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報告書63「幻聴」

 バレット・トレイン最後尾である9両目、重武装車両内を進むが、ひとっこひとりいやしない。屋根上にある、停止した対空砲及び対空ミサイルの複合砲塔の基部には何やらモニター類が付いているが、誰かが復旧に来た形跡も無い。今回の汚れ仕事に人を割いて無いってのは、案外本当なのかもな。


<<後部砲塔を爆破するわ!イワミ、側にいるのならすぐに離れなさい!>>


「ひぇ!?ちょっと待ってくれ!」


 慌てて車両前方に向かって走り込み、頭から飛び込み身を伏せた瞬間、爆音が。振り返ると、砲塔は完全に破壊されたらしく、抜け落ちた基部から煙と火花が盛大に噴き出していた。


<<いっちょ上がり!これでスタンドアローンモードでの起動も出来ないわ。だってもう無いんだからね!>>


「ふぅ……そのとおりだな。その調子で頼むぜ」


<<あっ、派手にやり過ぎたかしら?無人機に見つかっちゃったわ!こっちはちょっと手を放せなくなるけど、そっちはそっちでよろしく!>>


<<この数のドローン……恐らく何両目かに、貨物車両に偽装されたドローン搭載車両があるのじゃろうな。イワミや、見つけたら破壊するなり停止するなりして無効化するのじゃ!>>


「りょーかい!」


 屋根上からは激しいブラスターの発射音が。人員を割けない代わりに、無人のドローンが多めってわけか。チトセの援護のためにも、先を急ごう!


 電子ロックされている扉を斬り裂き、8両目に入る。薄暗い中に大量の軍用コンテナが積まれているあたり、どうやら貨物車のようだ。


「バーゲストどこだー!返事をしろー!」


 呼び掛けてみるが、何の返事も無い。当然か。だからと言って、置かれてる荷物を一個一個開けてる暇は無い。


「イクノさん!貨物車に到達したけど、どの荷物に義手が入ってるのか見当も付かない。何かヒントはありませんか?」


<<義手入りのコンテナは追跡されないように、遮断層で隔離されてるはずじゃ。つまり、スキャナーの探査モードでも中が一切見えないコンテナがあれば、それが当たりじゃ!>>


「なるほど!さっすがはイクノさん!」


 早速、頭部スキャナーの探査モードを起動してみるが、確かにどのコンテナもブラスターやらロケットランチャー、それに機動鎧甲の予備パーツばかりだ。この中にはバーゲスト入りの義手は無い、先へ進もう!


 7両目の貨物車も同じく、通常兵器入りのコンテナばかり。くそっ、どこにいるんだバーゲスト……やはり前の方の車両なのか……?急がなければという気持ちと、このまま見つからないのでは?という不安から、焦りが出てきやがった。


 6両目に入ると、また貨物車だったがコンテナの数は少なめだった。そして中央には、他とはマーキングが違うコンテナが。探査モードでスキャンしてみると、真っ黒、透過しない……当たりか!


「こんな所にいやがったが馬鹿野郎!今出してやる……」


<<よく見るワン!そんな安物の箱に01が入るわけないだろワン!>>


 なんだ、幻聴か?思わずコンテナにかけた手を止める。冷静に考えてみると、これ見よがしに置かれたこのコンテナ……怪し過ぎる。それにこのコンテナ……


「忘れもしない、あの時、俺の義手を入れたコンテナと番号が違う!こいつは罠だ!」


 キ影を構えて前に向き直ると、自衛軍兵士が3人出てきやがった!大方、コンテナ開けたら爆発するブービートラップだったといった所か!


 先頭の一人にキ影で斬りかかるが、振り上げは重く、振り下ろしは遅く感じ、盾に容易に防がれてしまった。くそっ、身体がうまく動かねぇ!


 て、横合いからもう一人が電磁ロッドで殴りかかってきやがった!咄嗟にヒトマルを抜いて防御……しようにも義手は動かず、もろに攻撃を受けてしまう。何とか正面のを蹴り飛ばし、横のやつには肩からのタックルを喰らわすが、開いた視界に3人目がブラスターカービンをこちらに向けてるのが見え……


「わっ、とっ!?」


 後ろに飛んでコンテナの山の後ろに転がり込むが、数発食らっちまった……


「あぐぐ……くそっ、こんなんどうしろってんだよ……!」


 機動鎧甲の応急処置機能を稼働させるが、こんな調子じゃ装甲の耐久値がいくらあっても足りねぇ。万事休すか……?


<<もう根を上げるワン?01がいないと何にも出来ないんだなワン!>>


「うるせぇ!」


 またしても聞こえてきた幻聴に、思わず声を上げてしまう。見てろよバーゲスト。俺はお前がいなけりゃ、ただの人間……でも無いってとこ、見せてやるぜ!腰の小物入れを漁り、何か役に立ちそうなものが無いか探すと……これは……!ここはチトセ流でいっちょやったるか!


 キ影を鞘にしまい、両手を上げる万歳降参ポーズで物陰から出る。3人とも面頬型のスキャナーを付けており表情は見えないが、意外という感じなのは一瞬の動きで分かった。


「あんたらの列車を襲って悪かったな。でもな、自衛軍様が民間人である俺の義手を奪うなんて、ちょっとあんまりなんじゃないか?どうだ?義手さえ返してくれれば、大人しく退散してやるぜ?」


 そんな俺の“交渉”に対しても、聞く耳持たない御様子の自衛軍兵士の御三方。先頭の盾持ち兵が、電磁ロッドで俺の左義手を指しながら言った。


「その手はなんだ?掌をこちらに見せろ!それからその場に跪け!」


「掌?この義手は予備だからまともに動かねぇんだ……だからさっさと返してくれねぇかな、“俺の腕”」


「貴様ぁ!」


 電磁ロッドを振り上げ、こちらに殴り掛かってきたのを見計らい、義手で隠し持っていたもの……閃光弾を宙に放り投げた。

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