとく私に給仕してくる。
もうなんなんだこれ。怠惰に生きたいとは言ってたけど、こんな全身介護老人みたいな生活が送りたかったわけじゃない。いろいろ鬱憤がたまってきていたのだが、それが爆発したのは私ではなく何故かメイドさん達だった。
本日も、いつもの如くクリスが選んだドレスに着せ替えられていると、メイド2人が部屋に慌てて入ってきた。
「ああっ、今日もクリスさんが勝手に姫様のドレス選んでる! 今日こそは私たちが選ぶはずだったのにっ!」
「そうですよ、いい加減にしてくださいませ。姫様の身支度はクリスさんがすべてやらなくても私たちに任せてくださいと言っているではありませんか……今まで姫様のお世話は私達メイドの仕事だったのですから」
「何をおっしゃっているのですか? 主である姫様のすべてを管理するのは執事である私の勤め。姫様の体調確認、その日身につける衣類の把握、食事の管理、勉学のスケジュール立て、姫様がお会いになられた方の情報収集、夜間の美容の手入れ、居心地の良い環境づくりのための周囲の環境整備、これらすべて誰かの手にゆだねるわけにはいきません、私自身が姫様のすべてを把握してこそ、姫様の専属執事が務まるのです」
(執事ってそんなことやんなきゃいけないもんなのかな……私のイメージする執事って「おかえりなさいませお嬢様」「紅茶の銘柄は何にいたしましょう?」とか言えればいいもんだと思ってたけど)
「そんな、それでは私達メイドが姫様のお世話をする暇がないではありませんか! 嫌です! もう限界です! 私達はもうすでに姫様成分が不足しておかしくなりそうです!」
「私達に姫様との癒しを返してください」
(姫様成分てどんな成分? 前世にネットでやった成分分析メーカーでは私の成分は70%はカテキン、17%は毒物、13%は玉露でしたけど……カテキン?)
既に壊れておかしくなりだしたメイド達vs一歩も譲らない姫様至上主義執事。
そして今日も執事とメイドの不毛な争いがはじまる。
え、これ毎日続くの?
数倍に膨れ上がりプラスされた(溺)愛の日々




