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報告書65「相棒」

 車外からの銃撃の嵐を避けるため、3両目に転がり込んだはいいが、そこにいたのはナカセと自衛軍兵士二人組だった。ちくしょう、俺が来ると分かって待ち伏せしてやがったな……!


「ご苦労様ぁ……ここがあなたの終着駅よ」


 振り下ろした手と共に、両脇の自衛軍兵士が発射したグレネードランチャー。避けられる術も無く着弾、大爆発……


「あなたの旅路はここで終点よ。失敗作にしては、随分楽しませてくれたじゃない……?」


 響き渡る高笑い。だがどうやら少し、気が早かったようだ。


「俺の旅路は終わらねぇ。俺にこの“手”がある限りな!」


 驚いたように振り向くナカセと取り巻き。その視線の先にいた、既にコンテナのロックを切り裂き、中の義手を持つ俺が相当意外だったようで、大分動揺してやがる。


「なっ、なんてそこに!?た、確かに当たったはず!」


「あぁ当たったさ。予備の義手が木っ端微塵だ、どうしてくれるんだ?折角イクノさんに貰ったものなのによ」


 グレネードランチャーの直撃前に、分離して放り投げた義手のお陰で命拾いした。おまけに派手な爆風に紛れて背後のコンテナまで辿り着けたんだ、俺の逃げ足も大したもんだろ。


「くそぉ!」


「あっ、止め……!」


 ナカセの静止も聞かずにブラスターライフルを連射する自衛軍兵士二人。どうやら俺が義手を装着する前に片付けようって魂胆だったようだが、生憎だったな。


 強烈なキ影の両手持ち真っ向斬りに袈裟斬りを受けて倒れ伏す二人。峰打ちとは言え、義手のロケットブースターも利用した捨心を受けちゃあ、悶絶不可避だろう。そのままの勢いでナカセにも斬りかかるが、命中したと思った瞬間、空間から溶け出してきたウィップで防がれてしまった。


「く……!役立たず共め……!」


「また“位相すべり”ってやつか」


「失敗作ごときが……この私の目を欺けるとでも?」


 こちらまで聞こえてきそうなナカセの歯軋りから、一旦距離を取って体勢を立て直す。闇黒伝播ノクタリウム・カスケードの応用で、自衛軍兵士の面頬型のスキャナーには俺がまだ義手も付けてない無防備な“過去”の姿を見せたお陰で、うまく不意打ちできたぜ。


<<ワンワン!今更迎えに来た奴が、偉そうな高説垂れるなワン!>>


「仕方ないだろ、ここまで来るのにどれだけ苦労したか……」


<<ふんっ、それにしても遅過ぎだワン……相棒>>


「ふんっ、文句ばかりだな……待たせたな、相棒」


<<……むっ!?なんだこの匂いはワン!?別の義手の匂いがするワン!さてはもう別の犬を連れ込んだワンね!?01が少しいなかっただけで一体何のつもりだワン!ワンワンワン!!>>


「ちがっ、予備の義手を付けてただけで……」


 尻尾を振りながら目の前を右へ左へと飛び跳ねる赤目の小さい黒犬の動きといい話といいこのやかましさ、全く骨身に刻まれた記憶が染み出すようだぜ!


「ふざけた失敗作どもね……こちらナカセ、状況が変わったわ!ぐずぐずしないで今すぐ部隊を降下させて!」


<<ワフッ!車外のセキブネが真上に移動中だワン!ラペリングで乗り込むつもりだワン!>>


「くそっ、援軍かよ!何とか防ぐ手は……」


<<心配いらないみたいだワンね>>


 犬のくせにニヤリと悪い顔で笑うバーゲスト。心配いらないって一体……って、外から激しい射撃音に続いて爆発音!?一体何が……


<<イクノ、戦果は!?>>


<<上々じゃ!煙を吹きながら離脱していきおった!さすがは自衛軍の兵器制御プログラムじゃ、なかなかの強情さじゃったが、チトセの端子への有線直結のお陰で侵入できたわい!>>


 9両目に接続されていた対空複合砲塔をハッキングしてセキブネを迎撃したのか……チトセ×イクノさん=最強かよ。


「くそっ……くそくそっ、くそっ!どいつもこいつも使えないわね!……まぁいいわ、むしろ好都合ね。これで楽しみは私一人が独占できるのだから……あんたに“首輪”をはめて締め上げるという、至高の楽しみをね!」


<<演算開始……対象/捕獲・首輪ニヨル拘束……>>


 両手にそれぞれ持った2本の剣が蛇腹状になる事で姿を現したサイバーウィップを同時に床に叩きつけるナカセ。肩のオルトロスの能力のせいで、鞭一本でも手も足も出なかったのに、今度は二本持ちかよ、キツイぜ。だがな、こちらには秘策があるっ!


<<オル兄ぃ……何とかオル兄ぃを助け出す手は無いワン……?>>


「オルトロスは完全にナカセに憑依している……奴の本体がどこにあるか分からない以上、残念だが俺にはどうする事もできない」


<<クゥーン……>>


「だがな、お前にならできる!オルトロスを救うのはお前だ、バーゲスト!」


<<!!?……そういう事かワン……!>>


 ナカセに向けて一気に走り込み、右から左からと飛んでくる攻撃を防ぎながら前へ出る。だが防ぎきれず、一本が義手に巻き付いてしまった。


「バカね、同じ手に何度も引っ掛かるなんて。所詮は野良犬、学習しないのかしら?」


「ふんっ、確かに俺……俺達は野良犬だ。野良犬だから自由のために鎖を噛みちぎる!」


「何をっ……?」


「行ってこいバーゲスト!オルトロスを……兄貴を救って来い!」


<<ワンワンワンワン!>>


 義手からウィップ内を疾走、ナカセの中へと飛び込むバーゲスト。俺がバーゲストを助けにここまで来たのは、バーゲストがいないと何もできないからじゃない。バーゲストは……お互いの“背中”を守る相棒だからだ!

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