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報告書77「ネーベル」

 霧がかった夜の海と形容できるネーベル区画で、海を割り波を立てて現れた龍頭鯨とも言える巨大リソーサー……俺たちをお出迎えに来た訳では無いのは確かだな。


「どうやら、やるしかないようね」


「そのようだな……」


<<リソーサー・ケートス……どうやらこの区画のガーディアン兼レビィアタンの分身体のようだワン……>>


 両手にブラスターピストルを構えるチトセの横で、腰を落としいつでも抜けるようキ影の柄に手を掛ける。対する相手は、大きな背鰭だけを海面に出しながら、辺りを周回しているが、その姿はまさにシャチのようだ。


「こちらの様子を伺っておるのじゃな……すまんがわしは下がらせてもらうぞ……」


「そうしてイクノ。もしプログラムを流せそうな場所を見つけたら、私達に構わず行って」


「りょ、了解じゃ……」


 俺達が歩くと浅瀬だが、15mはあろう巨大リソーサーのケートスは背鰭だけを出して悠々と泳げるあたり、ここは単なる海では無いようだ。まさに情報の海という訳か……


「来るわよ!」


「くっ……!」


<<あれは……ヤバいワン!避けるワン!>>


 大きく口を開けた頭を海面に出し、口内からこちらに向けて凄まじい速さと勢いで一直線に伸びる水を飛ばしてきやがった。すんでのところで何とか直撃を免れたが、見たところ単なる高水圧カッターのようだ。一体何をバーゲストはそんなに怯えて……


「あれ……手が重い……?」


 当たって無いはずなのに、何故か義手が動かなく、キ影を落としてしまった。まるでここだけ情報が抜き取られたようだ……!


「今のは単なる高水圧カッターでは無いようじゃ!どうやら飛ばしているのは、水では無く圧縮した情報のようじゃのう!当たったら物理ダメージ、直撃しなくても近ければ情報損壊を起こすぞ!」


「ひぇ!?」


<<だから言ったワン!これくらいの情報損壊なら01ならすぐに修復できるけど、直撃しなくても連続したらさすがに間に合わないワンよ!?>>


 小さいレビィアタンだが、能力は小さくなるどころか、対人に特化してるって訳かよ!


「こんのぉ!」


 チトセのブラスター連射も水中に潜ったケートス相手には効果が薄いようだ。あいつめ、この区画の守護者だけあって、地の利は向こうにあるって訳か!


 死角に回られないよう、チトセと背中合わせでケートスの行方を探していると、少し離れたところでケートスの巨大な尾鰭が海面からヌッと現れるのが見えた。かと思えば、その尾鰭は水面に叩きつけられ、轟音と共に大量の水飛沫が当たりに舞い上がり……


「これは……横須賀海軍基地!?」


「幻影か……!」


 周囲に巻き上げられた水飛沫に映るのは、軍艦から飛び出た無数の光がレビィアタンに吸われ、次々と単なる漂流する筏となり、衝突していく姿……まさしく、横須賀海軍基地が壊滅した日の衝撃的な記憶……お陰で、その幻影の後ろから迫る大津波に、もろに巻き込まれてしまった……!


「情報の津波……!このままでは機動鎧甲がオーバーフローでダウンするわ!」


「くそっ!バーゲスト、何とか……」


<<ワップワップ!な、流されるワンー!?>>


「バーゲスト!?」


 見えたのは、波に飲まれ遥か彼方に流されていくバーゲストだった。助けに行こうとするが、機動鎧甲が関節部から火花を吹いて動きやしない!再び尻餅をついてしまう俺とチトセ。前を見ると、トドメを刺す気かデカ口を開けてこちらにグングンと迫ってくるケートスの姿が……!


「情報を操る化け鯨の前では、機械が無ければ何にもできない俺たち人間なんて、無力な存在か……」


「諦めるのはまだ早いわよ!ここはヨナに習って、派手な花火を打ち上げましょう……!」


 そう言うチトセを見ると、腰からグレネード数個を取り出しているところだった。


「お前まさか……!」


「後は任せたわよ」


「くっ……!イクノさん!!頼みます!!」


 ケートスが海面から飛び上がり、大きく開けた口からチトセ目掛けて飛び掛かってきた。が……飲まれたのはチトセでは無かった。


「イワミ、あんた……!」


 俺はチトセを庇い、ケートスに飲み込まれた……なんて簡単な形で終われるかよ!


「ぬおおお!」


「機動鎧甲の遠隔再起動、何とか間に合ったようじゃのう!」


 確かに俺は、チトセを庇いケートスに食われたが、ケートスの口の中、上顎を両手で、下顎を両足で突っ張るつっかえ棒よろしく閉じようとする凄まじい力に抗っていたのだ!


「今だチトセ!こいつを攻撃しろ!」


「でもそしたら、あんたにまで当たるわ!」


「バカやろう!そんな事言ってる場合か!?エキチカシティを……故郷を守れ!」


「でも……!」


 チトセが多目的ランチャー“クニクズシ”を用意しながら発射を躊躇する間にも、俺を噛み潰そうとするケートスの物凄い力はどんどん強まる。義手も機動鎧甲も最大出力で対抗するが、スキャナーは出力限界の警告表示で真っ赤に染まり、警告音が鳴り響きやがる!


「ダメじゃダメじゃ、このままではもう保たんぞ!」


「ここまでか……!」


<<よくもさっきはやってくれたワンね!01の犬カキを甘く見てもらっては困るワン!>>


 そう叫ぶとバーゲストは、食われそうな俺の肩を踏み台にしてケートスの背中に到達、その背鰭に思い切り……噛み付いたっ!?


<<どうだ!痛いかワン!?01みたいな可愛いワンコも、土壇場では牙を剥くワン!!>>


 背鰭を噛まれたその衝撃でか、ケートスの力が一瞬緩んだので、その隙に後ろ飛びに脱出に成功した!


「よくやったイワミ!後でボーナスよ!」


 チトセから放たれたクニクズシの弾頭がケートスのデカ口に飛び込み、大爆発を起こした。

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