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報告書62「バレット・トレイン」

 多数の被弾により操縦不能、炎を曳きながら段々と高度を下げ地面に激突、爆発炎上するコバヤ……


「わしの“コバヤ”が……」


「イクノさん、まだ終わりじゃ無いですよ!」


「私達は多くのものを失ったわ……でもそれ以上のものを手に入れる!第二フェーズ開始よ!」


「分かっておる!しっかり掴まっておれよ!」


 コーギー号のダッシュボード内の増設モニターに映し出されていた、コバヤ操縦席視点のブラックアウトが作戦の第二段階開始の合図だ。


 ビル影に隠れるように停車していたコーギー号が、イクノさんのアクセル踏み込みと共に吹き出したエンジンからの爆音と共に急発進、すぐ目の前の線路にバレット・トレインを捉えた。


「イクノ!作戦どおり最後尾車両の側面に付けて!」


「了解じゃ!」


 文字どおり爆走するコーギー号の荷台に立ち、多目的ランチャー“クニクズシ”の発射準備に入るチトセ。枠に片足を乗せて構えるその姿のなんと勇ましい事か。


 ダミーの熱源を乗せた“コバヤ”を遠隔操縦でこれ見よがしに飛ばし、対空兵器の注意を引いた隙にコーギー号で急接近、チトセが5両目に接続されている戦闘指揮車両を破壊、重武装車両を混乱させる……チトセの立てた作戦、いつもよりぶっ飛んでやがる!


「もう少し……もう少し……」


「危ないのじゃ!」


「ぬおっ!?」


 突然急ハンドルを取るイクノさん。それにより俺はバランスを崩してしまい荷台を転げてしまったが、その次の瞬間、コーギー号がいた位置で光弾が炸裂した。


「防衛用のドローンを放ちおった!気をつけるのじゃ!」


 荷台で転がる間に聞こえてきたブゥゥゥンという飛翔音。顔を上げると、3機の黒いドローンが搭載されたブラスターでクニクズシの発射姿勢を崩さないチトセを狙ってやがる!


「チトセ!あぶ……」


 危ないと言おうとした次の瞬間、ドローンは3機とも光弾の猛連写を喰らい、クルクルと回りながら地に落ち爆発四散した。


 チトセめ、右手でクニクズシを構えながら、左手で持ったブラスターピストルの早撃ちでドローンを排除するとは……さすがだぜ!


「捉えた!いっけぇー!」


 クニクズシが爆風を後方に吹き出した次の瞬間、飛び出した弾体は見事戦闘指揮車両に命中、青い稲妻が四方八方に飛び、それと同時に重武装車両の天井に載っていた対空砲もミサイルランチャーも、まるで力を失ったかのように垂れ下がった。


「どんなもんよ!このチトセ様特製の電磁パルス弾であの車両の内部機構はズタズタのはずよ!イクノ、今の内に車両に寄せて!」


「了解じゃ!」


 最後尾である9両目の後を目指して移動を始めるコーギー号。後ろに付けば、あとは荷台からボンネット、そして車両に飛び移るだけだ。


「さぁてこっからが本番、ワクワクしてきたわね!」


「……チトセにイクノさん一つ聞いていいか?」


「何よ、こんな時に?こっからの作戦忘れちゃった?」


「いや……“コバヤ”も失い、報酬も無い今回の作戦は大赤字確定だ。おまけに再編派を明確に敵を回す……それなのに何で俺の義手奪還に、それこそ命を賭けてまで協力してくれるんだ?」


 俺の話を聞いた時、チトセもイクノさんは何を今更、という表情で一瞬顔を見合わした後、チトセは俺に向き直った。


「前に言ったでしょ、私の夢はこの世界を見返してやる事だって。再編派を敵に回す?上等よ!私たちに手出した事、後悔させてやりましょう!」


 コーギー号が線路に飛び出したお陰で、ガクンと衝撃がきた。イクノさんの運転はいつになくダイナミックだ!


「わしの作品は、部品じゃなくて家族じゃ!わしが三徹して磨いた末っ子を、奪われて黙っとれるかい! 絶対取り返すんじゃ!」


 二人は俺のために仕方無く危ない橋を渡ってるんじゃ無い。俺たちの意思は初めから同じ、一つだったんだ!


「行こう!チトセ、イクノさん!」


「作戦どおり私は屋根に登って砲塔を完全破壊、退路を確保する!あんたは義手を探して!」


「通信ノードの位置情報更新からして、義手は恐らく前の方の車両だとは思うが断定できん!車両内を目視で探すのじゃ!」


「りょーかい!いっちょやったるか!」


「それじゃ、第三フェーズ開始!」


 荷台から飛び出し、ボンネットからの跳躍で華麗に車両に取り付くチトセ。機動鎧甲着てるんだ、俺だって余裕……


「どわああ!」


「ちょっと!?」


 ボンネットから飛び移り取っ手を掴もうとしたが、一瞬左手の反応が遅れて掴みそこなってしまった。危うく落ちそうなところをチトセに掴まれ助かったが、出番早々で退場するところだった!


「何やってるのよ!」


「す、すまん……手元がちょっと狂った……」


「しっかりしてよね!ほら、行くわよ!」


 屋根へと颯爽と登るチトセの尻を見て……ではなく尻目に、俺はキ影を右手に構えながら扉を蹴破り中に入った。こんだけ派手な乗車をしたんだ、さぞそれ相応のお出迎えがある……と思ったが、中には自衛軍兵士の一人もいなかった。おかしいな?


「こちらイワミ、中に入った……はいいけど、中は無人だぜ?何か変だ」


<<恐らくなんじゃが、今回の義手奪取は再編派……というよりは第16師団の中でも表沙汰にできない行動なんじゃろう。それで参加人員を絞っておるのかもしれん>>


<<だからと言ってモタモタしていいわけじゃ無いからね!こんだけ派手に列車強盗してるんだから、すぐに援軍が来るわよ!>>


「分かってるよ!」


 全9両あるこのバレット・トレイン、何が出るやら。待ってろ、バーゲスト!

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