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第8話:レティ10歳 「執事(後編)」

 頭の中でいろんなかけ算を考えることに夢中になっていると、いつの間にか大勢の執事服を纏った青年達の目の前に連れてこられていた。




(うぉッ! ビックリした。え、何この人たち。これみんな私の執事候補者なわけ?)




 連れてこられたパーティ用の大広間には、これでもかというほどの執事候補であふれていた。普段あまり近しい者以外と接する機会のなかったレティ。家族以外の人と対面したり人前に出て話をしたりする時はいつも対面者の遥か頭上である壇上から話をしたり移動中の廊下ですれ違うとき挨拶されるのみで、間近でこれほど多くの人の顔を見たのは久方ぶりであった。




「さあレティ、この中からあなたの執事になる人を選ぶのよ。気に入らなかったらすぐにクビにしても良いけれど、あなたの今後の人生を支えることになる人なんだから慎重に選んで頂戴。みんな家柄も確かだし、王族の知識・礼儀作法の最低限の教育は受けてきている者たちばかりだから、どの人に決めても私は反対しないわ」




(……そう言われてもですね、マミィ。こんな大勢の中からどうやって選べと?)




 レティが大勢の執事候補者たちに視線を向けると、彼らは一様に熱い眼差しで見つめ返してきた。




(お姫様に専属執事って、フラグが立ちそうなんですけど。「異世界転生」「お姫様」「執事」のワードが揃ったら姫様と執事の恋愛小説を連想しちゃう。嫌よ私。ただでさえ家族の過保護な愛が重くていまでも溺(死寸前まで追い詰められて)愛されてるのに、専属執事にまで私の世話あれこれされたら鬱陶しいことこのうえないって。イケメソもお断りね、家族で美形は見慣れてるけど、四六時中キラキラなイケメソっぷりを見せつけられても疲れる。

 選ぶならしっかり仕事はこなせるがあまりこちらに干渉してこない、いっそ私に興味ありませんっみたいな人がいいな……といってもここに立候補してきてる時点でそれはいないか)



 どいつもこいつも美形ばっかりでヤダなーと、周囲を見渡していると、1人の執事が一歩踏み出てアピールしてきた。




「お初にお目にかかります、レティ姫。私はチェスターと申します。是非私をあなたの執事にしてく下さいませんか」



(はい、アウトー! やる気満々な人はいりません←)



 いかにもいいとこのお坊ちゃん風な青年執事がアピールをはじめると、次々に「わたしを」「いや、是非私を」とアピール合戦になった。うん。五月蝿うるさい。 


 どうしようかと迷っていると、大広間の壁側に、ぽつんと人ごみから離れたひとりの青年が見えた。ますますヒートアップする自己アピールの渦から離れ、私は彼に近寄った。



 近づいて、彼をよく見てみると、顔には大きな分厚い眼鏡があり、黒々としたボサボサの髪の毛は無造作に撫でつけられ、執事服を着ているが、ワイシャツのボタンが1つ開いており服のサイズもやや大きく合っていないようだ。背はかなり高く、決してスタイルは悪くないのに野暮ったい雰囲気が漂っている。 



 そんな彼は、私を見たまま微動だにしない。まさか自分が私に目を付けられるとは思ってなかったのだろう。




(お、コイツ良くね? 私に興味なさそうだし、たぶんそんなイケメソじゃない……よね、眼鏡しててよくわかんないけど。うん。気弱そうな感じもするし、間違っても鬼畜眼鏡様ではないはず!)そう思い、彼を執事にすることを決めた。




「貴方、お名前は?」




「ク、クリスティアーノと申します」



 

 彼は、見た目と反する凛々しい美声で返してきた。




(うお、なんという素敵ボイス、お兄様達と張れるよ。でも何かおどおどしてるし、執事やる気満々な感じもしない。美声なのに無駄にキラキラしてないし! よし、決めた!)




「貴方にする」




 そう私が彼を見つめて言った瞬間、周囲が一斉にざわつく。「そんな」「何故あんなやつが」「あいつ何処の家の者だ」とかなんとか皆騒ぎたてた。 家族の皆も本当に彼で良いのか、何度も聞いてきた。 私はどうしても彼がいいと家族に言うと、家族も仕方ないと納得してくれた。




「……本当に、私でよろしいのですか?」




「うん。絶対あなたじゃなきゃ駄目」




「ッわかりました。私……で、良ければ喜ん、でレティ姫様にお仕えさせてください」




 私に仕えるのがそんなに嫌なのか、顔を歪め、言葉につまりながらも彼は言った。この人なら必要以上に干渉してこないだろうと思い、私は満足げにその場をあとにした。集まった執事候補者たちも彼が選ばれたことに不満を漏らしながらも、結局、姫様が自ら選んだのなら仕方がないということで、残りの者たちは帰っていった。







 そして後日、正式に私の教育係兼執事に任命された彼と再び再会したのだが……








 え。誰?










 そこにいたのは、サラサラ艶々な黒髪に、あの時の分厚い眼鏡はなく家族に負けず劣らず、いや勝ってるほどの美しい容姿、私専属の執事であることを示す白い執事服を優雅に着こなし、完璧なまでの臣下の礼で跪く青年がいた。





「若輩者ではありますが、これからよろしくお願い致します。 持つ知識はもちろん私のすべては姫様のもの。末永く姫様のおそばに居られるよう誠心誠意お仕えさせて頂きたく思います」





 彼は恍惚とした顔で私の手を取り口づけた。









 ……あれ? あの時の野暮ったそうな彼はどこ行ったの? 何このキラキラした生き物。誰か説明プリーズ!









イケメソ執事GET

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