第7話:レティ10歳 「執事(前篇)」
何だかんだ言って、私も一国のお姫様。どうやらそろそろ立派な王族のレディになるべく淑女の嗜みや王族としての振る舞いについて学ぶことになるらしい。そのことで私の教育係を選定することになったらしいのだが……何故か家族が勢ぞろいで会議をしている。
「母上、私は反対です。レティに執事をつけるなど! メイドで良いではありませんか。」
よくわからないが、長男様がマミィに抗議している。
……えっ、「執事」? 私に執事がつくの?
「俺も反対だ。レティに男を近づけるなんて危ないことはしたくない。」
そう言ったのはアルフォンスお兄様。黒髪に藍色の瞳、長身で鍛え抜かれた体をしており、武芸にかなり秀でている我らが次男様だ。普段は無口でクールな、言わずもがな、かなりのイケメソ青年。
「僕だって嫌だよ! 僕らが傍にいないとき、レティに何かされたらと思うと心配で離れられないよ!」
次いで反対の抗議を言ったのは、カールお兄様。くるくるのパーマがかかった黒髪に碧眼、言動が幼く童顔なため実際年齢より低くみられるが既に成人を迎えている我らが三男様。やんちゃで甘えた上手な言わもがなイケメ(ry
「でもね、皆、落ち着いて話をきいてちょうだい。レティはもう10歳なのよ。本来はもっと早くから王族の教育をしなくてはいけなっかたのに先延ばしにしてしまっていたでしょ。この子は言われる前にテーブルマナーや礼儀作法を身につけていたから今まできちんとした教育を受けさせてこなかったけど、やっぱり一度きちんとした教育係をつけた方がいいと思うの」
(おおう、適当に周囲のマネしてたけど、あれで礼儀作法よかったんだ)
「だから、その教育はメイド達に任せれば良いではありませんか!」
「メイドの知識だけでは王族としての教育が足りないわ。王族の知識、この国の歴史、淑女としての振る舞い、一般的な教養、そのすべてをしっかり教えられる人でないといけないのよ」
「僕達で教えればいいじゃないか」
「あなたたちには公務があるでしょう。私たちでは近隣の国への訪問で長期間この国を空けることもあるし。これを機会にレティの今後を支えてくれる執事を一人はつけなければと思っていたのよ」
「父上! 父上はこのことに賛成なされているのですか?」
「私だってレティに年頃の男など近づけたくはない。だが教育を受けさせなければならないのは事実であるしな。仕方あるまい」
「……では、その執事候補者の資料をみせてください」
「それなんだが、レティの執事を募集しようと思ってるを宰相に言ってみたら大事になったようで、多くの貴族からうちの執事を是非にと……これだけ候補者があがってな」
ドン! と、分厚い資料の束がテーブルの上に置かれた。
「な! どうやってこの中から選抜するのさ!」
「うむ、資料だけで選抜するのは無理だし……実際あってみないことには決められないしのう」
「あら、レティに直接選ばせればいいではありませんか。ね、レティ」
おふっ! 今まで空気のごとく黙って話を聞いていたらいきなりマミィに話を振られた。
でも執事か。2次元の鬼畜眼鏡執事とかは大好物だったけど、いざ自分にそんなキチガイがつくと思うと恐怖で身ぶるいするわ。下手に美形ドS執事とかついたらどうしよ。あ、でも、もう一人執事がついて執事AとBがイチャイチャするなら(ry
「《妄想中》ええ、(いいわよ! そこでAがBを押し倒して! そう! そこよ!)」
「まぁ、レティの人を見る目は確かですが……」
「レティのおかげで今まで何度も汚職や横領する大臣の摘発してきたしね」
レティは、この国の役人をみて、その顔、言動、目上の者に媚を売る様がこれまで見たり読んできたマンガや小説話の中の悪だくみをたくらむ大臣にぴったり当てはまっていたため、すれ違いざまや遠目から、「(うわ見るからにキンピカな成金風な貴族! 民から増収してそう)悪いヤツ(め!)」「(あ、あのいた気けな少女を舐める様な視線で視姦してるハゲデブ! ああいうヤツは絶対少女売春やってるのよ! この)悪代官!」「(あいつ隣の女の言いなりだな! ああいうヤツにかぎって国の金横領して女に貢いでるんだろうな、腑抜けめ!そういう人)嫌い」とか勝手に空想し、その人を指さしながらブツブツ言っていただけである。ちなみにその空想はすべてあたっており、その独り言を聞いていた家族がレティが嫌いだといった人物らが気になって調べたところ、出るわ出るわ汚職の山だったそうだ。
「では、この候補者たちを集めて、レティに選んでもらう。レティが気に入る人がいなかったらこの話はなかったことにしよう。いいですね、母上、父上」
「ええ、そうね、そうしましょう」
こうして、レティの妄想中に、レティに付く教育係兼執事の選定が行われることが決定した。
つづく




