報告書64「流雷」
閃光弾を宙に放り投げたと同時に右手で顔を覆ったその瞬間、大轟音と共に強烈な閃光が辺りを包む。起爆時間を極短めに設定したんだ、自衛軍兵士め、今頃は頭に星が回ってるぜ。
「せっかくのプレゼントだが、お返しするぜ!」
顔を覆い呻き声を上げながらふらつく盾持ち兵を壁に叩きつけ、先程のコンテナを思い切り蹴飛ばす……と同時にそのまま伏せて頭を抑える。案の定ブービートラップだったらしく、爆発が起こり背中の上を通り過ぎた爆風は3人を吹き飛ばした。
すぐさま立ち上がり、キ影を抜きながらブラスターカービン持ち兵に駆け寄る。これくらいで倒せるとは思っていなかったが、何とか立ち上がろうとふらついてる状態にも関わらず、こちらに向けた銃口を外さない辺り、さすがと言ったところか。
「ぬおおお!」
前に出した義手で乱射を防ぎながら距離を詰め、ブラスターカービンを切り裂いてからの、すぐさま峰打ちに持ち替えての胴を狙った一文字斬り・逆一文字斬り・もう一つおまけに一文字斬りでまずはワンダウン。
「このおぉ!」
振り返ると、電磁ロッドが今まさにこちらに振り下ろされるところだったので、義手で掴み受け止める。盛大に飛び散る火花と雷。
「なっ!?」
「さっきの一撃は痛かったぜ!」
右手のキ影で思い切り電磁ロッドを持つ手を痛打、放した隙に義手で電磁ロッドの持ち手を掴み、逆に胴体に突きを食らわせ、そのまま壁際まで押し込んでやった。痙攣の後に倒れたか、これでツーダウン。
こちらに踏み込む音に反応し、振り返り様の防御で何とか電磁ロッドによる強烈な一撃を防げた。最後に残った盾持ち兵、こいつは一筋縄ではいかないぞ……!
後ろに飛び距離を稼ぐ。盾を前に出して様子を伺う相手に対して、足元を狙われ無いよう、腰を落とした片手脇構えで対峙する。盾持ち相手にただ斬りかかるだけじゃダメだ……だが、もうボロボロなこの義手で一体何ができる?もしバーゲストなら……
<<ワンワン!>>
「そうだな……お前ならきっとそう言うだろうな!」
電磁ロッドを突き出してきた瞬間、大きく身を沈めた態勢から脚へ向けて思い切り体当たりをぶちかます。電磁ロッドが頭上を掠めるのを感じたが、間一髪間に合ったようだ!相手は呻き声を上げて転倒したのも束の間、盾を投げ捨てて反撃に転じてきた。
床を転がり、上になり下になりと押し合う泥臭い組み討ちが続いたが、電磁ロッドを義手で押さえ込み、残る手で顔面を殴り飛ばす。最後はキ影の柄を鳩尾へ叩きつけた所で、ようやく気絶したようだ。よもや太刀持ちが電磁ロッドの射程よりも短いインファイトを仕掛けてくるとは、夢にも思うまい。
「ふぅふぅ……片付いたか……」
<<イワミよ、義手の損傷が増大しているようじゃが、大丈夫かの!?>>
「イクノさん……こちらは大丈夫です。義手はかなら壊してしまいましたが……それよりもチトセは大丈夫ですか!?」
<<チトセも今の所は大丈夫じゃが、ドローンが次から次へと飛んできて、キリがない!義手のことはいいから、早くドローン車両を無効化するのじゃ!>>
「りょうかい!」
義手はケーブルやら人工筋肉が剥き出し、火花は盛大に散り、もうほとんど指は動かないが仕方ない。とにかく先を急ごう。
元は先ほどの3人が詰めていたのか、5両目の無人の戦闘指揮車両を越え、4両目の扉を破壊し中に押し入る。
「こりゃ驚いたな……」
その車両は他の貨物車とは全く様相の異なる構造だった。狭い通路の両側、床下から油圧の唸りと共に押し上げられる縦列格納庫。その中の赤い眼を持つドローン群が次々と迫り上がり、天井近くの発射口から飛び立とうとしていた。
「イクノさん、“巣”……ドローンの“巣”を見つけました!」
<<ほんとかの!?早く破壊するのじゃ!方法は任せるでの!>>
「任されました!」
鞘から抜き放ったキ影を右片手持ちで上段に構え、柄を力強く握る。バチバチと音を立て、青白い稲妻が刀身から走るのが見える。
「刀身放電最大流だ!流雷!!」
思い切り振り下ろした時、刀身から走った雷は空気をも切り裂くように左右へ分かれ、勢いそのまま両壁の格納庫全てを包み込む。待機中のドローンはもちろん、今まさに飛び立とうと上昇中のドローンもショートしたらしく火花を散らし、モーターの断末魔を残し次々と墜落していった。
雷鳴の後に残ったのは、制御システムまでショートしたのか格納庫ごと崩れ落ち、そこら中に散らばったドローンの残骸だけであった。全金属製のメカ相手だけあり、想像以上に効いたようだ。
「チトセ無事か!?ドローンは片付けたぞ!」
<<遅いわよ!と言いたいところだけど、助かったわ!こちらは残りの砲塔を破壊して退路を確保するから、あんたもさっさと手を着けて戻ってきなさい!>>
「あいよ!」
さて先を急ぐか……ん?電車の音に混じって何か聞こえるな……段々近づいて来てるようだが、この音はトランスポーターか?
<<レーダーに機影じゃ!>>
「機影って……」
<<いいから走れワン!>>
!!また頭に響く声。足元に散らばる残骸に転げそうになりながらも、急いで駆け出す。まさにその時だった。ほんの少し前まで俺がいたところ目掛けて列車の壁をも貫通する猛烈な射撃が巻き起こったのは!
「どわああ!」
止まったら死ぬ!目の前の扉を右手のキ影で一閃、蹴破って次の車両に転がり込みながら入ったところで銃撃は止んだ。くそっ!挨拶にしてはちょっと派手すぎ……
顔を上げた所で、目に入ったものに言葉を失った。
「ご苦労様ぁ……ここがあなたの終着駅よ」
赤い唇を歪めたナカセの手が振り下ろされた時、両脇にいた自衛軍兵士がグレネードを発射したのが、俺が見た最後の光景だった。




